【2174】GCA/新型肺炎でM&Aスタックも、高還元ポリシーは不変か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2174】GCA(東証1部) OP

現在値 625円/100株 PER19.4 PBR1.22  6月・12月配当 株主優待なし

M&A助言会社。日米欧三極体制。のれん償却控除前純利益を100%還元。

配当金は6月・12月の合計35円予想のため、配当利回りは5.60%となります。
GCAは株主優待制度を導入しておりません。

業績を確認していきます。2018年12期よりIFRSに移行しており、非連続です。
■2016年12月期 売上高 185億円、営業利益 24.9億円 EPS 43.1円
■2017年12月期 売上高 197億円、営業利益 18.9億円 EPS 33.5円 
■2018年12月期 売上高 266億円、営業利益 34.7億円 EPS 64.2円 IFRS

■2019年12月期 売上高 235億円、営業利益 34.1億円 EPS 59.9円 IFRS

■2020年12月期 売上高 250億円、営業利益 20.0億円 EPS 32.1円 四e

□2020年3月1Q 売上高 33.4億円、営業利益 1.5億円 EPS▲0.6円 四e
□2020年6月2Q 売上高 100億円、営業利益 8.0億円 EPS 12.8円 四e

2019年12月期の売上高は前期比11.9%減の235億円、営業利益は同11.5%減の34.1億円となり、1Qで開示した会社予算どおりの着地となりました。国内において報酬額10億円を超過するメガ案件として【不二製油→Bloomer Chocolate;不二製油側】があったほか、初の敵対的TOB案件となる【伊藤忠商事→デサント;伊藤忠側】といった案件があったほか、事業継承案件の積上げにより増収を確保しました。一方の海外については、MA市場全体が世界全体で14%減だったこともあって低調に推移し、【Finanzen→アリアンツ;Eli Global側】といった案件があったものの、米国・欧州・その他エリア全てで減収となりました。


進行期である2020年12月期の予算については、例年であれば1Q時点で開示となるものの、今年については未だ非開示となっています。外部予想されている売上高は6.3%増の230億円、営業利益は41.3%減の25.0億円程度が観測されています。既に開示されている1Qを参考にすれば、国内については、事業承継絡みの中規模案件数が増えているものの単価が抑えられており、海外については既に新型肺炎の影響を受け案件数・単価ともに落ち込んでいるほか、遅延や中止となるものが出てきている模様です。一応、グローバル全体での受注残高は高水準をキープしているほか、本年4月には欧州同業のStella社を期中買収(※後述)しており、その分の上乗せがあるものの、実績期の売上・利益水準には大幅に届かない可能性が高そうです。


当社は2008年に米SAVVIANと経営統合し、2015年8月に英Altiumを約130億円で買収して、独立系MA助言専業会社としては異例の「日米欧グローバル三極体制」を実現し、クロスボーダー案件の受注体制を構築しています。既に独立系の上場MA助言会社としては、ラザード、エバーコア、モーリス、グリーンヒル(4社はいずれも米国企業)に次ぐ地位を確保しています。これら米国4社と異なり、当社はアジアに本拠地を置く当社は、その地理的優位性を活かしたクロスボーダー案件の獲得が成長のドライバーとなります。

 

今般、米SAVVIAN・英Altiumに続き、北欧のMA助言会社であるStella社(売上高26億円・営業利益4億円)に約23億円を投じて買収しています。同社は北欧のほかベネルクスを地盤としており、助言だけでなく仲介を得意としているほか、北欧ならではの通信デジタル企業へのアクセスを有しています。これまで日本やSAVVIANの規模が大きかった米国にくわえ、欧州の事業基盤がかなり手薄でしたが、Altium及び本件買収により厚みが出てきた印象を受けます。当社は中長期的な業績の定量目標は開示していないものの、こうした相次ぐMAによる業容拡大により、直近5期の売上高CAGRは15.9%と比較的高い成長を遂げています。


そして当社最大の投資論点であろう株主還元については、IFRS基準における親会社の所有者に帰属する当期純利益に対して、「配当+自社株買い」の総還元性向を100%としており、配当金下限は35円に設定しています。実際のところ、直近12年間の総還元性向はなんと125%に及んでいます。但し新株発行・株式交換による買収が多く、発行済株式数自体が漸増しているため、それをネットする必要があるかと思いますが、少なくとも配当による還元は高水準となっています。

 

また、新型肺炎による影響は相応に受けるとみられるものの、当社はほぼ無借金かつ150億円超の現金が唸る好財務企業であり、欧米の会社を買収してきた関係で外国人株主割合も高く、株主還元のインセンティブが低くないため、年35円の下限配当は維持されるものとみています。

 

*参考記事① 2019-04-16 832円

自社株買い余資も水面下で唸る高配当銘柄・GCA(2174)。

 

*参考記事② 2018-04-06 942円

大幅未達決算&今期予想非開示だが、高配当維持は既定路線か・GCA(2174)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。  


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