【9267】Genky Drugstores/新型肺炎特需も、まずは「陣取り合戦」に集中か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9267】Genky Drugstores(東証一部) NT

現在値 2,552円/100株 PER14.6 PBR1.56  6月配当 12月配当 株主優待  

福井地盤のドラッグストア。岐阜や愛知、石川にも展開。低コスト、低価格にも強み。
配当は6月・12月合計25円配当のため、配当利回りは0.98%となります。

Genky Drugstoresは株主優待制度を導入しており、単元株以上を保有する6月末・12月末の株主に対して、6,000円分のグループ商品を進呈しておりますので、配当優待利回りは約5.66%となります。なお、1年以上の長期保有で各回2,000円分の商品券が追加進呈されますので、同利回りは7.24%となります。

業績を確認していきます。
■2016年6月期 売上高 734億円 営業利益 26.5億円 EPS 135.0円
■2017年6月期 売上高 833億円 営業利益 38.4億円 EPS 201.8円 

■2018年6月期 売上高 948億円 営業利益 41.2億円 EPS 206.6円 

■2019年6月期 売上高 1,038億円 営業利益 40.4億円 EPS 174.7円 

■2020年6月期 売上高 1,170億円 営業利益 30.0億円 EPS 138.4円 ce

□2020年12月2Q 売上高 563億円 営業利益 11.2億円 EPS 48.5円 

□2021年3月3Q 売上高 862億円 営業利益 24.4億円 EPS 113.2円(4/22) 

2019年12月中間期の売上高は前年同期比8.5%増の563億円、営業利益は同43.7%減の11.2億円と減益となったほか、元より増収減益を予想していた期初予算水準にも届きませんでした。概ね計画通りの伸びを示したトップラインは新店増加によるものであり、通期の出店計画・純増47店に対して、出店19店・退店1店となり純増18店となりました。また新店以外の既存店売上高についても99.9%と横ばい圏をキープしたものの、6月より稼働開始したプロセス・配送センター「中部RPDC」の立ち上げ費用や、競合店対抗のための戦略値引きにより利益率が大幅に悪化し、結果として大幅減益に沈みました。

 

2020年6月期の通期予算については中間決算前に減額しており、売上高が前期比12.6%増の1,170億円(従予:1,150億円)、営業利益は25.9%減の30.0億円(従予:40.5億円)に其々修正しています。出退店計画を据え置いてトップラインを増額する一方、利益を減じたのは上期の凹み分を反映したほか、3Q以降も戦略値引きを継続することによる利幅減を織り込んだ形になります。なお、去る4月22日に3Qを開示しており、新型肺炎による関連商品の購入と“ついで買い”等により3Q単独期間(1-3月)の既存店売上高は111.5%まで爆発的に増加しているため、修正予算に対する進捗率が目に見えて急改善しています。そのため、対修正予算は超過確実圏であり、4月単月の数字も極めて良好であるほか、5月も福井県のマスク販売代理権を得たことから、期初予算に肉薄するところまで届く公算が高そうです。

 

当社は3年中計を策定しており、3年後となる2022年6月期を目処に売上高を1,039→1,500億円(CAGR13.0%)、営業利益を40.4→75.0億円(CAGR23%)へそれぞれ伸長させる計画です。主な成長ドライバーは積極出店による外部成長であり、地盤の福井県・岐阜県の首位を守りつつ、近隣の愛知県・石川県へ集中出店し、向こう3年で200店超を出店(総店舗数252→463店)する計画です。

富山県にはクスリのアオキ、岐阜県にはバロー傘下の中部薬品(Vドラッグ)という強力な商売敵が存在するものの、“300坪タイプ”という共通店舗フォーマットを軸に高速出店を狙うほか、生鮮品の拡充や戦略的な低価格戦略により、利益は二の次でまずは陣地取りを優先させます。

 

一応、内部成長的な戦略としては、50億円を投じて、今期の業績の重しともなっている「中部RPDC」が業界初となる生鮮品のプロセスセンター機能を有しているほか、既存の福井の「丸岡DC」とは異なる岐阜拠点であり、自社物流機能も有しているため、岐阜エリアの出店数がある程度スケールしてくると加速度的に利益が良化することが期待されます。そのため、向こう3年間は新設DCの稼働率向上を目的としたトップライン成長が期待されるものの、構造的に利益確保は後回しにされる可能性が高く、新型肺炎という一過性の追い風はあっても持続性はなく、中計の利益目標値は過大とみられます(逆にトップラインだけは達成する可能性があります)。

 

財務状況については2017年に公募増資を実施しており、株価位置が非常に高い時期に約60億円(@4,425円)の調達を済ませていることもあり、自己資本比率は35%水準をキープしており、一定の財務余力があります。配当金は年25円の据置を予想しており、配当性向は18%程に過ぎませんが、自前で大型DCを新設したり、目下大量出店中ということも鑑みると、株主還元はこの程度の水準で抑えてくる可能性が高そうです。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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