【6540】船場/通期ガイダンス撤回も、好財務原資に配当は前期据え置きか。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

IMG_9789.jpg

【6540】船場(東証1部)  OP

現在値 912円/100株 PER8.3 PBR0.90  12月配当 株主優待なし

商業施設の企画、設計から監理、施工までを一貫。売上の2割がイオン系。
配当は12月末一括の50円配当のため、配当利回りは5.48%となります。

船場は株主優待制度を実施しておりません。

業績を確認していきます。
■2016年12月期 売上高 276億円、営業利益 17.1億円 EPS 124円  
■2017年12月期 売上高 295億円、営業利益 14.2億円 EPS 100円

■2018年12月期 売上高 284億円、営業利益 12.6億円 EPS 97円 

■2019年12月期 売上高 283億円、営業利益 12.7億円 EPS 97円 

■2020年12月期 売上高 未定、営業利益 未定、EPS 未定 ce修正
□2020年6月1Q 売上高 60.6億円、営業利益 2.2億円 EPS 14.4円(5/14)

□2020年9月2Q 売上高 155億円、営業利益 7.2億円 EPS 49.6円 四e 
 

2019年12月中間期の売上高は前期比0.4%減の283億円、営業利益は同0.2%増の12.7億円となり、期初予算を下回ったものの、減額後予算は上回って着地しました。約2割の売上依存度を占めるイオンモールが地方での売上低下と人件費高騰の二重苦に陥っており、引き続き新規投資を抑制しているため、従来型の郊外SCが低調に推移しました。個別の大型案件としては、「サンエー浦添西海岸パルコ」や、「小田急百貨店藤沢店改装」「日比谷国際ビル飲食街」などがあったほか、海外についてはJR東日本が事業主となる商業店舗及びコワーキングスペース等の複数受注があったシンガポールが特に好調に推移したため、国内SCの不調を補って、何とか前期比横ばいの数字まで持ち直した格好となります。


進行期である2020年12月期の通期予算については、売上高が11.1%増の315億円、営業利益は同25.8%増の16.0億円当初予想していました。期初時点での受注残高は1年前と比較して17.8%増の50.6億円を確保していることもあり、期中にも海外での大型商業施設の受注や、都内再開発案件の受注獲得を見込んでいました。然しながら、去る5月14日に開示された1Q開示で、新型肺炎の影響により特定業種の顧客からの延期・中止が発生していることが明らかになっており、通期予算を未定に修正しています。なお、1Qまでの数字は前年同期比3割超の増収、黒字転換と順調な数字になっていますが、新規受注確保が進んでいないとみられ、期初予算は未達確実圏と考えられます。

今期は減額ローリング済の中計2年度目という位置付けであり、2年後の2021年12月期に売上高340億円、営業利益は20.0億円の数値を掲げ直し、定量目標値を事実上2年ほど後倒ししています。背景にあるのは売上依存度の高いイオンモールの失速と国内の出店抑制であり、顧客ポートフォリオの再構築を迫られているような状況にあり、教育やオフィス分野の開拓にくわえて、足許では30年前から進出している海外事業への注力度合いを深めています。進出済の香港・台湾・上海やシンガポールにくわえ、その他ASEAN諸国への新規進出を推進しており、海外売上高比率は11%に上昇しています。

 

海外については、特にシンガポールで顕著にみられるように既に大型SC文化が後退しており、エッジの効いた専門店が好まれる傾向があり、かような特徴的な専門店は高いデザイン性が求められるものの高利益率であるため、そうした案件の積み上げにシフトしリスク分散を図る目論見です。その一方、ベトナム・カンボジア・ミャンマーといったASEAN圏でもエマージングな国は引き続きイオンモールとの協業により、従来型の大型SCによる展開を図る計画となっています。ただ、足許の新型肺炎の影響によりこれらの計画はスタックする可能性が高く、従って走っている中計についても数字は未達となる公算が極めて高いと考えられます。

 

財務状況については、当社は無借金経営を長年に継続しており、保有する現金同等物も80億円弱と、じゃぶじゃぶの財務状況を確保しています。そのため株主還元については、今期は5円増配となる50円配当を当初予想していましたが、1Q時点で配当予想未定に変更しています。ただ短期的には業績が沈むとみられるものの、現金同等物が非常に潤沢なため、増配はなくとも45円配当を据置く余裕はあるものと考えています。

 

*参考記事① 2019-11-22 1,100円 OP

通期下方修正だが、海外事業は想定超で巻き返す・船場(6540)。

 

*参考記事② 2019-04-19 994円 OP

上顧客のイオン低調で苦しいが、好財務活かし連続増配・船場(6540)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


このエントリーをはてなブックマークに追加にほんブログ村