【1430】ファーストコーポレーション/造注苦戦で低空飛行続くも、保守的な資本政策は評価余地も。 | なちゅの市川綜合研究所

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【1430】ファーストコーポレーション(東証1部) OP

現在値 400円/100株 PER6.0 PBR0.97 5月配当 11月株主優待

一都三県で分譲マンション建設。用地仕入から建築までの一貫体制に強み。
配当金は5月末一括の20円配当のため、配当利回りは5.00%となります。

 

ファーストコーポレーションは株主優待制度を実施しており、11月末の単元保有株主に1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約7.50%となります。

業績を確認していきます。
■2016年5月期 売上高 162億円、経常利益 15.1億円、EPS 88.5円  
■2017年5月期 売上高 209億円、経常利益 20.1億円、EPS 112.8円  

■2018年5月期 売上高 208億円、経常利益 22.3億円、EPS 117.6円  

■2019年5月期 売上高 190億円、経常利益 18.7億円、EPS 95.6円  

■2020年5月期 売上高 200億円、経常利益 12.6億円、EPS 65.6円 ce 

□2019年11月2Q売上高 67.7億円、経常利益 2.2億円、EPS 11.0円(1/10)

 

2019年11月中間期の売上高は前年同期比24.3%減の67.7億円、経常利益は同76.3%減の2.2億円となり、大幅な減収減益となったほか、期初予算も割り込んで着地しました。期初時点の受注残高は前期初時点の205億円から178億円へと減少していたことも一因ですが、造注方式の素地売買において上期計上予定の案件が下期にズレ込んだことが響きました。なお、共同事業については昨年3月竣工で中央住宅のJVである西大宮(77戸)や同5月竣工で阪急阪神不動産JVの柏の葉C(226戸)の分譲が概ね計画通りとなったほか、リノベ案件の一部が上期前倒しとなったため順調に推移しましたが、好採算事業である造注案件の穴を埋めるには至りませんでした。

なお2020年5月期の通期予算については期初のものを据え置いており、売上高が前期比5.2%増の200億円、経常利益は同32.6%減の12.6億円を予想しています。予算上増収減益の組み立てとなるのは、工事と素地売買により“両取り”が出来る採算性の高い造注方式案件が低調なことが主要因であり、単なる一般請負工事や素地売買案件の構成比が増えるので、トップラインだけが妙に伸長する格好となります。今期の計画受注高は228億円ですが、開示されている1月末時点(8ヵ月累計値)で80億円に留まっており、うち造注方式は5件中1件と非常に低調に推移しています。
下期の共同事業による分譲案件は、ダイヤモンド地所とJVの若葉台(シニア104戸)、日土地・セコムHL等JVの横須賀中央(212戸)等が中心となり、これらが期末にかけて引渡となるものの、造注受注の不調から今期未達だけでなく、早くも翌2021年5月期の業績が懸念される状況です。


当社は中計をローリング方式で公表しており、3年後の2022年5月期に売上高247億円、経常利益17.1億円を計画しています。当社中計は毎回未達・減額ロールばかりの“気合予算”であるものの、今次ロールについては、3年経っても減益という“相当程度しゃがんだ”コンサバ予想をしており、会社側の姿勢からは反省の色がみられます。向こう3年間の成長施策として、高採算の造注方式のさらなる推進(シニア向けの拡大、用地仕入中途採用強化、JV案件の強化)を軸とするほか、九州エリアへの進出やリノベ事業への参入を予定しており、九州は2018年に支店開設済も未受注?であるものの、リノベ案件については今上期で数字を計上するに至っています。

 

本中計での目玉はJR前橋駅北口再開発事業であり、高崎駅のタワマンでも実績のある東京建物(8804)とのJVでで26階建てのシニア向けを中心とした共同住宅の事業主となります。地権者は前橋市、群馬県警、日本通運、個人の4者となっており、当社と東建は建築により保留床を取得します。本案件自体は竣工が2022年度予定となっているため、本中計期間には数字が乗ってこないものの、(一応)県庁所在地駅前での大手デべとJVによるタワマンの開発実績は、まだプレゼンスの低い当社にとってはトロフィー案件となることが見込まれ、数字以上に定性的な効果が期待出来ます。

 

ということで、向こう3年は数字的な見所は殆どないものの、計画値がかなり保守的なので一応達成可能と考えておりましたが、足許の造注方式の受注低迷にくわえ、今般の新型肺炎による素地販売・エンド分譲の両面でのセンチメントが急悪化してしまったため、暗雲が立ち込めてきた印象です。唯一良かったのは、今次中計ロールで財務面に踏み込んでいる点であり、自己資本比率50%キープを掲げていることから、会社側は早期にこうした不透明な状況を察知した可能性が高く存続可能性が高くなった点は評価出来るものと考えています。配当金も本中計期間では下限を設定して、【20円→21円→27円】の累進配当を予想していますが、これは中計の業績達成を前提とした停止条件付の“なんちゃって下限”なので、かような状況下では会社側の保守的な資本政策について一定の評価余地がありそうです。

 

*参考記事① 2019-10-12 638円 OP

仕入難化で会社姿勢が急速に保守化・ファーストコーポレーション(1430)。

 

*参考記事② 2019-03-21  766円 OP

今期も未達見込みだが、財務基盤厚く高配当を維持・ファーストコーポレーション(1430)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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