【3454】ファーストブラザーズ/中期目標は未達確実圏も、“不動産M&A”活用で安定成長へ。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3454】ファーストブラザーズ(東証一部) OP

現在値 700円/100株 PER3.92 PBR0.61 11月配当 株主優待あり

不動産の私募ファンド運用と自己勘定投資が柱。首都圏商業施設多い。
配当は11月末に24円を予想していますので、配当利回りは3.43%となります。

ファーストブラザーズは株主優待制度を導入しており、11月末時点の単元保有株主に対して、1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.85%となるほか、1年以上保有を継続する場合は進呈額が倍となるため、同利回りは約6.28%となります(※尚、2単元保有までは単元の場合と同じ配当優待利回りが維持されます)


業績を確認していきます。
■2016年11月期 売上高 146億円、経常利益 36.6億円、EPS 162円 
■2017年11月期 売上高 187億円、経常利益 30.6億円、EPS 146円 

■2018年11月期 売上高 218億円、経常利益 47.0億円、EPS 205円 

■2019年11月期 売上高 198億円、経常利益 28.1億円、EPS 155円 

■2020年11月期 売上高 228億円、経常利益 39.3億円、EPS 178円 ce
□2020年5月中 売上高 50億円、経常利益 2.5億円、EPS 10.7円 四e 

2019年11月期の売上高は前期比9.3%減の198億円、経常利益は同40.2%減の28.1億円と大幅減益となったほか、期初予算比でもショートして着地しました。主力の投資銀行事業において、浜松町二丁目のオフィスビルをボルテックスに販売したほか、原宿の商業施設「ERIDALE神宮前」を近隣で大規模開発を実施しているNTT都市開発に販売するなどしたものの、前期と比べると控えめな販売計画であったことから、当該セグが3割弱の減益となりました。その一方、物件売却が抑制されたほか、期中に東日本不動産を完全子会社化(※後述)したことにより、安定収益源である賃貸業における粗利益は前期の11.5億円→15.9億円へと激増しており、利益構成が大きく変貌したことから、減益・未達ながらも定性的にはまずまずの結果となりました。


進行期である2020年11月期の予算については、売上高が15.0%増の228億円、経常利益は39.8%増の39.3億円と一転して大幅な増益を予想しています。これは主力の投資銀行事業において、買収した東日本不動産のB/S連結効果や、海岸のNAC港ビルの取得等もあり、この1年で103億円もの棚卸し資産を積み増したため(期初残高は443億円)、ポートフォリオの入替をある程度積極的に進める意向があることに由ります。また賃貸業についても、投資銀行事業の資産膨張に連れる形で賃料収入が増えるほか、東日本不動産の既保有物件も通期で寄与するため、続伸する見通しです。足許では新型肺炎の影響で売買市場の冷え込みが予想されるものの、安定的な賃料収入基盤が増えているため、今期予算は苦しいものの、ある程度“見れる”数字が出てくるものと考えております。

 

会社側は中期的な目標として、この2020年11月期に売上高総利益ベースで100億円(直近期実績53.2億円)を目指していましたが、今期の予算に照らせば同64.5億円となるため、数値目標については大幅な未達となる見通しです。当社の基本的なビジネスモデルとしては、外向きには保有物件と言いつつも、固定資産にしていない棚卸しの低簿価物件を売却して利益を作り、高いレバレッジ(簿価LTV84.9%)で資金効率を高め、回転売買をして売上を作るようなモデルとなっています。ただ見た目のレバは高いものの、賃貸収入で元本返済と支払利息を十分にカバー出来ていることもあり、平残13.9年という長期ローンを加重金利0.84%で引いているため、財務的なリスクはあまり考えなくても良さそうです。

 

また、足許では不動産市況過熱とCAPレートの低下にともない直接的な物件取得に限らない“不動産M&A”にも注力しており、昨年4月には弘前市を拠点に東北地方で不動産賃貸業を営む東日本不動産の株式(及び事前の自社株買い費用)に41億円を投じて完全子会社化しています。同社は総額127億円(25物件)もの賃貸不動産を保有しているほか、地方物件が多いこともありNOI利回りは7.9%も確保出来ているため、当社の巡航ベースの年間NOIは10億円も押し上げられる計算となります。そしてこの東日本不動産以外にも、足許では複数の不動産会社にも触手を伸ばしているよ模様であり、MA実務に長けた投資助言業者であり、かつ宅建業者である当社ならではの強みが活かせている印象です。今次中期目標値に関しては未達濃厚であるものの、中長期的には安定的な成長が期待出来ます。

 

株主還元については、毎期毎期の利益のブレ幅が大きいため、配当性向基準でなく「DOE2%」を採用しています。その上でなんとなく累進型の配当を志向しており、今期は3円増配の年24円を予定していますが、この水準であれば現状で25%程度の自己資本比率を鑑みても妥当な還元政策であると考えています。

 

*参考記事① 2019-03-15 1,130円 OP

今期減益予想だが、不動産転売屋としては堅実さが際立つ・ファーストブラザーズ(3454)。


*参考記事② 2018-03-09 1,428円 OP

「Ron Herman」のバケーションレンタル事業を開始、ファーストブラザーズ(3454)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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