【1887】日本国土開発/震災工事は漸減だが、株主還元拡充に改めて期待。 | なちゅの市川綜合研究所

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【1887】日本国土開発(東証一部) OP

現在値 539円/100株 PER5.7 PBR0.70 5月配当 11月配当 株主優待なし

重機土木工事得意。東日本地震の復旧復興で実績。03年に会社更生手続が終結。

配当金は5月末・11月末の年2回の合計28円で、配当利回りは5.19%となります。
日本国土開発は株主優待制度を導入しておりません。

業績を確認していきます。
■2016年5月期 売上高 1,188億円、営業利益 60.7億円 EPS 92.7円 
■2017年5月期 売上高 1,091億円、営業利益 74.6億円 EPS 41.1円 

■2018年5月期 売上高 1,175億円、営業利益 156.6億円 EPS 137.9円 

■2019年5月期 売上高 1,195億円、営業利益 145.7億円 EPS 140.0円

■2020年5月期 売上高 1,250億円、営業利益 98.0億円 EPS 93.0円 ce

□2019年11月2Q  売上高 610億円、営業利益 74.3億円 EPS 62.2円(1/14)

2019年11月中間期の売上高は前年同期比0.8%減の610億円、営業利益は同34.3%減の74.3億円となり、期初予算との比較はないものの、通期予算に対する営業利益の進捗率は75%を超過して順調な折り返しとなりました。期初時点における受注繰越高は1年前比4.5%減の1,432億円と低調だったものの、下期に予定していた大型案件が前倒しで竣工したことなどが寄与しました。主な引渡済工事については、土木事業では久慈市防災公園工事やK-SMFL延岡門川ソーラー、建築事業ではプランテック・クリーンセンター、常盤町西街区建築物整備等がありました。一方、新規受注高については、茂原ソーラーや、御堂筋タワマン等があったものの、会社側想定には届かなかったものとみられます。


2020年5月期の通期予算については期初のものを据え置いており、売上高が前期比4.6%増の1,250億円、営業利益は同32.8%減の98.0億円と今期も連続減益を見込んでいます。既述のとおり新規受注が低調に推移しており、通期計画受注高1,080億円に対して上期進捗率は36.7%に留まっているほか、好採算案件を上期に前倒してしまったため、下期はやや苦しい状況です。建築事業で名有りとなっている竣工予定工事は、WBF新大阪ホテルや、超高層建築であるエクセルグランデ刈谷銀座タワー等があり、これら以外にも不動産事業で野村不動産とのJVにより先進的物流施設「Landport厚木愛川町」を手掛けており、3月の竣工とともに共有持分で年間約3億円の賃料収入を得る予定ですが、やはり受注高が低調なため期初予算水準の着地になるとみられます。

 

当社は吉田茂首相の音頭で本邦の土木工事の機械化を推進するために設立された国策企業でしたが、バブルの崩壊でそれまでのリゾート開発やゴルフ場投資が重しとなり、98年に会社更生法を申し立て、99年に上場廃止となりました。03年に同手続きを集結し、昨年3月に20年振りに上場廃止前と同じ証券コードで再上場を果たしました(西武鉄道系のいわゆる“コクド”とは無関係)。そして再上場時には、設備投資と太陽光発電事業の匿名組合への出資金に充当するため、公募で約58億円(@510円)を調達しています。

 

上場後最初の本決算時には3年中計を開示しており、最終年度となる2022年5月期に売上高1,195→1,350億円(CAGR5%)、営業利益は145→100億円(CAGR▲11%)という、マイナス成長を計画しています。これは上場前後の2018年~2019年5月期は工期の長い大型好採算案件の引渡しが多かったことや、東日本復興関連工事が売上の約6割を占めていたことから、これらの“特需”が徐々に剥がれることで、向こう3年は低調な業績が見込まれることに由ります。今後は当社の祖業である高性能重機“スクレーパ(ダンプ・ブルドーザー・バックホーの3機能を有する特殊重機)”の活用による工期短縮や、災害対策に親和性の高い“回転式破砕混合工法”などを武器に太陽光発電分野や災害対策分野で営業を強化していく方針です。減益基調が続いているものの、翌2021年5月期は2019年度補正予算による下支えが期待されるため、数字がしっかり下げ止まるかどうかが当面の見所になろうかと思います。

 

株主還元については、配当性向30%を基準に、今期は4円減配となる28円配当を予定しています。当社は昨年の公募増資で資金調達したこともありますが、既に実質無借金であり、ネット現金は200億円超も抱えているため、ピカピカの財務状況となっています。また社員持株会が筆頭株主(上場前保有比率16%)であり、上場時の公募希薄化と売出し、およびその後の高騰で保有比率が下がってしまったものの、依然12%弱を保有しているため、潜在的な株主還元強化意向は強いものと考えられます。そのため、今期の着地は大幅な減益が予想されているものの、減配となる4円を復元して、年32円配の維持を改めて期待したいと思います。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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