今期減益予想だが、不動産転売屋としては堅実さが際立つ・ファーストブラザーズ(3454)。 | なちゅの市川綜合研究所

なちゅの市川綜合研究所

「別に勝たなくてもいいので、負けないこと」を志向しております。
本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報等に基づき、作成されています。
当ブログの情報に全面的に依拠することはお控えいただき、最終的なご判断はご自身でお願いいたします。

IMG_4369.jpg

【3454】ファーストブラザーズ(東証一部) ---

現在値 1,130円/100株 PER7.92 PBR1.11 11月配当 株主優待あり

不動産の私募ファンド運用と自己勘定投資が柱。首都圏商業施設多い。
配当は11月末に21円を予想していますので、配当利回りは1.86%となります。

ファーストブラザーズは株主優待制度を導入しており、11月末時点の単元保有株主に

対して、1,000円分のクオカードを進呈しておりますので、配当優待利回りは約2.74%と

なるほか、1年以上保有を継続する場合は進呈額が倍となるため、同利回りは約3.62%

なります(※尚、2単元保有までは単元の場合と同じ配当優待利回りが維持されます)


業績を確認していきます。
■2015年11月期 売上高 45.5億円、経常利益 26.5億円、EPS 121円 
■2016年11月期 売上高 146.0億円、経常利益 36.6億円、EPS 162円 
■2017年11月期 売上高 187.0億円、経常利益 30.6億円、EPS 146円 

■2018年11月期 売上高 218.6億円、経常利益 47.0億円、EPS 205円 

■2019年11月期 売上高 200.2億円、経常利益 31.7億円、EPS 142円 ce
□2019年5月中 売上高 120.0億円、経常利益 25.0億円、EPS 114円 四e 

2018年11月期の売上高は前期比16.5%増の218億円、経常利益は同53.6%増の47.0億

円となり、売上高は期初予想に届かなかったものの利益は上振れして着地となりました。

主力の投資銀行事業において、池袋や平沼橋(横浜)の一棟ビルをPAGに卸したほか、

KSS五反田ビルをヒューリックリートに販売(34.5億円)で販売するなど、簿価が低い物件

の益出し売りを積極的に実施したことが主な上振れ要因となります。ただ、その売却

の反動もあり、賃貸業における粗利益は前期の12.4億円→11.5億円へ減少しています。


進行期である2019年11月期の予算については、売上高が8.4%減の200億円、経常利益

は32.6%減の31.7億円と大幅な減収減益を予想しております。これは、主力の投資銀行

事業において、実績期の売却物件のように採算性の高い低簿価資産の売却を予定して

いないことや、今期はそもそもポートフォリオの入替志向自体も希薄であるため、数字が

立たない見通しです。それでも前期に投資運用事業(ファンド)において、久々に物件の

積み上げがあったため、AMFeeが一部計上されてくるものとみられます。

 

売上の原資となる棚卸資産の推移については、1年前と比べて280→330億円に増加し

ており、ポートフォリオ全体のNOI利回りも6.1%→6.4%、へと上昇しています。ただ、物件

入替の進捗にともない、含み益は53→44億円へとさらに減少しているような状況です。

つまり、仕入と販売が順調に進捗しており、CAPレート低下傾向による含み益の増加も

期待される環境下でも、利益の顕在化にともなう含み益の減少ペースの方が早いよう

な状況であり、しかもNOI利回りが高くなっている点を踏まえると、CAPレートがさほど

ワークしていない可能性があります。要は、足許の取得物件については利回り重視と

なっている(物件クオリティがそんなに良くない?)点については、留意が必要といえます。

 

会社側は中期的な目標として、2020年11月期の売上高総利益ベースで100億円(直近

期実績64.8億円)を目指しております。基本的な戦略としては、外向きには保有物件と

言いつつも、実は固定資産にしていない低簿価物件を益出し売却して利益を作り、高い

レバレッジ(LTV82.1%)で資金効率を高め、回転売買をして売上を作るようなモデルとな

っていますが、物件売却方針については会社側の“胸先三寸“なので、中期的な業績

目標の達成いかんについては、外部から見通すのは極めて困難かと考えております。

 

ただ当社の手堅いところは、平残16.2年という超長期ローンを、加重金利0.79%で引い

ており、クラッシュの際に備えた財務的な手当てがなされていることです。また、無理し

て右肩上がりの増益基調を作らないことも、不動産転売屋としては非常に手堅い経営

姿勢となります。足許での平残の短期化傾向(22.4年→16.2年)は多少気になるものの、

その分この一年で加重金利が13bp.も落ちているので、妥当な判断の範囲と考えます。

 

なお株主への配当は、毎期毎期の利益のブレ幅が大きいため、配当性向基準でなく、

「DOE2%」を基準としており、なんとなく累進型の配当としつつも、安定配当を実現して

いるため、この辺の資本政策についてもバランスの良いものであると評価しています。

(どうやら会社側は、自己資本比率3割の維持を目線に置いている模様です)

*参考記事① 2018-03-09 1,428円 ---

「Ron Herman」のバケーションレンタル事業を開始、ファーストブラザーズ(3454)。

*参考記事② 2017-03-04  866円*分割修正済 ---

低簿価の保有物件はあとどれだけ?ファーストブラザーズ(3454)。

 

 

会社四季報 2019年2集・春号 [雑誌]

新品価格
¥2,200から

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 

 

特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


このエントリーをはてなブックマークに追加にほんブログ村