【9007】小田急電鉄/複々線効果発現も、登山鉄道運休とインバウンド減が痛打。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9007】小田急電鉄 (東証1部) NT

 

現在値 1,924円/100株 PER24.8  PBR1.75  3月配当優待 9月配当優待

 

新宿拠点の鉄道大手。複々線化推進、グループ経営強化。箱根開発も。

配当は3月末・9月末の年2回・合計22円配当のため、配当利回りは1.14%となります。

 

小田急電鉄は株主優待制度を導入しており、3月末と9月末の年2回・5単元を保有する株主に対して電車全線乗車証を4枚進呈しているほか、小田急グループ各社で使える各種割引券を進呈しております。このうち全線乗車証だけを1枚880円で換算した場合の配当優待利回りは約1.88%となります。

 

業績を確認していきます。

■2016年3月期 売上高 5,298億円、営業利益 529億円、EPS 76.3円
■2017年3月期 売上高 5,230億円、営業利益 499億円、EPS 72.3円 

■2018年3月期 売上高 5,246億円、営業利益 514億円、EPS 81.3円 

■2019年3月期 売上高 5,266億円、営業利益 520億円、EPS 90.1円 

■2020年3月期 売上高 5,578→5,448億円、営業利益 525→470億円、EPS 91.6→77.4円ce修正

□2019年9月2Q 売上高 2,617億円、営業利益 256億円、EPS 46.0円 

□2019年12月3Q 売上高 3,932億円、営業利益 363億円、EPS 59.8円(2/7)

 

2019年9月中間期の売上高は前年同期比1.7%増の2,617億円、営業利益は同12.9%減の256億円となり増収となったものの、期初予算に対してはショートとなりました。主力の運輸業については、2018年3月に完了した小田急線複々線化工事とダイヤ改正効果の継続のほか、消費増税前の駆け込み需要もあったため、通勤定期は計画上の伸び率である前期比+3.3%に対して同+4.1%、定期外収入も同+1.2%の計画に対し同+3.0%と計画超となりました。一方、流通業については百貨店の町田店・藤沢店の改装による一部閉鎖の影響が大きく、免税売上が多い新宿店も反落となったほか、不動産業についても賃貸物件の新規稼働があったものの、前年同期にあった海老名タワマン用地の販売利益剥落影響が大きくセグメント利益が大きく落ち込み、全社利益を押し下げました。

 

2020年3月期の予算については、2月7日に既に開示されている3Qで減額修正しており、売上高は前期比3.4%増の5,448億円(従予:5,578億円)、営業利益は9.8%減の470億円(従予:525億円)を予想しています。主力の運輸業における複々線化効果発現が進んだものの、台風19号による箱根登山鉄道の長期運休による減収のほか、箱根観光の見送り感の強まり(3Q単独期間の“箱根フリーパス”販売枚数は前年比▲35%)もあり反落となる見通しです。また、バス業における人件費増や、箱根芦ノ湖に投入した新型海賊船の償却費増も見込まれるため、運輸業は2桁超の減益まで沈む見通しです。流通業については、百貨店新宿店の免税売上高が軟調に推移しているものの、藤沢店跡地に開業した「湘南GATE」が通期寄与することから、SC転換による人件費削減も相俟って大幅なセグメント増益を見込んでいます。一方、不動産業についても、4Qに海老名駅前のタワーマンションの引渡があるものの、概ね前期並みに留まる見込みです。

 

今期は3年中計の中間年度となっており、最終年度である翌2021年3月期にEBITDA968→1,092億円を目指しています(ホテル稼働時期ズレによる微減額修正反済)。前期EBITDAはマイルストン値である988億円と同値で着地させたほか、約3,100億円を投じた複々線化工事による増収効果も当初計画にキャッチアップしてきており、今期は工事前の2018年3月期比30億円の増収となる見通しのため、2024~2025年3月期頃には目標値である同50億円の追加増収が期待されます。この複々線化効果による乗客数大幅増に加え、JR東日本やヴァル研究所等と組んだ「EMot」という所謂Massの展開により、箱根エリアを皮切りに住宅地の新百合ヶ丘などでも鉄道・バス・タクシー・飲食/小売などの複合的な移動・生活サービスを提供していく方針であり、その辺が中長期的には成長期待のあるアップサイド要素となります。

 

但し、台風19号による被害で箱根登山鉄道が長期運休していることによる“箱根離れ”や、足許の新型肺炎影響が注力中のホテル業に直撃する見通しであり、子会社のUDS(旧・都市デザインシステム)が本中計期間中に国内外で15棟を出店する計画であることから、この辺のホテル・観光業とインバウンドが一巡した百貨店の新宿店が当面は足を引っ張る形で中計は数値未達となる公算が高いと考えられます。なお、ホテル事業については、昨年4月に「MUJI HOTEL GINZA(事業主は読売新聞と三井不動産)」、新宿で「温泉旅館・由縁」、12月には子会社の小田急リゾートが御殿場アウトレットに「HOTEL CLAD」と日帰り温泉の「木の花の湯」を開業しています。

 

な株主還元については今回中計期間においても「配当性向30%を目安とした安定配当を継続」と公表しているため、今期予想配当の22円(配当性向24.0%)は当初増配余地があったものの、今次の下方修正や子会社の白鳩(3192)の株式評価損が発生した場合は期末にボトムラインが削られるため、当初予想が据え置かれる公算が高まったと考えています。

 

*参考記事① 2019-07-22 2,551円 NT

鉄道物足りぬも、「MUJI HOTEL」などホテル続々・小田急電鉄(9007)。

 

*参考記事② 2019-02-13  2,419円 NT

複々線化効果は想定以下だが、百貨店免税売上で底上げ・小田急電鉄(9007)。

 

*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。 特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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