【9007】小田急電鉄 (東証1部) NT
現在値 2,551円/100株 PER27.8 PBR2.40 3月配当優待 9月配当優待
新宿拠点の鉄道大手。複々線化推進、グループ経営強化。箱根開発も。
配当は3月末・9月末の年2回・合計22円配当のため、配当利回りは0.86%となります。
小田急電鉄は株主優待制度を導入しており、3月末と9月末の年2回・5単元を保有する
株主に対して電車全線乗車証を4枚進呈しているほか、小田急グループ各社で使える
各種割引券を進呈しております。このうち全線乗車証だけを1枚880円で換算した場合の
配当優待利回りは約1.41%となります。
業績を確認していきます。
■2016年3月期 売上高 5,298億円、営業利益 529億円、EPS 76.3円
■2017年3月期 売上高 5,230億円、営業利益 499億円、EPS 72.3円
■2018年3月期 売上高 5,246億円、営業利益 514億円、EPS 81.3円
■2019年3月期 売上高 5,266億円、営業利益 520億円、EPS 90.1円
■2020年3月期 売上高 5,578億円、営業利益 525億円、EPS 91.6円 ce
□2019年9月2Q 売上高 2,633億円、営業利益 262億円、EPS 45.8円 ce
2019年3月期の売上高は前期比微増の5,266億円、営業利益は同1.2%増の520億円となり、
期初予想比では減収となったものの、利益は計画線を確保しました。主力の運輸業につい
ては、前期末に完了した小田急線複々線化工事とダイヤ改正により、定期・定期外ともに
増収となったものの、定期収入(乗客人員ベース)は計画上の伸び率である前期比+3.3%に
足らない同+2.2%となり、その一方で定期外収入は同+1.0%の計画に対し同+1.8%となった
ため“乗客ミックス”の問題で計画に届きませんでした。また、流通業についても百貨店の
町田店・藤沢店の改装による一部閉鎖の影響が大きく、新宿店を中心とした免税売上の
激増(前年同期比+25.5%)をもってしても穴を埋めることが出来ませんでした。その一方で、
不動産業については麻布永坂リノベマンションの販売が好調に推移したほか、改装済商
業施設の賃収増もあり、セグメントで2桁弱の増益を確保し、全社業績を下支えしました。
2020年3月期の予算については、売上高は5.9%増の5,578億円、営業利益は0.8%増の525
億円を予想しています。主力の運輸業における複々線化効果発現が遅れているものの、
定期収入(乗客人員ベース)は+0.7%増、定期外収入は+0.6%増を計画しており、セグメント
としては増収を見込んでいるものの、主にバス業における人件費増加や、箱根芦ノ湖に
投入した新型海賊船の償却費の発生により減収を予想しています。流通業については、
依然として百貨店新宿店の免税売上高が好調に推移しているためそこでアップサイドを
見込んでいるほか、百貨店業においては藤沢店跡地に開業した「湘南GATE」が通期で
寄与することから、大幅なセグメント増益を見込んでいます。また、不動産業については、
海老名駅前のタワーマンションの販売(引渡)開始が業績を牽引する見通しであり、足元
では既に85%の契約が完了している状況のため、計画蓋然性が高そうです。
今期は3年中計の中間年度となっており、最終年度である翌2021年3月期にEBITDA968
→1,092億円を目指しています(ホテル稼働時期ズレによる微減額修正反済)。実績期の
EBITDAはマイルストン値である988億円と同値で着地させているため、現段階では計画
水準と判断出来そうです。約3,100億円を投じた複々線化工事による収入増は依然として
物足りないペースで進捗しているものの、流通業や不動産業が堅調に推移しているため、
本業外のサブセグメントで取り返しているような組み立てとなります。
流通業におけるストア事業では、セブン&アイ(3382)との業務提携効果が発現しており、
実績期で自社売店向けの工場閉鎖なども完了して、セブンイレブン店舗へのリプレイスを
順次実施しているほか(今期完了予定)、OXについても同社傘下のヨークベニマルとの共
同出店を進めています。セブンイレブン店舗にリプレイスしたCVSは、改装前比で売上が
3割も伸びているような状況であるため、流通業はもう一段の利益良化が期待されます。
またホテル業についても、子会社のUDS(旧・都市デザインシステム)を中心に沿線内外と
海外に15棟を出店する計画であり、本年4月には「MUJI HOTEL GINZA(事業主は読売
新聞と三井不動産)」を開業したほか、新宿で「温泉旅館・由縁」の開業を済ませており、
別子会社の小田急リゾーツも御殿場アウトレットに「HOTEL CLAD」を今冬開業します。
なお、株主還元については今回中計期間においても「配当性向30%を目安とした安定配
当を継続」と公表しているため、今期予想配当の22円(配当性向24.0%)は依然として増配
余地を残しています。然しながら、今後は新宿西口の小田急百貨店やハルク周辺を核と
した再開発に膨大な資金が必要となり、種地集めや代替ビル確保のための資金が既に
必要になっているとみられることから、余計な株主還元などは必要ないと考えています。
*参考記事① 2019-02-13 2,419円 NT
複々線化効果は想定以下だが、百貨店免税売上で底上げ・小田急電鉄(9007)。
*参考記事② 2018-08-04 2,353円 OP
複々線化完了も、成長の本丸は新宿西口再開発・小田急電鉄(9007)。
![]() |
新品価格 |
*本記事の内容記述は一般に入手可能な公開情報に基づき、作成されています。
特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に
基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。