複々線化効果は想定以下だが、百貨店免税売上で底上げ・小田急電鉄(9007)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9007】小田急電鉄 (東証1部) --

 

現在値 2,419円/100株 PER28.1  PBR2.32  3月配当優待 9月配当優待

 

新宿拠点の鉄道大手。複々線化推進、グループ経営強化。箱根開発も。

配当は3月末・9月末の年2回・合計21円配当のため、配当利回りは0.87%となります。

 

小田急電鉄は株主優待制度を導入しており、3月末と9月末の年2回・5単元を保有する

株主に対して電車全線乗車証を4枚進呈しているほか、小田急グループ各社で使える

各種割引券を進呈しております。このうち全線乗車証だけを1枚880円で換算した場合の

配当優待利回りは約1.45%となります。

 

業績を確認していきます。

■2015年3月期 売上高 5,187億円、営業利益 498億円、EPS 83.6円 

■2016年3月期 売上高 5,298億円、営業利益 529億円、EPS 76.3円
■2017年3月期 売上高 5,230億円、営業利益 499億円、EPS 72.3円 

■2018年3月期 売上高 5,246億円、営業利益 514億円、EPS 81.3円 

■2019年3月期 売上高 5,286億円、営業利益 520億円、EPS 86.0円 ce

□2018年9月2Q 売上高 2,537億円、営業利益 294億円、EPS 53.0円 

□2018年12月3Q 売上高 3,387億円、営業利益 439億円、EPS 77.6円(2/8) 

 

2018年9月中間の売上高は前年同期比1.0%増の2,537億円、営業利益は同2.7%増の294億

円となり、期初予想比では減収となったものの、利益は計画を上回りました。主力の運輸業

については、前期末に完了した小田急線複々線化工事とダイヤ改正により、定期・定期外

ともに増収となったものの、定期が想定以下で推移しているほか、定期外についても夏場の

天候不順の影響を受けて伸び悩みました。一方、流通業について百貨店の町田店・藤沢店

の改装による一部閉鎖があったものの、新宿店を中心とした免税売上の激増(前年同期比

+36.9%)により、セグメント減益予想をひっくり返して、対前年・対予算でも増収増益を確保し、

全社業績を大きく牽引しました。なお、ホテル業は天候不順の影響により反落しています。

 

2019年3月期の予算については、期初予想をほぼ据え置いており、売上高は微増の5,300

億円、営業利益は1.0%増の520億円を予想しています。主力の運輸業は複々線化効果が

徐々に発現してきており、2月8日に開示されている3Q決算によれば、定期収入の対中間

決算比は+1.3%→+1.5%、定期外収入も同+1.1%→+1.9%、とモメンタムが加速しているため、

4Qにかけてある程度の巻き返しが可能とみられます。一方の流通業については、依然と

して百貨店新宿店の免税売上高が順調に推移しているものの、町田店・藤沢店の改装に

よる閉鎖影響が色濃く出てしまっているため、3Qでは逆に数字を落とす形になっています。

それでも全社トータルでは百貨店の免税売上高効果が大きく、予算を達成する公算です。

 

今期は3年中計の初年度となっており、最終年度である2021年3月期にEBITDA968→1,115

億円を目指しており、従来の長期計画の中でEBITDA1,000億円を目標としてきたことを踏

まえると、事実上増額した格好になります。去る3月17日に30年の歳月と3,100億円の巨費

を投じた複々線化工事が完了したことで、約50億円分の増収を見込んでおり、これによる

運送能力の大幅増が業績成長のドライバーの核となります。既述の通り利用人員の伸び

のピッチがやや緩い(本当は利用人数ベースでは+2.0%位の計画だったが、足許は+1.3%程)

のが割引要素ですが、足許では僅かに加速してきているので、様子を見たいと思います。

 

一方、流通業ではインバウンドの追い風を原資とした百貨店の売場改装が進んでいるほか、

ストア事業ではセブン&アイ(3382)との業務提携効果が発現しており、想定を超えて推移し

ているような状況であり、当該セグメントは中長期的に全社業績を下支えするとみられます。

(但し持分を増やして子会社化した白鳩、はポンコツ気味)。またホテル業についても大幅に

強化する計画であり、沿線内外及び海外に15棟(うち3棟出店済)を出店していく計画です。

ホテル事業は、既に子会社化している旧都市デザインシステム(UDS)のノウハウが強みと

なっており、来期初頭に満を持して「MUJI HOTEL GINZA」を開業する予定です。

 

なお、株主還元については今回中計期間においても「配当性向30%を目安とした安定配当を

継続」と公表しているため、今期予想配当の21円(配当性向24.4%)はまだ増配余地を残して

いますが、当社の本当の成長ポテンシャルは、小田急百貨店やハルク周辺を核とする新宿

西口の再開発であり、実際に足許でも“種地集め”を進めているため、財務はなるだけ温存

すべきであり、(公募増資をやられても困るので)増配などは一切しなくていいと思います。

 

*参考記事① 2018-08-04  2,353円 ---

複々線化完了も、成長の本丸は新宿西口再開発・小田急電鉄(9007)。

 

*参考記事② 2017-12-20 2,415円 ---

社運を賭けた「複々線化」事業が完成間近、小田急電鉄(9007)。

 


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基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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