社運を賭けた「複々線化」事業が完成間近、小田急電鉄(9007)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【9007】小田急電鉄 (東証1部) --

 

現在値 2,415円/100株 PER29.0  PBR2.47  3月配当優待 9月配当優待

 

新宿拠点の鉄道大手。複々線化推進、グループ経営強化。箱根開発も。

配当は3月9月の2回・計20円配当のため、配当利回りは0.83%となります。

 

小田急電鉄は株主優待制度を導入しており、3末と9末の年2回・5単元を

保有する株主に対して電車全線乗車証を4枚進呈しているほか、小田急

グループ各社で使える各種割引券を進呈しておりますので、全線乗車証

だけを1枚900円弱で換算した場合の配当優待利回りは1.40%となります。

 

業績を確認していきます。

■2014年3月期 売上高 5,231億円、営業利益 493億円、EPS 69.4円 

■2015年3月期 売上高 5,187億円、営業利益 498億円、EPS 83.6円 

■2016年3月期 売上高 5,298億円、営業利益 529億円、EPS 76.3円
■2017年3月期 売上高 5,230億円、営業利益 499億円、EPS 72.3円 

■2018年3月期 売上高 5,251億円、営業利益 510億円、EPS 83.2円 ce修正

□2017年9月中 売上高 2,547億円、営業利益 302億円、EPS 53.2円(10/31) 

 

2017年9月中間期の売上高は前年同期比1.0%増の2,547億円、営業利益は

同9.9%増の302億円となり、期初予想比では若干減収となったものの、利益

面は大きく上振れました。主力の運輸業が雇用環境回復により、定期収入

が上伸したほか、箱根の観光需要が想定超で推移しました。また、流通業

では小田急ストアが前年割れとなったものの、小田急百貨店(特に新宿店)

がインバウンド巻き返しにより免税売上が回復し、外国人宿泊比率の高い

新宿2ホテルを擁するホテル事業共々、利益水準を大きく押し上げました。

 

2018年3月期通期の予算も中間の時点で増額しており、売上高は前期比

0.4%増の5,250億円(変わらず)、営業利益は同2.1%増の510億円(従予:502

億円)に修正しています。主力の運輸業は定期客の増加を理由に、多少

売上高予想を積み増したものの、利益は据え置いたほか、インバウンドの

好調続く流通業も上期上振れ分の利益しか積み増していません。ホテル

を含むその他事業も、不動産業もほぼ期初予想を据え置いているため、

修正予算は全てのセグメントで保守予想であり、再度の増額が濃厚です。

 

今期は3年中計の最終年度となっており、最終的には2021年3月期を目標

に売上高(営業収益)6,000億円、EBITDA1,000億円を目指しています。この

3年間の至上命題は数量目標の達成ではなく、実に30年の歳月と約3,100

億円もの巨費を投じた複々線化工事の完成であり、11月の会社側の会見

によれば、3月3日に複々線の使用開始・同17日にダイヤ改正を見込んで

います。この複々線化により特に朝夕は爆発的に増発されるため、混雑率

の緩和が期待されるほか、新宿→町田が最大12分、同多摩センター間が

最大14分も所要時間が短縮されます。このほか千代田線直通運転の本数

も大幅に増加するため、中長期的には沿線価値の向上が見込まれ、2016

年3月期との比較で、2021年3月期には約50億円の増収を見込んでいます。

 

他線からの乗り換え需要は最大の“草刈り場”とされる京王相模原線(主に

多摩センター、なお京王電鉄は対抗措置として相模原線の運賃値下げ済)

にくわえ、混雑激しい東急田園都市線からの乗換需要が想定されますが、

会社側はこれ以外にJRの登戸・町田からも流入を見込んでいる模様です。

相鉄(湘南台・海老名)からの流入も期待されるものの、相鉄は東急東横線

・目黒線との乗り入れを計画しているため、今後も競合が予想されます。

 

ということで、何は無くとも3月17日の複々線化を無事に終えることが、社運

を賭けた最重要事項なので、先ずは工事完工を見守りたいところですが、

巨額投資の一服後に気になるのは株主還元です。会社側では、次期中計

期間においても「配当性向30%を目安とした安定配当を継続」、とアナウンス

しているので、現在の通期20円水準は若干これに及ばないものの、当面は

期あたり1円程度のマイルドな増配に留まるとみられます。いかんせん巨額

投資の利払いも凄まじく、財務もかなり悪化してしまったので、複々線化の

“次の矢”として新宿回りの不動産を買い漁って、再開発していくシナリオの

存在も考慮すると、株主還元の強化は時期的にかなり遠い様な気もします。

 

*なお「複々線化記念」として、今回は乗車券優待の特別進呈がありました。

 

会社四季報

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