【3387】クリエイト・レストランツHD/巨額買収相次ぎ、ファイナンス警戒圏か。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3387】クリエイト・レストランツHD(東証1部) NT

現在値 1,943円 PER49.0 PBR910.2 2月配当優待 8月配当優待

SC等の飲食フロアにビュッフェやカフェ展開。立地ごとに業態開発。
配当金は2月末・8月末の年2回で合計12円で、配当利回りは0.62%となります。

クリエイトレストランツは株主優待制度を実施しており、2月末・8月末に100株を保有する株主に対して、年2回3,000円ずつのお食事券を進呈しておりますので、これらを合算した配当優待利回りは3.70%となります。なお、200株以上を1年以上に渡って保有した場合には年2回4,500円ずつの進呈となりますので、約2.93%までは配当優待利回りを確保出来ます。

業績を確認していきます。
■2016年2月期 売上高 1,032億円、経常利益 73.0億円 EPS 35.1円 
■2017年2月期 売上高 1,135億円、経常利益 63.4億円 EPS 34.8円  

■2018年2月期 売上高 1,165億円、経常利益 68.9億円 EPS 26.5円  

■2019年2月期 売収益 1,192億円、税前利益 36.8億円 EPS 14.0円 IFRS 

■2020年2月期 売収益 1,400億円、税前利益 70.0億円 EPS 39.6円 IFRS修正 
□2019年8月中 売収益 635億円、税前利益 43.0億円 EPS 25.7円(10/11)

2019年8月中間期の売上収益は前年同期比6.0%増の635億円、税前利益は同52.5%増の43.0億円
となり、期初予算との比較はないものの、コンセンサス水準を上回って着地しました。予算前提となる既存店売上高を98.2%でセットしておりましたが、ブランド別ではまちまちとなり、クリエイトレストランツ(CR/単体)事業や「磯丸水産」が好調に推移したものの、「鳥良」・「かごの屋」・その他の海外店舗は弱含みとなりました。それでもGWや繁忙期が好調に推移した結果、100.2%と前年並みの水準を確保しています。また、新規出店についても通期計画の51店に対して上期で19店を出店し、同水準の退店があったものの、期中で複数社のMA(※後述)を実施したことにより48店の増加があり、これらが一部寄与したためトップラインを押し上げました。利益面が特に好伸していますが、これはトップライン増による原価率低減(人件費・食材)とIFRS基準でのMA効果で利益が膨らんだこと等によります。


なお、2020年2月期通期の予算については今期2度目の増額をしており、売上収益が約17.4%増の1,400億円(期初予:1,240億円)、税前利益は89.8%増の70.0億円(期初予:56.0億円)へそれぞれ修正しています。上期の好調な既存店の状況を一部織り込み、予算前提の既存店売上高を98.2%→99.3%に洗替えたほか、既に公表済みであったエスエスエル社の業績貢献を下期からフルに織り込んでいます。また、その後に期中MAしたいっちょう社、北米レストラン事業会社の業績についても期末までの一部を反映しています。そのため、10月の台風や消費増税影響を踏まえると、好調な業績が続くことを前提に増額してしまった修正予算はハードルが低くない印象もあり、新たなMA案件でも出てこない限りは、過度な業績期待は禁物と思われます。


当社は3ヵ年中計をローリング形式で開示しており、2022年2月期に売上収益1,520億円、税前利益86億円を今回新たな定量目標として置き直しをしていますが、ロール前の従来中計との比較では再度減額されているため、割引いてみる必要があります。それでも前期からIFRSに移行したことによる会計マジックで、のれんの償却により営業利益が削られることがなくなったため、今回中計からはMAを中心としたノンオーガニックな外部成長志向がはっきりと表れるようになりました。

 

2018年の「ごまそば遊鶴(年商:10億円)」を皮切りに、NYの日本食レストラン2店(年商:7億円)を取得したほか、2019年には「銀座木屋(年商:8億円)」、「前川水軍(年商:15億円)」といった小型飲食ブランドに加えて、西洋フード・コンパスのゴルフ場及びレジャー施設のコントラクト事業を運営するエスエスエル社(年商118億円・営業利益6億円)や、本年9月には北米でイタリアンを展開する「イルナフォリオ(年商121億円・営業利益8.4億円)」、同10月には北関東で和食レストラン「いっちょう(年商113億円・営業利益7.9億円)」を相次いで傘下に収めています。目につくのは大型MAが増えていることであり、エスエスエル社に約59億円、イルナフォリオに約80億円、いっちょう社に約70億円を取得しており、P/Lには相当程度効く案件が多いものの、いずれも数十億円単位の“のれん”が発生する案件のため、見えがかりではなく実態としてのB/Sクオリティはかなり毀損している印象です。

 

そのため、財務面では2018年2月に子会社のSFPHDに当社持分を買い取らせるTOB自社株買いで65億円を回収し、中間期末時点のネットD/Eレシオを0.91倍(便宜上IFRS16号影響は無視)まで良化させているものの、上述の3件の大型買収はいずれも下期実行ということもあり、足許の財務状況はかなり悪化していると考えられます。また、今期よりIFRS16号基準を採用しているため、そういった観点からもB/Sが膨らんで、見た目の自己資本比率も13.8%まで10%程低下してしまっています。かような背景から、好調な業績にも拘わらず配当を年12円で据え置いていますが、戦略的に財務レバレッジをかけていくためには仕方ない部分もあり、否が応でもエクイティ・ファイナンスが意識される状況になってきたと思われます。

 

*参考記事① 2019-06-28 1,343円 NT

ノンオーガニックな外部成長志向が鮮明に、クリエイト・レストランツHD(3387)。

 

*参考記事② 2018-12-21 1,206円 NT

「かごの屋」運営会社の商号変更は意味深淵か、クリエイト・レストランツHD(3387)。

 

 

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