【3492】タカラレーベン不動産投資法人/巡航分配金3,300円射程も、初回PO評価は中立。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3492】タカラレーベン不動産投資法人(東証REIT) OP

現在値 126,400円/1株 PER18.7 P/NAV1.18 2月分配/優待 8月分配/優待

タカラレーベンがスポンサー。オフィスと住宅を軸にホテルなども投資対象とする総合型。

予想分配金は2月末・8月末の年2回合計6,740円配で、分配金利回りは約5.33%となります。
 

タカラレーベン不動産投資法人は投資主優待制度を導入しており、2月末・8月末に10単元以上を保有する株主に対して、2,500円分のヤマダ電機優待券を進呈しておりますので、10単元保有時における配当優待利回りは約5.72%となります。

業績を確認していきます。当法人は2018年7月のIPOとなります。
■2018年8月期_第1期 営業収益 3.7億円、経常利益 0.35億円 DPU 98円 

■2019年2月期_第2期 営業収益 21.3億円、経常利益 11.7億円 DPU 3,392円

■2019年8月期_第3期 営業収益 29.1億円、経常利益 16.2億円 DPU 4,686円

■2020年2月期_第4期 営業収益 30.3億円、経常利益 16.7億円 DPU 3,620円(10/25)修正

■2020年8月期_第5期 営業収益 27.4億円、経常利益 14.4億円 DPU 3,120円(10/25)修正
 

2019年8月期_第3期の営業収益は前期比37.0%増の29.1億円、経常利益は同38.1%増の16.2億円となり期初計画比でも大幅な増収増益となりました。分配金についても当初予想の3,040円から4,686円まで増額され、実に1,646円もの大増配となりました。これは簿価41億円のTTS南青山ビルを53億円で売却することとし、11.7億円の含み益を顕在化させたことが主要因であり、3期と翌4期にそれぞれ7対3の割合で2期に跨って引き渡すことから、特にこの第3期の分配金が膨れた格好となります。また既存物件についても、旗艦物件のひとつである東池袋のオフィスにおいて大型解約のあったものの、無事にリテナントを済ませ、賃料保証付サブリースをパス・スルー契約に切り替えて採算性を良化させたほか、原状回復工事収入も上振れし、2018年のIPO時の取得物件の固都税費用化開始による原価増を易々と飲み込んだ格好となります。


進行期である2020年2月期_第4期については、営業収益が第3期比4.18%増の30.3億円、経常利益は同3.3%増の増の16.7億円となり、分配金は4,686円→3,620円へ▲1,066円減少する見通しです。本来的には本年9月に第1回目のPO(※後述)を実施しているため大幅増益となる筈であるものの、第3期に売却した南青山の売却益計上割合の減少によりオフセットされ、見えがかり上は微増益に留まります。なお、表記予想については10月31日に溜池山王のオフィスビルを6.9億円でレバを使って期中取得したことにより増額した後の洗い替えており、利益超過分配(OPD)の199円分については全額が一時差異調整引当額(いわゆる“ATA”)であり、出資金の払戻しには該当しません。

 

当法人は9月に初となるPOを実施しており、約132億円(@117,000円)を調達しています。ローンチ時の株価が2018年7月の上場時の公募価格である@96,000円を大きく上回った状況であり、P/NAVも1.0倍をクリアしていたことから、値決め前まで嫌気されて結構下がってしまったものの、プレミアム効果が効いてNAVを積み上げることに成功しています。鑑定NOI利回りこそ第2期末の5.1%→5.1%と変わらなかったものの、ポートの築年数は26.3年→20.8年にかなり若返っています。物件的には平和台(4.6%)や勝どき(4.3%)の住戸は築浅で良いと思いますが、表参道(3.5%)の商業や、松山(7.4%)のヤマダ電機店舗といったリスクの高い物件を抱き合わせで取得しているため、POタイミング自体は好判断と思われるものの、内容的にはいまひとつと考えており、総合評価では中立的な評価になろうかと思います。

 

当投資法人は期限の定めはないものの中期的な分配金目標を掲げており、物件の売却や固都税費用化等の一時的な費用増を排除した現状の巡航分配金3,100円、内部成長のみで3,300円、外部成長までありの場合で3,500円水準を目標としています。財務面については、鑑定上限LTVをなんと60%まで許容しており、現在のLTVは47.0~48.0%水準(※溜池山王取得後)になっていると推定されます。当法人は地方物件が多く、物件価格の建物割合が高いので、減価償却によるCF創出が相対的に多く、これを内部留保して追加資産取得の原資にしやすいことから、今後もPOによらずとも盛岡(25億円)のような比較的大きな物件であってもオポチュニスティックにレバで買っていくものと考えられ、POでLTVを下げて余裕があることから、3,300円辺りまでは程なく達成することが可能と考えており、そのポテンシャル考慮で巡航利回りは5.2%程度になろうかと思われます。

 

POしたばかりということもあり、当面はレバ活用による外部成長に期待していく形になろうかと思いますが、スポンサーの方に溜まっている住宅パイプライン(ラグゼナシリーズ)の組入が期待される一方で、新たに霞ヶ関キャピタルとパイプライン・サポート契約を締結したことにより、妙なオルタナティブアセットが組入れられる可能性が出てきてしまったので、投資法人側にはクオリティに拘った物件取得を期待したいと思います。

 

*参考記事① 2019-07-01 102,800円 OP

外部成長なかりせば分配金3,300円目標・タカラレーベン不動産投資法人(3492)。

 

*参考記事② 2018-12-27 86,200円 NT

ヤマダ電機の旗艦物件取得はまだ遠いか、タカラレーベン不動産投資法人(3492)。

 

 

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