上期好調も下期失速気味で、通期達成は微妙・バロックジャパンリミテッド(3548)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3548】バロックジャパンリミテッド(東証一部) OP

現在値 977円/100株 PER12.2 PBR1.87 2月配当株主優待 8月株主優待

若い女性向けの衣料、服飾雑貨SPA。多品種小ロット、中国・日本が二本柱。
配当金は2月一括の年38円配当のため、配当利回りは約3.89%となります。

バロックジャパンリミテッドは株主優待制度を実施しており、2月末・8月末の単元株主に対して2,000円分の買い物券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約7.98%となります。

業績を確認していきます。
■2016年1月期 売上高 687億円、経常利益 61.4億円 EPS 134.9円
■2017年1月期 売上高 694億円、経常利益 53.8億円 EPS 108.3円 
■2018年1月期 売上高 679億円、経常利益 25.5億円 EPS 34.5円 

■2019年2月変 売上高 710億円、経常利益 45.4億円 EPS 81.4円 

■2020年2月変 売上高 679億円、経常利益 47.2億円 EPS 79.0円 ce
□2019年8月中 売上高 312億円、経常利益 20.7億円 EPS 33.8円(10/15)

2019年8月中間期は変則決算明けとなるため未監査参考数値となるものの、売上高は前年同期間比2.8%減の312億円、経常利益は同31.9%増の20.7億円での着地となり期初予算を上回りました。売上構成比の大きい「AZUL」を中心とした国内SC向けブランドは長らく低迷していたものの足元で底打ち気配が見えてきたほか、ルミネ・パルコ等駅ビル向けの「MOUSSY」や、百貨店向けの「EMFOLD」「STACCATO」が引き続き好調に推移しました。1Qの貯金が非常に大きかったため、2Qで冷夏対応のため在庫掃き出しのマークダウンで利益を潰しにいったものの、なお余裕があったものとみられます。中国事業の出店については店舗純増が1店に留まったものの、既存店については春・夏品好調により2Qで急速に巻き返し、ロイヤリティ収入が大きく増加しました。

 

なお2020年2月期の通期予算については期初のものを据え置いており、売上高が前年同期間比変わらずの679億円、経常利益は同1.1%増の47.2億円と事実上の横ばいを予想しています。予算の前提となる既存店売上高(EC含む)は、通年で102.6%と強い設定をしていますが、既に開示済の9ヶ月累計の月次によれば97.6%となっているほか、台風により月3日以上クローズした店舗を計算から除外しているため、実態としては表記よりも弱含んでいるとみられます。国内出店については、新店21店・退店17店の4店純増を計画しているほか、21店で改装を実施する計画であり、S&Bと既存店のテコ入れが主施策となっています。一方、拡大続く中国事業については、積極的な出店施策により通期純増20~30店ほどを計画しておりましたが、上期時点で純増1店となっており、9ヶ月累計月次売上こそ104.3%で強含んでいるものの、この出店の遅れによりトップラインは弱含みと予想されます。そのため、全社トータルでは上期まで非常に強かったものの、3Qで国内・中国とも躓いている可能性があり、通期の予算達成はなんとも微妙な状況と言えます。


今期は減額ローリング後の新中計の初年度となっており、5年後の2024年2月期に売上高1,000億円(CAGR10%)、経常利益は87億円(CAGR17%)を目指しています。基本的な考え方として、当社は既に国内を成熟市場として捉えており、足元で苦戦をしつつもまだまだ構成比が高いSC向けの「AZUL」で回収をしつつも、今後は「MOUSSY」「EMFOLD」等の将来性のある少数のブランドに絞って育成し、積極的に海外展開していく方針であり、この5年で海外売上比率を1/3まで引き上げ、その後は国内外を逆転させる青写真を描いています。

 

中国事業については、現地イコールパートナーの靴小売大手の百麗国際(旧HK:1880)が進めるEC再定義戦略“NEW RETAIL(ネットとリアル店舗の融合みたいなこと)”を共同推進しています。まだ先行投資期間であり、施策としてもRFID(電子タグ)の部分導入や、在庫確認のEC・店舗間連携などごく限られた施策しかローンチされておらず、国内・中国事業におけて本戦略が収益寄与してくるのにはまだ相応の時間がかかるとみられますが、唯一アリババのTmallへの出店強化と日本企画商品の供給増により、足元のEC売上が前年同時期比2.7倍に成長している点だけは素直に明るい材料と言えそうです。

 

ただ国内外共通の話として、この“NEW RETAIL”戦略は中計全期間の5年という長い時間軸を取った上で進められるものであり、当面この成否のビジビリティが低い状態が続くため、掲げる業績定量目標については現時点では過大な計画と評価しています。


なお株主還元については、欠損状態だった利益剰余金が既にプラスへ転じていることから、公表配当性向の30~40%が維持される公算が高いと考えています。当社の上位株主が百麗国際(と親会社の投資会社HillHouse)であることや、同じく大株主のオリックスも純投資目的で保有していることも遠因かと思いますが、年38円の配当額については、揺るがないものと判断していますが、昨今はガバナンス改善の潮流が一段と激しくなっているため、マイナーシェアのオリックス保有株は以前より放出される可能性が高くなった点は留意すべきかと思います。

 

*参考記事① 2019-06-20 891円 OP

中国事業足踏みも、全社的には復調気配・バロックジャパンリミテッド(3548)。

 

*参考記事② 2018-12-14 1,002円 OP

決算期変更でドサクサの減額も、内容はやや良化の気配・バロックジャパンリミテッド(3548)。

 

 

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