中計頓挫も、既存店好調で今期は予算達成圏か・すかいらーくHD(3197)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3197】すかいらーくホールディングス(東証1部)  NT

現在値 2,031円/100株 PER36.4 PBR3.09 6月配当優待 12月配当優待

「ガスト」「ジョナサン」「バーミヤン」等のファミレスの運営。
配当は6月末・12月末の年2回合計の19円配当のため、配当利回りは約0.94%となります。

すかいらーくは株主優待として6月末・12月末の単元株主に対し、3,000円分のお食事券を年2回進呈しているため、配当優待利回りは約3.88%となります。なお、1,000株までは持株数に応じた優待券がほぼ正比例で追加されます。

業績は下記の通りです。ちなみにIFRSです。 
■2015年12月期 売上高 3,511億円、営業利益 278億円 EPS 77円  
■2016年12月期 売上高 3,545億円、営業利益 312億円 EPS 93円  

■2017年12月期 売上高 3,594億円、営業利益 281億円 EPS 86円

■2018年12月期 売上高 3,663億円、営業利益 228億円 EPS 58円

■2019年12月期 売上高 3,700億円、営業利益 220億円 EPS 55円 ce  
□2019年6月中 売上高 1,874億円、営業利益 110億円 EPS 27円(8/14)

2019年6月中間期については、期初予算との比較はないものの、売上高は前年同期比4.5%増の1,874億円、営業利益は同7.5%増の110億円となり、増収増益となりました。既存店の売上前提を100%で置いていたものの、102.7%水準での着地となりました。これはガスト等のリモデル(客席改装)や、データ解析によるサイドメニューの併売率向上策により客単価の上昇に成功したことが主な要因です。利益面については人件費の単価上昇で▲12億円、株主優待のコスト増により▲6億円が押し下げられたものの、トップライン成長で吸収しました。なお、上期の出退店に関しては、新店41店・退店10店となり、その他業態変更等の諸々をネットした店舗の純増数は、前期末比+30店であり、計画比ではややビハインドとみられます。

2019年12月期の通期予算については、期初計画を据え置いており、売上高が前期比1.0%増の3,700億円、営業利益は3.8%減の220億円を予想しています。予算前提の既存店売上を100%水準に置いているものの、既に開示されている9ヵ月間累計ベースは101.7%で仕上がっているため、順調な推移が確認出来ます。出店計画については前期を下回る70~80店程の出店(純増約50店)と、250店程のリモデルを予定しています。利益面については、リモデル投資と人件費単価の上昇を既存店のコスト削減効果でオフセットする計画となっているほか、IFRS16号適用により店舗賃借料が減価償却費に代わるため、営業利益ベースで10億円程良化する見通しです(実態は金融費用が営業外に出るため同じ)。こうした特殊要因もあり、4Qは消費増税と台風の影響が懸念されるものの、上期の貯金が大きいため、通期予算は走破可能圏にあると考えています。

 

今期は3年中計の最終年度となっており、当初目論見では今期末に売上高3,900億円(CAGR3~4%)、営業利益380億円程度(CAGR6~8%)を目指していましたが、今年度の予算に照らせば中計は事実上頓挫したものと考えられます。それゆえ会社側は定量目標の達成を(おそらく)諦め、定性的な構造改革に乗りだしており、IT本部の新設による決済多様化推進や、従業員の生産性向上のための働き方・店舗運営のデジタル化、アプリの高度化と配布クーポンの最適化による顧客獲得強化などの各種先行投資に注力しています。実際、TVCMを削ってデジタル広告にシフトし、自社アプリ外でのクーポン配布を強化しており、今上期からその効果が徐々に発現し、高単価化が進展しています。


出店業態については、「ガスト」「夢庵」「バーミヤン」のレガシー3業態からの業態転換により、高単価の「しゃぶ葉」を集中的に高速出店していくほか、「から好し」「むさしの森珈琲」については新規出店を中心に店舗数を増やしています。また、ウーバーイーツなどの外部リソースの活用も含めたデリバリー対応店舗を足許で1,000店舗超にまで拡大させており、今4Qにはエンド客向け/配達員向け双方のアプリを大幅改良し、来期以降のデリバリー分野の拡大に弾みをつける目論見であるとみられます。勿論、デリバリーにより劇的な売上伸長が期待出来るわけではないものの、来期の既存店売上の底上げには一定程度寄与することが期待されます。

 

なお株主還元については、前期比半減の年19円配当を予想しています。この配当政策は配当性向30%基準に則したものとなりますが、これはIFRS16号の適用によりB/Sが膨らんで、自己資本比率は39.5%→29.3%に10%強も落ち、見かけ上の財務が悪化するため、会社側としては内部留保を厚めに取りたい(若しくはそれにかこつけて財務温存したい)という意図があるものとみられます。IFRSですので、のれんと同様に16号基準適用による本件使用権資産も減損リスクがある点は要注意といえます。

 

*参考記事① 2019-04-27  1,833円 NT

配当性向30%水準に見直し、配当額は半額水準へ減配・すかいらーくHD(3197)。

 

*参考記事② 2018-11-01 1,758円 NT

ベイン去りし後はのれん代費用化リスクも、すかいらーくHD(3197)。

 

 

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