ユニクロや他社EC拡大で、ビジネスモデル揺らぐ・西松屋チェーン(7545)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【7545】西松屋チェーン(東証1部) --

現在値 869円/100株 PER13.6 PBR1.36 2月配当優待8月配当優待

ベビー・子供衣料と生活雑貨のロードサイド大型店を全国展開。
配当金は2月末・8月末の年2回計21円で、配当利回りは2.42%となります。

西松屋チェーンは株主優待を実施しており、100株を保有する2月末・8月末現在の株主

に対して、年2回・1,000円分の株主優待カードを発行しておりますので、配当優待利回り

は約4.71%となります。別途、3年以上保有を継続する株主への長期優遇制度があります。

業績を確認していきます。
■2016年2月20日期 売上高 1,328億円、経常利益 61億円 EPS 58.2円
■2017年2月20日期 売上高 1,362億円、経常利益 80億円 EPS 79.0円  
■2018年2月20日期 売上高 1,373億円、経常利益 71億円 EPS 74.0円

■2019年2月20日期 売上高 1,381億円、経常利益 39億円 EPS 34.1円  

■2020年2月20日期 売上高 1,450億円、経常利益 65億円 EPS 64.8円 ce 
□2019年8月20日中 売上高 721億円、経常利益 32億円 EPS 31.8円 ce

2019年2月期の売上高は前期比0.6%増の1,381億円、経常利益は同44.8%減の39億円と

なり、期初計画は言うにおよばず3Q時点の減額予算をも下回りました。出店に関しては、

計画線となる新店58店(純増は53店)の開業を達成し、期末の店舗数は1,004店まで拡大し

たものの、ベビー・マタニティ用品が苦戦したほか、天候不順に起因した衣料品の不振に

端を発した在庫処分のための値引き販売が常態化しました。そのため、既存店売上高が

前年を上回ったのが僅かに2ヶ月のみ(通年で95.8%)という大変苦しい結果となりました。


進行期である2020年2月期の予算については、売上高が4.9%増の1,450億円、経常利益

65.2%増の65億円、と一転して増益を予想しています。出店に関しては実績期並の新

店50店(純増40店)ほどを計画しており、基本的に出店による外部成長がメインになります。

出店に関しては、引き続き300坪級の大型店の出店の拡大と、旧モデル店舗のリプレイス

出店により、エリアでの営業最適化を図ります。なお月次の既存店売上高は既に3月~5月

の3ヶ月分が既に開示されており、5月のGWに1,000店舗感謝キャンペーンを張ったものの、

1Q累計期間は前年比98.6%に留まっており、今期も早くも未達の公算が高そうです(当社は

そもそも予算が強すぎる傾向にあり、在庫処分値引きで辻褄を合わせにいく傾向も強い)。

 

当社は中期的な業績の定量目標値として、5年後となる2024年2月期に売上高1,800億円

(CAGR5%)、経常利益180億円(CAGR36%)を目指していますが、これは本来2023年2月期に

目標としていた数値のため、事実上1年後ろにローリングされた形となりますが、実績期の

落着が壊滅的な仕上がりだったため、目標水準としてはかなり無理筋と化しつつあります。

 

基本的な戦略としては、出店によるトップラインの増加と、PB商品自社開発による利幅の

確保が二本柱となります。特にPB商品に関しては、アイリスオーヤマなどと同様に家電

メーカーOBの採用を継続しており、安価で機能性に優れたベビー用品・玩具等を自社で

開発し、開発したPB商品を1,000店舗を超えるの自社の店舗網に乗せ、所謂“SPA化”を

推進しています。また足許では、PB商品を台湾・香港・中国・ベトナムなどアジア圏への

輸出を始めているほか、中国最大のECサイトである天猫(Tmall)にも出店しました。ただ、

国内におけるユニクロの子供服の取扱高は、既に当社の売上高に匹敵する規模にまで

成長しているとみられるほか、定期的な来店動機となる紙おむつの購入もAmazonなどの

ECに食われてしまっているため、長期的には当社オリジナルPBの商品力が劇的に向上

するなどしない限り、出店中心の成長戦略は早晩行き詰まる可能性が高そうです。


なお、財務に関しては相変わらずの無借金経営かつ450億円の現金を抱えるチタン級の

好財務となっているほか、これとは別に有価証券を65億円程保有しており、体力を持て

余しています。それでも配当については配当性向32.4%水準となる21円配の据置を予想

しており、これとは別に少量の自社株買いを定期的に実施しているものの、物足りなさは

目立ちます。現金同等物と時価総額のスプレッドがほぼ無くなり、事業価値のバリューが

ゼロ評価に近くなる中で、唯一のカタリストはアクティビストによる圧力期待なのですが、

昨年の株主総会で買防策が向こう3年間分も更新されてしまったので、当面は株価的に

も無風状態が続くものとみられます。

 

*参考記事① 2018-05-19  1,307円 --

盤石の好財務も、株主還元強化には向かず・西松屋チェーン(7545)。

 

*参考記事② 2017-11-24 1,288円 ---

通期減額も、はや未達圏。株主還元強化に期待・西松屋チェーン(7545)。

 

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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