「ロードス」マネタイズ開始期待も、希薄化先行で苦しい・土木管理総合試験所(6171)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【6171】土木管理総合試験所(東証一部)  --

現在値 452円/100株 PER19.5 PBR21.63  6月12月配当 株主優待あり

土木工事に必要な試験・調査・分析を行う試験と地盤補強工事が二本柱。
配当は6月・12月の年2回・合計7.5円配当のため、配当利回りは1.66%となります。

土木管理総合試験所は株主優待制度を実施しており、12末の単元保有株主に対して、
信州戸隠そばを進呈しておりますので、500円相当として換算した場合における配当優待

利回りは2.76%となります。

業績を確認していきます。  
■2015年12月期 売上高 43.6億円、経常利益 4.1億円 EPS 54.9円 
■2016年12月期 売上高 45.2億円、経常利益 4.0億円 EPS 40.8円  
■2017年12月期 売上高 48.0億円、経常利益 3.0億円 EPS 15.1円 

■2018年12月期 売上高 56.6億円、経常利益 4.9億円 EPS 23.2円 

■2019年12月期 売上高 62.0億円、経常利益 5.0億円 EPS 23.1円 ce 
□2019年6月中間 売上高 27.7億円、経常利益 1.5億円 EPS 6.4円 ce 

 

2018年12月期の売上高は前期比17.7%増の56.5億円、経常利益は同69.5%増の34.9億円

となり、売上高・利益ともに対前期・対予算ともに大きく上振れしました。主力の土地・地質

試験事業については、災害復旧復興関連が想定超で推移したほか、2014年の法改正で

橋梁・トンネルの定期点検が厳格化されたことによる需要増加もあり、総じて堅調に推移

しました。また地盤補強事業についても、住宅着工の減少により軟化傾向が続いていま

したが、大型案件の受注に成功したため、同セグも大幅な増収増益となりました。


進行期である2019年12月期の予算については、売上高が9.5%増の62.0億円、経常利益

は1.7%増の5.0億円と増収増益を見込んでいます。土地・地質試験事業については、災害

復旧復興関連や、インフラの維持管理の受注が底堅く推移するとみられるほか、リニア新

幹線や北陸新幹線延伸といった大型案件の受注も期待される状況です。また、昨年10月

に買収した土木測量設計プログラミング開発のISP社(年商約1億円・経常利益約1千万円)

の業績がフルに寄与するものの、のれん代の償却が発生するため、売上の伸びに対して

利益の伸びは押し下げられます。また、今期も引き続き官公需が多いため、業績が4Q(と

1Q) に大きく偏重する見通しであり、2Q・3Qは殆ど見せ場なしとなります。

当社は2017年6月に東京大学との共同開発を発表していた、道路・軌道の路面下ビッグ

データ共用システムである「ロードス」の開発を昨年完了させており、現在は10の自治体

(佐賀県・松本市・安曇野市・北九州市等)にて試験導入されている状況です。「ロードス」

は道路・軌道を車で走行することで、地中にレーダーを飛ばしてデータを収集し、AIやア

ルゴリズムにより空洞の有無や埋設管、道路舗装の状況といった6種類のデータを可視

化することが出来るシステムとなっており、省人化や工事費の削減が見込める画期的な

商品となっています。まだ正式な受注はないものの、既に3自治体でこの4月からの行政

予算取りが進んでいるような状況のため、今期よりマネタイズが開始される見込みです。

 

会社側はこの「ロードス」を利益成長のドライバーとして捉えており、実際の運用シーンに

おいてはガソリン代、運転手代、車代くらいしか費用が掛からないので、本商品における

営業利益率は10%超と試算されるものの、ローンチ後しばらくはAIに地質パターンを学習

させるための期間が必要であるほか、初期改良費が発生するため、本格的に業績寄与

するのは早くて来期(2020年12月期)以降になるものとみられます。

 

また、この「ロードス」のシステム投資等に必要な原資は、2017末に野村證券を相手先に

MSワラントを2百万株分刷っており、概算15億円程度の資金を追加で調達することとして

いましたが、最終的な調達額は12億円程度に留まった模様です。また、約16%もの希薄化

を伴い行使完了となったため既に相応のEPSが毀損しているものの、肝心の「ロードス」

のマネタイズが始まっていないため、現時点の株価バリュエーションが一番きつい状況で

あり、実際足許の株価も年初来安値を更新してきていますが、今期が業績の谷になるか

どうかしっかり見極める局面かと言えそうです(そうでなくても建設コンサルはマルチプル

が出ずらく、PERも1桁半ばとかはザラにある)。

 

*参考記事① 2018-04-05 576円 --

東大と共同開発の「ロードス」が有望だが、希薄化は重し・土木管理総合試験所(6171)。

 

*参考記事② 2017-04-11 332円*分割修正済 

地震ヘッジ用のバリュー銘柄、土木管理総合試験所(6171)。

 

 

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基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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