150億円規模のライツ完了で、財務は一段良化・サムティ(3244)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【3244】サムティ(東証一部) ---

現在値 1,473円/100株 PER6.23 PBR0.91 11月配当優待 5月配当

関西軸に投資用マンション開発、不動産再生販売等を行う。賃貸が安定収益柱。
配当金は5月・11月の年2回、合計75円のため、配当利回りは5.09%となります。

サムティは株主優待制度を実施しており、11月時点の3単元超保有株主に対して、当社

が運営するセンターホテル東京、大阪の宿泊券を各1枚ずつ進呈しております。これらを

1枚5千円として換算した場合の、3単元保有時想定配当優待利回りは約7.35%となります。

業績を確認していきます。なお、会社側の中間予想は非開示です。
■2015年11月期 売上高 384億円、営業利益 59.3億円 EPS 204円
■2016年11月期 売上高 524億円、営業利益 85.8億円 EPS 196円 
■2017年11月期 売上高 604億円、営業利益 101億円 EPS 234円 

■2018年11月期 売上高 842億円、営業利益 140億円 EPS 283円 

■2019年11月期 売上高 860億円、営業利益 150億円 EPS 236円 ce
□2018年5月中間 売上高 470億円、営業利益 92.0億円 EPS 149円 四e

2018年11月期の売上高は前期比39.3%増の842億円、営業利益は同37.5%増の140億円

となり、トップラインから3割を超える大幅な増収増益を確保したほか、8月末の増額修正

予算も上回って着地しました。不動産事業については、傘下の住宅REITや外部ファンド

等に対して開発型賃貸マンションを17棟売却したことが牽引し、一般向け投資マンション

分譲の落ち込み(690→383戸)をカバーしました。また、かねてより苦戦していた商業物件

である「ピエリ守山」を売却したことで、40億円超もの評価損が原価に計上されたものの、

翌期に売却予定であった好採算物件である博多・日本橋箱崎のエスペリアホテル2棟を

前倒しで売却することでオフセットし、不良物件の片付けまで済ませた格好となりました。


進行期である2019年11月期の予算については、売上高が2.0%増の860億円、営業利益

は6.9%増の150億円を見込んでおり、控えめな目標になっています。業績の原資となる、

実績期の仕入高については125億円に留まっており、仕入予算の半分程度に留まって

いるものの、今期初の決済予定分で128億円あるので、在庫は手当てされているものと

考えられます(売上高ベースでは約385億円分を確保している模様)。なお、今期はさらに

一般向けの投資マンションを縮小させる計画となっており、開発型賃貸マンション(14棟)

と、再生流動化41件の転売で数字を作っていく目論見となっているため、“買い手側の”

資金調達環境の変化には特に注意する必要がありそうです。


当社は昨年9月、好調な業績推移を背景に、2020年11月期を最終年度としていた中計を

再度増額ローリングしています。新たな業績目標として、3年後の2021年11月期に営業

利益200億円(CAGR12%)を目指すほか、その他KPIとしてROE15%(実績16.9%)、自己資本

比率30%(実績37.9%)を設定しています。今回の中計は「強靭化計画」という副題が付いて

おり、従来のP/L重視の業績拡大戦略から一変して、アセット品質や財務余力の確保を

優先したB/S温存志向の強い内容になっています。特に傘下REITにおけるAUM残高の

積み上がりの遅れを早期にキャッチアップしたい意向があるようで、REIT向けに利回り

の取れる地方での仕入・開発を急ぐほか、REITの拡大によるストック型のAMFee収入の

拡大を目指しているものとみられます。また、同じくストック型収入の確保を目的として、

他社も手薄な地方オフィスビルの開発を進め、自社のブックに乗せていく方針です。

 

つまり当社は向こう3年間の中計期間で、これまでのような転売型ビジネスモデルによ

る鋭角的な業績成長を諦めて、ストック型賃貸業への脱却を図っていると言えそうです。

昨年9月に実施したライツ・オファリングはその証左であり、発行済株式数が1.5倍へと

激増したものの、149億円もの巨額な資金調達に成功しており、自己資本比率も1年前

の23.4%から37.9%へと飛躍的に良化させています。希薄化のインパクトが大きいので、

本来であればここまでのサイズの資金調達は不要だったはずですが、これは転売依存

ではなく、自社開発物件を販売せずにブックで保有して賃貸して数字を作るための布石

であると捉えるのが正解かと思われます。


なお株主還元については、実績期より配当性向を30%水準まで事実上切り上げており、

今期は7円増配となる75円配当(配当性向31.7%)を予想しています。既述のライツ増資

により、財務的にはかなり潤沢になったので、このくらい配当しても問題ない範囲と考

えていますが、その一方で4.2%もの引受手数料を払って資金を調達したのに、それを

易々と吐き出してしまうのは、資本政策上やや疑問が残るところではあります。

 

*参考記事① 2017-03-10 1,114円 ---

傘下REITの調達環境と金利影響が大きい、サムティ(3244)。

*参考記事② 2016-03-02 986円 ---
水戸・ヤマダ電機の後継決まる、サムティ(3244)。

 

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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