オンワードのZOZO撤退は追い風、EC戦略に弾みつくか・アダストリア(2685)。 | なちゅの市川綜合研究所

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【2685】アダストリア(東証1部) --


現在値 1,928円/100株 PER20.6 PBR1.74 2月配当優待 8月配当

カジュアル衣料店をSC内軸に展開。グローバルワーク等ブランド多数。
配当金は2月末・8月末の年2回で合計50円で、配当利回りは2.59%となります。

アダストリアは株主優待制度を実施しており、単元株を保有する2月末の株主に対して、

3,000円分のお買い物券を進呈しておりますので、配当優待利回りは約4.14%となります。

業績を確認していきます。
■2015年2月期 売上高 1,845億円 営業利益 59.8億円 EPS 10.4円 
■2016年2月期 売上高 2,000億円 営業利益 160億円 EPS 188円 

■2017年2月期 売上高 2,036億円 営業利益 149億円 EPS 242円 
■2018年2月期 売上高 2,227億円 営業利益 50.0億円 EPS 18.3円 

■2019年2月期 売上高 2,270億円 営業利益 87.0億円 EPS 93.5円 ce
□2018年8月2Q 売上高 1,050億円 営業利益 5.2億円 EPS ▲11.7円

□2018年11月3Q 売上高 1,623億円 営業利益 57.0億円 EPS 65.4円(12/28)

2018年8月中間期の売上高は前年同期比2.6%減の1,050億円、営業利益は同86.0%減の

5.2億円となり、期初予算との比較はないものの、コンセンサスを下回って着地しました。

好調な「niko and」を除き、MDが不調だった他ブランドがおしなべて低調に推移したため、

既存店売上高は予算前提の101.0%に対し、95.8%と大きく下回りました。また、トップライン

減少だけでなく、在庫削減のための値引も販売を強いられため、利益率が急低下しました。

なお、2Qにかけて「LEPSIM」「JEANASiS」など一部のブランドの持ち直しがみられました。

 

なお、2019年2月期の通期予算については、売上高が1.9%増の2,270億円、営業利益は

67.8%増の84億円と期初予算を据え置いています。上期凹み分が反映されていないため

基本的には未達濃厚ではありますが、既に開示されている3Q単独期間(9-11月)の月次

既存店売上高は、予算前提の101.0%を毎月クリアしているため、復調兆候がみられます。

 

実際、12/28に開示された3Q決算では、売上高が前年同期比0.6%減の1,623億円、営業

利益は同15.4%減の57.0億円までキャッチアップしています。内容としては、売上高の嵩

の大きな主力ブランドである「GLOBAL WORK」や「LOWRYS FARM」において、秋冬物

のMD改革(メリハリのある値付、若年層訴求の抑制等)の効果が発現した形となります。

留意しなくてはいけないのは、3Qで利益が急改善したカラクリとして、年間22億円にも

及ぶ旧トリニティーアーツの“のれん代”の償却が上期で終了したことによる上乗せ分が

オンされているので、QonQでは劇的な改善をしているものの、かなり割引く必要があり、

当社のこれまでの期初予算信頼度を鑑みると、依然として未達濃厚圏といえます。

 

これまでの当社はローリング形式の3年中計で売上高と営業利益の定量目標を定める

形式をとっていましたが、3年後の2021年2月期を最終年度とする新中計では営業利益

率8%(実績4.3%)、ROEを15%(実績1.6%)というKPI目標へと変更されました。これは当社の

売上至上主義に基づいた在庫の“投げ売り”を止めることが主目的であり、当面は利益

コンシャスの経営を志向しています。基本的には、従来の様に在庫を積み上げまくって、

売れ残りを値引して数字を作るのではなく、SPAとしてのバリューチェーン・MDを見直し、

適量の在庫でプロパー販売比率を引き上げていく形となります(これは当たり前の話)。

 

外部成長的な施策としては、830万人規模に育った自社の「.st」会員に手厚いポイントを

バラまいて、ブランド間の回遊を促すとともに、オムニチャネル化の促進を図っています。

自社のEC化率は未だ9.3%に過ぎず、他社と比べても低い水準にありますが、9月には

ドコモの「dポイント」の導入による高単価化も実現しており、自社の高率還元ポイントと

の併用を釣り餌に、オムニチャネル化というよりもZOZOをはじめとする他社ECから自社

顧客を引き抜くことが真の狙いとみられます。当社はまだ他社ECによる販売ウエイトの

方が高いため引き抜きの効果が高いほか、足許で業界の盟主であるオンワード樫山が

ZOZOを退店しているため、当社はZOZOとの手数料交渉等で優位的となる公算が高く、

自社ECにせよ他社ECのいずれにせよ、EC分野の利益成長が期待出来る状況です。

 

なお今期の配当予想については、前期に25円減額した経緯もあり、50円配の据置きを

予想していますが、当社は借金が殆どない好財務企業であることを鑑みると、たとえ業

績が今期も未達であっても、維持される可能性の方が高いと考えています。

 

*参考記事① 2018-06-09 1,448円  ---

今期もMD施策の空回りが継続、復活にはかなりの時間・アダストリア(2685)。

*参考記事② 2017-12-07 2,485円  ---
通期下方修正でも「巻き返し」が前提、アダストリア(2685)。

 

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特定の証券・金融商品の売買の推奨ないし勧誘を目的としておらず、本記事に 

基づいて投資を行い、何らかの損害が発生した場合でも責任を負いません。


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