物書きの大脳辺縁系~ライター・白土勉のブログ -6ページ目

物書きの大脳辺縁系~ライター・白土勉のブログ

【大脳辺縁系】脳の中で、感情や記憶、本能行動を司る中枢となる部分。
 サラリーマンから転身した脚本家、白土勉の感情(日々思うことや気になるニュース)や記憶(今までの仕事や経験談)、本能行動(執筆に関するあれこれ)などを書こうと思います。

今日は打ち合わせ二本を終えた後、待ちに待った試写でした。
「デスノート」や「ばかもの」の金子修介監督の新作「青いソラ白い雲」という
作品です。

【物語】
高校を卒業したリエ(森星)は、アメリカの大学に進学するため母親と一緒に
渡米するが、その翌日に東日本大震災が発生。母親と離婚した父親(渡辺
裕之)や友人の安否が気になり、日本に戻った彼女は、震災ボランティアを
している恋人から、震災によって飼い主がわからなくなった犬・ソラを預かる。
一方、震災の影響で父親の営む会社が倒産して、リエには犬のソラだけが
残される形となってしまい……。  (シネマトゥデイより)

いつも通り(とは言っても、レビューはまだ一度だけですが)ネタバレをしない
ようにストーリーの細かいことは避けつつ、感想を書きたいと思います。

普通、震災について描くとなると、被災地を舞台として考えると思うのですが、
本作の舞台は一貫して東京です。東京ではありますが、リエは放射能測定
器(ガイガーカウンター)を手に怯えてますし、元彼から押しつけられるのは
震災から生き延びた犬です。父親の会社が倒産するのも、震災が影響して
います。震災後の東京に戻った日常という、正に今、我々が日々を過ごして
いる世界と同じ舞台の中で、物語は進んでいくのです。

私たちはあの日、被災地で起きた凄まじい光景を、ニュースの映像を通じて
沢山見てきました。それをどんなに再現したとしても、被災地の状況をどんな
に描いたとしても、ニュース映像を上回ることを伝えるのは非常に困難ですし、
今、それをすべきではないでしょう。だからこそ、この“震災後の東京”という
切り口は斬新でありますし、とても素晴らしいと思います。

映画が始まり、すぐにハッとしました。ヒロインであるリエの目力に。

柴崎コウさん、広末涼子さん、北川景子さん――今までにも初めて女優さん
を見た時に、同じような感覚を覚えたことが何度かありました。今、それらの
女優さんたちは皆、押しも押されぬ人気女優となっています。

本作のヒロインは森星(もりひかり)さんという新人の方で、モデルとして活躍
されてる中で監督の目にとまったとのことです。この目力が、鬼才と称される
監督の心を奪ったのだろう――そう思わせる程に、素敵な眼差しです。この
女優さんは、いずれ前出の女優さんたちと肩を並べる人気女優となるのでは
ないでしょうか。つい、そう期待してしまいます。

けれど、本作の中で、リエの目は初め、何も見ていません。恵まれた環境の
中で、どんなに目の前の物や人を見ていても、見てないのと同然。人の心
も思いやれず、自分のことを棚に上げて人を批判するような子で、どんなに
目力が素晴らしくても、それは空虚なものでしかありません。

それが、震災後の東京に戻り、思いがけず様々な災難が降りかかり、“プチ・
サバイバル”を強いられる中で、次第に目の前の物を、人を、何より人の心を
しっかりと見るようになっていくのです。リエの目も、どこか空虚な感じが消え、
真っ直ぐに現実を見つめる目へと変わっていきます。この少女の成長ドラマが
穏やかに、時にユーモアを交えながらテンポ良く綴られていくのです。

監督の書かれた小説「夏休みなんかいらない」の読後にも感じたことですが、
よく考えればとてもシリアスで重いシチュエーションをとても爽やかに、そして
穏やかに描くからこそ、ラストの感動が大きくなるのだと分かり、物を創る者
として、とても良い勉強をさせて頂きました。

96分の作品でしたが、あっという間に感じました。それ程、のめり込んで観て
いたということだと思います。

試写会終了後には監督もいらっしゃり、久しぶりにお会いしてご挨拶も出来
ましたし、今日はとても素晴らしい日となりました。

金子監督、お誘い頂き、本当にありがとうございました。

身近に居そうなヒロインが困難に巻き込まれる様にドキドキしながら、最後
には少しの勇気と、明日も前向きに生きようという元気を貰える作品です。
ご興味をお持ち頂いた方は、是非、劇場でご覧頂ければと思います。

 ◎詳しい情報はこちら
   「青いソラ白い雲」公式ブログ



人気ブログランキングへ

ああ……雪山に行きたい……ゲレンデが恋しい……。

毎年、この時期になると、そんな思いに駆られます。特に、今日のように
肌が痛いと感じるほどの寒さを覚えると、その思いは抑えきれません。

数年前までは、一年に二、三回はゲレンデに行っておりました。更に前、
会社に勤めていた頃は、年に十回も行っていた時さえありました。

私は、筋金入りの運動音痴です。中高時代、体育の授業で得意だった
のはバレーボール。よく顔面ブロックしていました。

サッカーは、地面に置かれたボールを蹴るのでさえ、当たる確率は年末
ジャンボの一等前後賞当選確率の方が遥かに上。

野球に至っては、まぐれで当たったはいいものの、一瞬、頭が真っ白に
なり、三塁に向けてまっしぐらに全力疾走した男です。

そんな私が唯一、人並みに出来るスポーツが、スキーなのです。

ああ、ゲレンデが呼んでいる……。

ふと昨年夏に見た、ある映画が脳裏をよぎりました。節電で冷房を極力
使わないようにしていたので、少しでも涼める映画がいいと思いまして、
ゲレンデを舞台にした映画を見たのです。

『フローズン』。タイトルからして涼しそうです。ワンシチュエーションもの
スリラーで、一言で言うと、ゲレンデに来て浮かれた少しお馬鹿な若者
たちが、身勝手なことをし過ぎた挙句、エラい目に遭うという物語。

本当に一言で言えてしまいますね。けど、潔いほど、それだけなんです。
何の捻りもありません。

ネタバレをしたくない私としては、詳細は語りませんが、感想を一言。
「ゲレンデ怖ぇ~」
面白いと思うかどうかは人にもよりますので、そういう紹介の仕方はしま
せんが、今までにあまりなかった映画だとは思います。この作品では、
ゲレンデに取り残された若者を襲う、ある恐怖の仕掛けが施されている
のですが、その仕掛けが私的にはツボであり、異様に怖く感じたのです。

まぁ、恐らく日本のゲレンデでは起こり得ない話だと思います。その恐怖
の仕掛けが存在しないですから。けれども、見えない影に怯えたり、あり
もしない物を恐れるというのが、恐怖という感情の本質でもありますので、
きっと草津や苗場で滑っている時でも、この作品を思い出すことでしょう。
勿論、何も起きないのは分かっていますが。

それにしても、アメリカのB級映画はワンシチュエーションものが好きです
ね。「SAW」にしても「パラノーマル・アクティビティ」にしても、よく一つの
舞台で話がもつなと感心させられます。勿論、予算がないからこそ、そこ
だけで話を終わらせなければならないのでしょうし、本作でもストーリー
を創るのに四苦八苦したであろう痕跡が、そこかしこに見られます。

その点、これはスペイン映画ですが、先日レビューを書いた「[リミット]」は
よく出来ています。非常にストーリーが練られていて、思わぬ方向に話が
展開しつつも、全体としてはシンプルで力強いという映画です。

何はともあれ、本作も映像を創る人間として、一つの参考になる作品では
あります(この辺りの言い回しに、私がこの作品をどう思ったのかが滲み
出てしまっておりますが)。低予算で面白い作品をいかに作るかが、この
時代にメジャーではない環境で映像を創る人間に課せられた課題です。
今年は、この課題をとことん追求し、斬新な作品を生み出したいと思って
おります。

その為には、今年もスキーを我慢して執筆に励まなければ。

とりあえず、また“ゲレンデ行きたい病”が発症したら、「フローズン」を観て
気持ちを抑えようと思います( ̄- ̄*

『フローズン』
監督  アダム・グリーン
出演  ケビン・ゼガーズ ショーン・アシュモア エマ・ベル




人気ブログランキングへ

今日は全国的に日曜日の中、一人デスクに向かい、仕事中の白土です。
あ、正確に言うと、今は休憩してブログを書いていますね。

前にも書いたのですが、私は脚本家としてデビューする以前、会社員を
しておりました。ある電機メーカーの中に、映像ソフト製作を行う部署が
あり、新卒で入社後にそこに配属されたのですが、二年後には子会社
に出向となって、そこで映像関連の営業やマーケティングを主にやって
おりました。映像というところは一貫していたんです。最初の何年かは、
その会社の中で、会社員として映画を創る(プロデューサーの)仕事に
携わりたいと思っていたのですが、次第に変わって参ります。

現在は、不況の影響もあって、多くの会社で社内の雰囲気はあまり良く
ないと聞きますが、当時は今と違い、さほど世相も悪くはなかったので、
和気藹々とした会社も多く、私の居た会社は特にそうでした。

レンタルビデオ店(当時はまだDVDではありませんでしたので)に毎月
発売される映画のビデオを売り歩くという営業で房総半島を回っていた
ことがあるのですが、一年の中で、ある時期になりますと、妙に上長が
そわそわして、やたら話しかけてくるようになります。

「白土君。今月の状況はどうだね?ちゃんと、目標は達成出来そう?」
「(社内のシステムで受注状況が分かるので、戸惑う)え? ええ、まぁ」
「そうかぁ。あと、どこが残っているんだい? 今後のスケジュールは」
「(昨日、営業予定表を出したばかりなので、更に戸惑う)あ、あとは……
千葉市内と銚子だけですね」
「そうか。優秀優秀。ところで、銚子に、確か新規開拓を考えているお店
があるって言ってたね?私も丁度、予定が空いてるんだが……」

……

イワシ食いたいんだ。

そうです。銚子は日本でも有数のイワシの漁港でして、特に入梅イワシ
と言われる梅雨前後のものは、脂が乗っていて旨いんです。

私がそのテリトリーを担当し始めた時、担当交替の挨拶の為に、上長も
同行してくれたのですが、今思えば、これもイワシ食べたさのことなので
しょう。他のテリトリーには、一緒に行こうという話は出ませんでしたから。
更に付け加えるなら、銚子に新規開拓を考えている店があるなどと、私
は一言も言っておりません。そこは大人だから、あうんの呼吸で敢えて
言いはしませんが。

取引店では手持ち無沙汰でつまらなそうにしていた上長が、晩飯の時に
は別人のように活き活きとしていらっしゃいました。

その会社の中には、そんな愛すべき上長がゴロゴロといらっしゃいました。

別の上長は、私が下に就くなり、私に年齢を尋ねました。戸惑いながらも
答えると、勝ち誇ったようにこう言ったのです。

「君が管理職になる頃に、俺はもう定年でこの会社には居ないから、君が
俺の上に立つことはない。だから、俺の言うことを素直に聞け」


…………



子供ですか、あなたは。

何て上司の下についてしまったんだと、我が身の不幸を嘆きつつ、その
上長の下で切磋琢磨した訳ですが、結果的にはその上長はとても私の
ことを理解してくれましたし、我が子のように接してもくれました。とても
素晴らしい上長であり、初対面時のあれは、その方の部下になる為の
一種の通過儀礼だったのでしょう。

その人の口癖が「俺は、サラリーマンのプロだ」でした。

対する私は、いつかは映画の物語を作る仕事に就きたいという気持ちを
内に秘めたまま、かりそめの会社員生活を過ごしていたのです。ただ、
生活の糧を得る為だけに。

本当に、いいのだろうか? 俺の人生、このままで。

そして、この上長のような人たちに失礼ではないだろうか?

私の心の底には、そのような考えが澱のように溜まり、次第に重くのし
かかるようになってきます。

水は低きに流れ、人は易きに流れます。

そんな愛すべき上長に囲まれて、辛いことや苦しいことはありながらも、
日々の仕事を楽しみながらやっていくことは、とても素晴らしい人生だと
次第に感じられるようになりました(その後の不況は、恐らくあの社内も
一変させたでしょうが、当時はそんなことはこれっぽっちも考えることは
ありませんでした)。だからこそ、そこに居ることが非常に怖くなったの
です。

組織の一員として勤め上げることは素晴らしいことですが、私が自分の
生涯として望んだのは、そういう生き方ではありませんでした。そうである
にも関わらず、そこに居たら日々の仕事が楽しすぎて、そういった上長を
始めとした人々との交流に満足してしまい、映画を創る仕事に携わりたい
というモチベーションを保てないと思ったのです。

自分を敢えて苛酷な環境におくことも、時には必要です。

その結果が、一昨日のブログに書いたメ系の人たちへの取材だったりも
しますが。

今、シナリオライターを目指して修行している人が沢山いると思います。
その殆どの方が、目の前の生活を支える糧を何らかの仕事で得つつ、
作品を書いているのでしょう。私も、常日頃から塾生たちに「生活の糧
は理屈ではなく、どんな時でも得なければ生きていけないのだから、
それを考えた上で修行をしなさい」と言っています。

けれど、今目の前にある日々の中で自分のモチベーションが保てない
と思ったなら、勇気を出して今の生活を一変させることも必要なことだ
と思うのです。

今日と同じ明日を繰り返すことは、苦痛に感じる時もあります。ですが、
敢えて語弊を恐れずに言うなら、同時にそれは楽なことでもあります。
新たなことにチャレンジするには色々なことを考えて、判断しなければ
なりませんし、勇気も必要です。決して、楽ではありません。

そして、その勇気を持ったから、今の私があると思っています。

結局、全ては自分に与えられた一生分の時間を何に使うかのかという
問題でしかない訳で、それに気づいた時、私は会社を辞めたのです。

今でも、あの会社で、あの上長たちと過ごした日々を懐かしく思い出し
はしますが、後悔はしていません。物を書くという仕事は、私にとって
そういうものであり、もしあの時に戻ったとしても、もう一度同じように
会社を辞めるでしょう。

今日、ある作品を書いている“生みの苦しみ”の中で、ふとそんな事を
考えました。


人気ブログランキングへ

ここのところ、長文ブログが多かったので、今日は少し短めにd( ̄∀ ̄*

シナリオを80本も書いてきますと、色々な作品を手がけますし、色々な
出来事があります。

以前に書いたと思いますが、私はどちらかと言いますと、いえ、圧倒的に
手がけた仕事はVシネマが多いんですね。そして、Vシネマと言うと、メ系
の作品か、ちょいお色気の作品が殆どでして私は一時期、前者ばかりを
書いている時期がありました。

え? メ系って、何かって? 傷ですよ、傷。ほっぺの( ̄m ̄*
(▼▼メ ← こんなお兄さんたちが活躍するジャンルです。

そういうジャンルの作品には、いわゆる実録と呼ばれるものもありまして、
時にはその世界の方の取材に行くこともあります。

忘れもしません。最初に、取材に行くように言われたときのことを。日本海
側の某所に取材に行くよう、プロデューサーの方から言われました。
「分かりました。それで、どちらで待ち合わ……」
「俺、忙しいんだよ。一人で行ってきて」


え?…・・・……一人で?



…………えええええっ!?一人でって、アローンって奴ですかい?


ようやく言葉が脳みそに到達し、事態を飲み込んだ私が驚愕した時には、
携帯から発信音が漏れているだけでした。かけ直す勇気もありません。

翌朝。某駅前。空港行きのバスに乗る時には、既に覚悟を決めてました。
「きっと、俺、海に浮かぶんだろうな……いや、沈むのかな……」

私の中には、その手の人に会えば、命はないという固定観念があります。
まだ、私がそのジャンルの作品を書き始めてすぐの時のことです。

「この時期(一月)の日本海……冷たいんだろうな……」
ふと、朝焼けの中に佇む駅前のパルコを目に焼きつける私。もう二度と、
この景色を見ることはないんだなと思うと、行きなれたデパートも、行き
交う名も知らぬ人たちも、ゴミにたかるカラスさえもが、無性にいとおしく
思えてきます。きっと、この時の私は、今までの人生で最も慈しみの愛
に満ち溢れた存在となっていたように思います。

「ブレードランナー」のルトガー・ハウアーの気持ち、分かります。

羽田に着き、搭乗を待つ間、最後の晩餐(時間的には朝食)とばかりに、
サンドイッチを味わい、コーヒーを疲れた胃に流し込みます。今日のこと
が気になって気になって、眠れなかったのです。

そんな状態のまま、不安というよりも恐怖に近い気持ちを抱えて、目的
地の空港に着く私。
「全てが夢でありますように……あるいは、プロデューサーのお茶目な
ジョークでありますように……あるいは……」
ビビリーな私は、往生際が悪いです。
そんなこんなで到着ロビーを出ると、明らかに異様な雰囲気の集団が……。

あ、黒い。全身、黒づくめって、本当なんだな♪ ……いやいや、喜んでる
場合じゃねーし。皆さん、険しい表情を浮かべ、鋭い視線で周囲を見回し
てるし。やべー。決めていたはずの覚悟が吹っ飛んだ。

後は、頭の中は真っ白で全く記憶なし。人間って極限状態になると思考
回路が停止するように出来ているんですね。

そんな風に恐れ、戦きまくった私ですが、今も、ちゃんと生きています。
このブログを書いているのです。

結局、メ系の方々から客人として歓待して貰い、取材も無事に済んだよう
です。「ようです」というのは、やはり記憶がおぼろげで、はっきりとは思い
出せないから。

何故、こんなことを書いたかと言うと、毎年、この時期になると、ふと思い
出すからです。朝焼けの中のパルコを。今日も、その駅前を通った時に、
思い出しました。まだ若かりし頃の自分を。

あれから色々な作品を書いて、色々な経験もしてきた私ですが、今でも
ちょっとビビリーだったりします。

案ずるより産むが易し。

あ、今日も、ちっとも短くなかったな( ̄‐ ̄;

おしまい。



人気ブログランキングへ

昨日は、本年初の研修科授業。だが、年明けは忙しい人も多く、出席者は一人。
マンツーマンで 二時間、みっちり授業を行いました。

出席してくれたKさんは、技術系の仕事をする傍ら、脚本家修行をしていらっしゃい
ます。基礎 科の時から、私はKさんの才能に目をつけており、基礎科が終了した
時に研修科への参加をオファー したのです。

うちの塾の研修科は希望者が全て参加できる訳ではなく、希望したクラスの講師
が参加を承諾する か、もしくは講師の側からオファーを出すかという二つのルート
で、参加者が決まります。

Kさんは素材の取り上げ方、着眼点が非常に面白く、個性的な作家になるのでは
ないかと期待 しています。現在も、とても面白い企画を授業の中で開発中です。
そして、Kさんが理系であるという ことも、シナリオを書くの際の大きな強みになる
かも知れません。

統計を取った訳ではありませんが、自分自身も含めて周囲の同業者を見る限り、
シナリオライター には文系人間が多いように感じます。勿論、文系の人間は文章
力に長けているという長所があり ますし、そもそも文系と理系という二つにざっくり
とカテゴライズするのも乱暴な話だと思いますが、理系 の人の長所である、論理
的思考に長けているという面が、シナリオを書く際に活かされるのでは ないかと
考えているのです。

シナリオを執筆する際に、構成をどのように組むかがとても重要です。構成とは、
どのように物語を 観客に効果的に、尚且つ分かり易く伝えるかを考えて、全体の
シーンやシークエンス(幾つかのシーン の集まりによる話の一まとまり)の順番
を考えることです。この構成は当然、緻密な計算を必要 としますし、その計算を
する上で、理系の才能が活かされるように思うのです。

現に、「シックス・センス」の監督、M.ナイトシャマランはインド人ですが、インドは
世界に名だたる 数学を得意とする国民で、国も数学教育に力を入れています。
その論理性が、シャマランの 作品における特徴の一つになっているとも言えるの
ではないしょうか。

又、理系ならではの世界(大学の理系研究室や学会、企業の研究所、医療機関
など)やテーマ を描く際も、その才能は発揮されるでしょう。どんな作品を書く際も
取材が必要ですが、理系の 分野の取材をする時、元々の素養がある方が理解も
深でしょうし、様々なことを考えられると思うのです。

Kさん以前にも、理数系でありながらシナリオの才能もあると感じた人がいました。
つい先日まで 在籍していた大泉貴さんです。大泉さんは、「ランジーン×コード」で
宝島社第一回「このライトノベル がすごい!」大賞を受賞されましたが、その大分
前に基礎科を受講していたのです。学業が多忙 で一度、受講が難しくなった際、
私は時間を貰って会いに行き、才能があるから是非とも続けた方がいいと言って
引き止めました。それ程、理系の思考回路がありながらシナリオ的発想も出来る
人間が稀有であったし、 有望な後輩ライターを育てたいと思っていた私にとって、
魅力的でもあったのです。

勿論、文系のライター志望者にも文系ならではの長所があると思います。基本的
な文章力に長けていること のみならず、キャラクターを作る際に重要な(実はこれ
が最も重要な点だと思うのですが)人間への洞察 力を、読書などを通じて鍛えて
いるという長所です。

私は、こういったそれぞれの長所を活かした才能ある新人が次々とデビューする
ことで、映像・ 出版業界での選択肢が増えることこそ、受け手である観客や読者
にとっては幸せなことであり、その 結果、業界が盛り上がって拡大すれば、既に
創り手として業界にいる者も恩恵をこうむることが 出来ると思うのです。これが、
あるべき業界発展の姿ではないでしょうか。

先を行く者が後から来た者 を蹴落としたり、今まで築いた繋がりにすがって仕事
を独占するなど、本来、決してあってはいけないことだと思い ます(現実としては、
そんな事ばかりだと聞きます)。創り手が戦うのは、自分の作品の質を上げる為
に だけであり、戦う相手は決して同業者ではない筈です。

そんな訳で、私はいずれKさんを始めとする塾生たちを、世に送り出したいと心
から思っています。だからこそ、惜しみなく自分の築いてきた人脈を紹介して、
共にデビューへの道を歩くのです。

書き忘れましたが、また一人、塾生がデビューしました。以下が放送予定です。

 FM熱海湯河原 Ciao!(79.6MHZ) 毎週日曜日16時半~17時
 『東京アニメレディオ』 [提供:トーキョーヴォイスファクトリー]内
           ※サイマルラジオ(インターネット放送)でもお聞き頂けます。
               http://www.simulradio.jp/  (「東海」の欄にあります)
  『未来への一手は僕らの中』(全4話/第1話は1/8に放送済み)
   1/15  第2話    1/22  第3話    1/29  第4話

新たな才能の登場です。皆さん、もし良ければ、是非聴いて下さいね。


人気ブログランキングへ