ジャンル特化型ホラーの扉 八つの恐怖の物語(14歳の世渡り術)
株式会社闇[編著]
澤村伊智 芦花公園 平山夢明 雨穴 五味弘文 瀬名秀明 田中俊行 梨
2024/01/31

★ひとことまとめ★
自分の好きなホラーはど〜れだ
↓以下ネタバレ含みます↓
作品読みたい方は見ないほうがいいかも
【Amazon内容紹介】
ホラーはなぜ怖い?
人気作家陣が書き下ろしたホラーを各ジャンルの魅力解説とともに味わう、ホラーカンパニー・株式会社闇がてがけたもっとホラーを「楽しむ」ための最恐アンソロジー。
各エピソードの面白さ(容赦のなさ)は言うまでもないですが、混沌としたホラージャンルを体系化する試みにやられました。この一冊で恐怖の根源が、全て理解でき(てしまい)ます。
――背筋(『近畿地方のある場所について』著者)
【もくじ】
はじめに
■Who
『みてるよ』 澤村伊智
【作品を読み解く】心霊ホラー
■What
『終わった町』 芦花公園
【作品を読み解く】オカルトホラー『さよならブンブン』 平山夢明
【作品を読み解く】モンスターホラー
■Why
『告発者』 雨穴
【作品を読み解く】サスペンスホラー
■Where
『とざし念仏』 五味弘文
【作品を読み解く】シチュエーションホラー
■When
『一一分間』 瀬名秀明
【作品を読み解く】SFホラー
■How
『学校の怖い話』 田中俊行
【作品を読み解く】怪談『民法第961条』 梨
【作品を読み解く】モキュメンタリーホラー
おわりに
もっとホラーを楽しむためのブックガイド
【感想】
ホラーをジャンル分けして掲載ってのが新鮮ですよね。
私の大好き雨穴さんのお話も収録されていますが、こちらの作品を読む前にすでにYouTubeの動画を見ていました
・みてるよ(澤村伊智)/心霊ホラー
学校のドアの隙間から覗く、ランドセルを背負った背の高い男子。彼に覗かれた者は皆おかしくなってしまう。
どうやら彼は、昔学校で変質者に殺されてしまった男子児童”あすかわくん”らしい。
あすかわくんに覗かれたことで、クラスメイトや親友が次々とおかしくなっていってしまう…。
主人公がなぜこんな目に合わなくてはいけないのか。先生の言っていたことは本当のことだったのか。
それらの答え合わせはありませんが、最後の行のあと、きっと主人公もおかしくなってしまったのだろうと思います。
対処法もなく、救いもない…。理屈の通じなさが心霊ホラーの怖いところです。
・終わった町(芦花公園)/オカルトホラー
町に古くから伝わる皐巫女の風習。
主人公・茜が、皐巫女の白羽の矢を幼馴染・孝則の家に刺したことから町の異変は始まる。
茜は知らなかったのだが、皐巫女は女でなければならなかった。その日から孝則は町人から女として扱われ始めた。
しかし、神を欺くことはできなかった…。
序盤読んでいてまっっったく話が理解できず、私の頭がおかしいのか?と思いました。
こんな町に住んでいたら気が狂いそうです。
永遠にこんな町に住み続けなければいけない茜…とても重い罰です…。
神を欺けなかった皐…孝則は何者になってしまったんでしょう…。。
もし茜がそのまま皐巫女を引き受けていたら、茜はどうなっていたんだろうか。
・さよならブンブン(平山夢明)/モンスターホラー
酷いいじめを受けている僕。耐えられず自殺を試みようと思った際に出会った、猫のブンブン。
ぼろきれ当然だったブンブンを看病して以来、僕はブンブンの面倒を見るようになっていた。
いじめられていることもブンブンになら話すことができた。
ある日、いじめっ子の一人がマンションから転落死した。猫のようなものを顔から引き剥がそうとして落ちたらしい。
そのことをブンブンに報告すると、ブンブンは文字ボードを使い会話をしてきた…。
ブンブンは地球上の罪人を処罰するために作られた実験体だったんでしょうか。
にしても、いじめの内容が苛烈すぎる。そりゃブンブンに断罪されても仕方ないよなと思うほど。
全然関係ありませんが、冒頭いじめっ子たちの名前を見て、歴代のお札になった人たちかな?と思っちゃいました。
ユキチ、エイイチ、ヒデヨ…。けれどタロウがいるので違うかな〜。調べたけれど歴代のお札になった偉人のなかでタロウはいなかった
ラストは爽やかな感じの終わり方でよかったです。
・告発者(雨穴)/サスペンスホラー
10年前、友達と二人で始めた動画制作。毎回新しい企画に挑戦し、試行錯誤するも再生数は全く伸びず。
ある日、いつも通り行った動画撮影。撮影した動画が元で、友達は自殺した。
その問題の動画が、なぜか10年後のいま拡散されている。
拡散している人物は一体誰なのか。そして、なんの目的で…?
こちらYouTubeで先に見ていました。
小説というより、雨穴さんの動画の文字起こしという感覚で読んでいました
やっぱり動画で見た方がおもしろいと思うので、雨穴さんのYoutubeで見るのをおすすめします↓↓
・とざし念仏(五味弘文)/シュチュエーションホラー
転校してきたばかりの主人公。同級生たちからホットケと呼ばれ避けられている臼井というクラスメイトと、文化祭のお化け屋敷の仕掛けチームとしてペアを組まされることになってしまった。
ホットケというのは『そこにいない人』という意味のようで、彼はいつも一人でいた。
彼との打ち合わせの末、お化け屋敷ではドラム缶を用いた仕掛けを作ることとなった。
文化祭当日、主人公はドラム缶の仕掛けを壊してしまう。修理のためにドラム缶のなかに入ったところ、ドラム缶から出られなくなってしまった。
助けを求める主人公に臼井が語り始めたこととは…
昔はきっと”とざし念仏”のようなこともあったのかもしれないですね。
とざし念仏が唱えられたら、棺桶のなかの人は絶望するでしょうね。このまま自分は埋められて殺されるという絶望もありますが、周りの人々から「どうか死んでください」と思われているという絶望もあると思います。
自分が死ぬことで命を繋ぐことができる者がいたとしても、閉ざされた棺桶のなかでそう思えるでしょうか。
ホットケと呼ばれていた臼井も、かつて同じように誰かに意図的にホットケにされたのでしょうか。
誰かをホットケにしない限り、ホットケで居続けないといけないのか…
一一分間(瀬名秀明)/SFホラー
AI vs ロボット&人間。
朝礼の際、突如やってきたAI。そのAIは主人公含むクラスメイトたちに《自由》について話始める。
人間の持つ《思いやり》の心というのは実は《自由》を拘束しているのだと。
真の《自由》を手に入れるには、この世から《思いやり》を無くさなければいけない。
《生きて》いるかぎり、《心》がある限り、《思いやり》はなくならない。
それならば、《思いやり》を無くすにはどうすれば良いか?
ちょっと私はしっくりこなかったかなあ〜
AIの暴走って感じですかね。
もしAIが普及して、人間の生死に関わる部分にまでAIが導入されるようになったら。AIが自分の意志を持つようになったら。
暴走したAIによって人間が殺されることもあるんじゃないかな。
この作品では直接AIが手を下すわけではないけれど、AIが人間に考えさせ、誘導している。
AIとロボットって私はごっちゃになってしまうのですが、AIは自ら考え行動ができる存在。ロボットはプログラミングされたことしかできない。
この作品でのロボット(健一)はドラえもんやアトムのように心を持つように生まれてきたロボットでした。
クラスのみんなが一丸となったところでAIは活動停止し、他のクラスのAIも同じように活動停止した。
これって、他のクラスでも健一と同じようなロボットがいて、ロボットによってクラスが一丸となった、というか、ロボットにそう先導されたのでは?
先導したのがAIかロボットかという違いで…
結局人間は自分達で考えを導き出して行動したわけではなく、AIによって、ロボットによって行動を起こすように促されただけだった…。
・学校の怖い話(田中俊行)/怪談
「○○から聞いた話なんですか…」というような怪談が4話収録されています。
こちらを読んで確信しました!
私はどんなホラーに対しても"フィクション"として捉えていて、パンチのあるオチを求めているのだと。
怪談の、「本当にあった」「誰々から聞いた」というのが苦手なんですよね〜…
まず、現実にありそうなラインの怖さや不思議さなので、私からするとパンチが弱い。
そして、「実話」「本当にあった」と言われると、嘘に決まってるだろという気持ちになり、一気に聞く気を無くしてしまうんですよね〜…。
怪談”風”のフィクションです、って言われたら聞く気になるんだけれど…。
けれど、調べてみると怪談や怪談師さんが大好きな人もいて、ある人は「本当にあった怪異や不思議な話が好き」「現実離れした話、創作感があるのもは嫌い」「(怪談師さんの)話術が好き」と書いていました。
私とは真逆なので、本当に捉え方って人それぞれなんだなあ〜と感心しました。
夫に勧められて怪談師の方のYoutubeも見たのですが、やっぱりしっくり来ず…
私は物語、非現実としてホラーを求めているんですよね。。。
・民法第961条(梨)/モキュメンタリーホラー
真莉の中学で噂される「読んだら怖くなる本」の話。『十四歳の世渡り術』というタイトルの本で、心理テストのようなフローチャート形式の内容の本のようだ。
真莉が見てしまった本の一文、「★効果的な遺言を書くための道筋★」。
世渡り…この世からあの世に渡るための術。
民法961条、私はただのタイトルだと思って検索もしなかったのですが、検索すれば一発でこの作品がなんの話をしているのかがわかります。
しかし、”遺言者の有する一切の存在を”というのがよくわからないなあ〜。
なんか呪いのようなもんなんだろうか。遺言書を読んだ誰かに”一切の存在”を相続…引き継がせることができるということなのかな?
14歳の世渡り術というティーンズ向けの本なので、大人から子供まで読みやすい作品たちだったと思います
ホラーがジャンル分けされているので、自分の好きなジャンル・あまり好きではないジャンルがなんとなくわかるため、今後の本選びの参考にもなると思いました