11冊目:異端の祝祭 | 【読書感想文Blog】ネタバレ注意⚠

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異端の祝祭

芦花公園

2024/02/07




★ひとことまとめ★

人はそれを本物と呼ぶ


 

 

 

 

↓以下ネタバレ含みます↓

作品読みたい方は見ないほうがいいかも

 

 

 

【Amazon内容紹介】 

失敗続きの就職浪人生・島本笑美。
原因は分かっている。彼女は物心ついた時から生きている人間とそうでないものの区別がつかないのだ。
街に溢れ返った異形のモノたちは、自分の姿が見えていると分かるや否や、笑美に纏わり付いてくる……。

ある日、ダメ元で受けた大手食品会社「モリヤ食品」の面接で、笑美はヤンと名乗る青年社長と出会う。
出会ったその瞬間から、何故か自分に惚れ込んでいるヤンに心奪われ、笑美はそのままモリヤに就職することを決める。
しかし「研修」という名のもと、ヤンに伴われて笑美が見たのは、「ケエエェェェエコオオォォオオ」と奇声をあげながら這い回る人々だった――。

一方、笑美の様子を心配した兄・陽太は、心霊案件を専門とする佐々木事務所へ相談に訪れ……。

ページを開いた瞬間、あなたももう「取り込まれて」いる。
カクヨム発の「ほねがらみ」がTwitterでバズり大反響! ネット民を恐怖の底に叩き落とした驚異の新人作家が放つ、民俗学カルトホラー!

 

 

 

【感想】

 先日読んだ「ジャンル特化型ホラーの扉 八つの恐怖の物語 」で芦花公園さんを知り、この作品が巻末のおすすめにのっていたので読んでみましたニコニコ

カルト×オカルトです。

カルトの教祖にリーダーシップだけでなく、超能力と呼ばれるような力があったら…。

人々はそれを"本物"と呼ぶのではないか。


島本笑美は自己肯定感がものすごく低い。

中学時代はいじめを受け、高校時代はいじめは無くなったものの友人と呼べるような存在はおらず空気扱い。大学では人付き合いがなくともうまく過ごせていたものの、就職活動で躓いてしまう。

コミュニケーション能力が皆無で、陰鬱な印象と挙動不審さが目立つ笑美を採用する会社は現れない。そうこうしているうちに就職浪人になってしまった。


笑美の陰鬱さの原因の一つは、生きている人間とそれ以外の区別がつかないという体質にある。ほとんどは普通の人間と同じような見た目をしており、少しでも気づいた素振りを見せてしまうと一方的に話しかけてきて、徐々に異様な風体に変わっていく。

一度話しかけられると体がひどく重くなってしまう。

そんな彼女が頼り、心許せるのは兄の陽太だけだった。



有大企業であるモリヤ食品の面接に向かう途中でも、笑美はそれ以外の存在に話しかけられ面接に遅刻してしまう。

遅刻という大失態を犯したものの、面接官たちは気にもとめることなく順調に面接が進んでいく。


面接が終わりに近づいた頃、笑美は体が押し潰される程の圧迫感に襲われた。

"社長"と呼ばれる男性が室内に入ってくる。

圧迫感の出処は"社長"と呼ばれた男性を遮るようにして浮いている、顔の半分以上が眼窩を占めているバケモノだった。

恐ろしさに声も出せなくなっている笑美に"社長"が言った言葉は、「明日から来ていただけますか」という合格通知だった。

なんと、あの有名企業のモリヤ食品に就職できてしまったのだ。


"社長"はモリヤ食品の実際の社長ではなく、笑美よりも年下に見えた。

自身を「ヤン」と呼ぶよう指示した彼は、一体何者なのだろうか。笑美は様々な疑問を抱きつつも、指定された研修施設に向かう。

指定された場所は雑木林。そこにポツンとひとつ建物が立っている。

自分は騙されたのではと考え始めた笑美の眼前に現れたのは、あの眼窩女とヤンだった。

研修施設で笑美はヤンの指示に従い作業をするが、それは一般的な新人研修とはかけ離れたもので…。



ヤンの持つ不思議な力。彼は出会ったばかりの笑美を愛していると言う。

彼はどう考えても異常なのに、彼の目を見るだけで全身が多幸感で一杯になってしまう。

そして笑美もまた彼を愛してしまった。



妹がモリヤ食品の研修に行ったきり、連絡がとれなくなってしまった。

笑美の兄・陽太は心霊関係を扱う佐々木事務所に相談に訪れていた。


陽太は笑美の様子を怪しく思い、研修施設まで後をつけたがもちろん中に入ることはできず。

研修施設の所在地で検索したところ、イベントスタッフの求人募集が見つかった。

陽太は求人に応募し、研修施設に潜入することになった。施設での一週間の泊まり込みのバイト中、陽太はそこで恐ろしい体験をする。

自分の力だけでは笑美を取り返すことはできない。どうか協力してほしい。



陽太からの相談を受け、佐々木事務所所長の佐々木るみ、ビジネスパートナーの青山幸喜は調査を始める。

ヤンとは何者で、彼が行なっている儀式は一体何なのか。なぜ笑美が巻き込まれているのか。





自分が体験したらと考えるととても怖いです真顔

割のいいバイト見つけて喜んでいたら、変な儀式に巻き込まれる。生贄として捧げられる。

逃げようにも教祖の持つ不思議な力によって、抗えず、教祖の指示通り動いてしまう。

そもそも、おかしいこと怖いことなんて気持ちすら吹き飛ばされてしまう。




物部さんすごいなあ。ただ、澤村さんの比嘉姉妹シリーズの琴子のように代償も桁違いだな…。。四肢を失うほど…。。



るみは壮絶な生い立ち……。

無戸籍児って今日本人で実際にいるんでしょうか?

霊に対してはどれだけむごたらしく殺めても誰も文句を言わない、って考えはたしかにねえ。

普段隠している暴力性を発散できるうえに、多くの人は見ることもできないですからね。

どんなにむごたらしい除霊?をしても気付きもしない。



 

そして陽太よ…

妹思いのお兄ちゃんだと思いきや、妹への歪んだ愛を持った男だとは。。笑美が序盤頭の中で聞こえていた言葉、兄が言っていた言葉なんだろうなあ。。おまえには俺しかいないという洗脳。。山池先輩も…いい人なのに不憫すぎます。。

陽太野放し(逮捕されたけど)のままだけど、陽太にこそ天誅が必要だよー!!




ヤンのやってることですが、彼は生まれてから それが正しいと教えられてきたから、その世界しか知らないわけで。ある意味彼も被害者なのですが、友達を捕らえたり学校の先生殺していたりで子供の頃から恐ろしい驚き

正しいことをしていると思っているからこそ厄介なんですよね…そして能力持ちという。

誰にも不自然に思われることなく、なんでもできてしまう。


成人式のスピーチのときにヤンの能力が発動したのかな?

皆深い信仰心を持って行動するようになった。

けれど、それは本当にそうだったのでしょうか?ヤンの命令(ヤンは気づいていないが)によって動いていただけでは…。

ただの悪霊だった眼窩女を、キーマン(人ではないが)だと思い込み、恐ろしい存在に育て上げてしまうなんてねぇ…


八角教については、ヤンの父親がただ自分の性欲の発散のために都合のいい教えを作ったんじゃないとさえ思えます。こんなカルトを正しいと思い込まされていたヤン…。



笑美の能力って具体的にはどのような能力なんでしょう?

幽霊が見えるというのはわかりますが、それだけでなくヤンの洗脳にもかかっていない。

最後の章を読むと、風俗客が笑美の前ではまるで赤子のようになってしまうともあり…。

笑美の持つ自分の理想像通りに、周りも笑美を扱うということなのでしょうか?

自分を愛の化身と思ったら、周りもその扱いをしてくれる。

それってヤン以上にすごいですよね。

笑美こそ神になれるのでは?

笑美の中での自己肯定感が爆上がりしたら、それこそ命令せずとも本当に神扱いされるだろうと思います凝視

そりゃこんな笑美がヤンを育てたら大変なことになりますね。。



最初、保温ってなんじゃそれ、炊飯器みたい笑い泣きって思いましたが、読んで理解できました。

たしかに知らない言葉を聞いたときって自分の知ってる言葉を当てはめちゃいますよね〜キョロキョロ

各章のタイトルも一見意味不明ですが、調べてみると全てキリスト教に関連した言葉になっていましたうさぎ


鶏鳴三声、カケコーと聞こえると書いてあったので、YouTubeで調べて聞いてみるとやっぱり カケコーと聞こえました鳥

今となっては諏訪大社の御頭祭も恐ろしく感じてしまいますが、昔は全てに意味がある大切な儀式だったんでしょうね。

いまはググればすぐにわかることでも、昔は見えない何かの仕業だったり、何かのおかげと考えてきたんでしょうね〜。



次の漆黒の慕情も読もうと思います本