いやあ、『アルゴ』が作品賞獲りましたね。良い意味で、予想を裏切られました。


今までの傾向から行くと、作品賞を獲るのはケタ外れの超大作(『八十日間世界一周』『ベン・ハー』『タイタニック』)や、ヨーロッパ絡みの作品(『アーティスト』『英国王のスピーチ』)が多かったので、その流れからいくと『レ・ミゼラブル』だろうなと踏んでいました。
(ただ、確かにおフランスの話ではあるものの、スタッフやキャストにフランス人がほとんどいなかったので、「純粋ヨーロッパ」的要素があまり感じられず、「ちょっと違うかなあ…」と思ったのも確かです)
ただし、それはあくまでも客観的な分析によるもので、作品の完成度や面白さ、そして個人的な思いからすると『アルゴ』に獲って欲しいというのが正直なところでした。
でも、獲れないだろうなあ。だいたい、俺が「ムチャクチャ良い!」と思った映画って、お客が入らなかったり作品賞獲れないことが多いんだよなあ。(『テッドは、私の予想を遥かに超えたヒットでしたが…)
しかし、それが見事に…。
今回ばかりは、予想が外れて嬉しかったです(^_^;)


何となく『ゼロ・ダーク・サーティ』も獲りそうな気はしていましたが、わたし的には(『アルゴ』と比べて)ちょっと弱点が多かったかな、という気がしていましたし、何より政治的にヤバいかな、と。『アルゴ』が作品賞獲ったら、イランが早速反発していましたからね。『ゼロ』が獲ったら、またテ(以下略)。


主演男優賞は『リンカーン』のダニエル・デイ=ルイス。まだ本編を観てないから何とも言えませんが、いろんな意味で「やっぱりなあ」という感じです。
昔、レイモンド・マッセイという俳優がいました。一番有名なのは、『エデンの東』でのジェームズ・ディーンの父親役でしょうか。この人、カナダ出身ですが、映画とテレビで何と5回もリンカーンを演じました。見た目が似ているというだけでなく、舞台叩き上げの演技力が“リンカーンらしさ”を醸し出していたのでしょう。
(ちなみにマッセイは、、リンカーン暗殺を描いた『凶弾の舞台』(日本未公開)にも出ていますが、なんとここではリンカーン暗殺の犯人ジョン・ウィルクス・ブースの父親役)
ダニエルもしかり、演技力が伴ってこその“そっくりさん”ぶりが高く評価されたのでしょう(で、彼もアメリカ人ではなくイギリス人)。


しかし、『レ・ミゼ』は主要部門では助演女優賞にとどまりましたが、授賞式ではお祝いに(ここぞとばかりに)メインキャスト総登場で熱唱、最後はフランス国旗まで登場。やっぱりヨーロッパ偏重ぶりは健在だなと苦笑してしまいました。


他にもいろいろありましたが、個人的に一番盛り上がったのは、タキシードを着たテッドの登場だったりしましたが(笑)。


ミスターYKの秘密基地(アジト)

アメリカで、マニア向けのサントラを発売し続けているメーカーから、今月頭に発売されたCDです。
昨日、届いてました。


【左】『ビッグ・ケーヒル』
ジョン・ウェイン主演の西部劇。監督はアンドリュー・V・マクラグレン。後期ウェイン映画の定番監督。


作曲は『大脱走』『荒野の七人』『ゴーストバスターズ』のエルマー・バーンスタイン。こちらもウェイン西部劇の定番作曲家。
ウェインの遺作『ラスト・シューティスト』も担当。こちらも発売熱望。


同時期のウェイン西部劇で、これと同じワーナー作品だと、『チザム』(ドミニク・フロンティエル作曲)のサントラも出して欲しいもんです。
(次のもそうですが、最近のINTRADAは、ワーナー、パラマウント、ユニバーサルの作品を中心に発売されています)


【右】『突撃隊』+『アルカトラズからの脱出』
パラマウントでのドン・シーゲル監督作品のカップリング。
『突撃隊』は、スティーヴ・マックイーン主演の、渋めの戦争アクション。
『アルカトラズからの脱出』は、『ダーティハリー』などでシーゲルと名コンビぶりを発揮したクリント・イーストウッド主演の脱獄もの。


作曲は、『突撃隊』が『エデンの東』のレナード・ローゼンマン。テレビの『コンバット』もこの人ですが、『突撃隊』はまさに『コンバット』のプロトタイプのような雰囲気の作品。
『アルカトラズ』がサム・ペキンパー監督との名コンビで有名なジェリー・フィールディング。『ガントレット』などイーストウッド作品も数多く手がけています。


INTRADAは、このところイーストウッド作品を連続リリースしていますが、『マンハッタン無宿』などユニバーサル作品ばかり(今回が初のパラマウント作品)。
その流れでくると、やはりシーゲルとイーストウッドのコンビ作でも最高の異色作『白い肌の異常な夜』(ユニバーサル作品)(ラロ・シフリン作曲)も発売されそうな感じですね。


実はこの作品、1月のうちに観せて頂いていたのですが、前の記事にも書いたように多忙だったことと、この映画のレビューを熊本日日新聞に書かせて頂くことになっていたので、こちらに書くのを何となく差し控えておりました。
新聞の掲載も終わり、映画自体も公開されたので、ようやくこちらにアップする気になりました。


熊日新聞はよその皆様には読んで頂くのが難しいので、そのレビューをベースに、字数の都合で割愛した要素を加えたものをアップ致します。


以前、『GIジョー』のジャパン・プレミアが行なわれた時、地元のテレビ局のお仕事で、イ・ビョンホンにレッド・カーペットでインタビューしました(自称・日韓イケメン対決)。
夏の夜、しかも直前まで夕立が降っていたせいか、ビョンさんはお付きの人(?)にずっと顔の汗を拭いてもらっていました。
テレビだからあちらなりの気遣いだったのかも知れませんが、その光景は大スターというより、どこかの国の王族のような恭しさを感じました。


まさか、その時のイメージががこんな形で具現化するとは…。


ビョンさん初の時代劇、しかも一人二役に挑戦した話題作です。
彼が扮するのは、朝鮮王朝の十五代目の王・光海君と、その影武者になった道化師。


日夜、反対勢力による暗殺の恐怖におびえる光海は、自分の身代わりを立てるように、信頼できる忠臣に命じます。
そこで選ばれたのが、光海と瓜二つで、その物真似を得意ネタとする道化師のハソン。
立ち居振る舞いから王としての考え方まで教育された彼は、毒を盛られ昏睡状態に陥った光海の影武者を続けるうちに、困窮する国民を救うため、自分の意志で国政を動かそうとしますが…。


光海の生涯には謎が多いと言われていますが、暴君と呼ばれる一方で政治的手腕が高く評価されるなど、その歴史的評価も真っ二つ。
そんな“二面性”から、本物と影武者の「二人の王」という着想を得たのでしょう。
まさに「人が変わった」王=ハソンによって、王妃や臣下たちの心も変化していく様子が丹念に描かれます。
そして、そんなエピソードの積み重ねが、クライマックスで劇的な盛り上がりと感動を生みます。実に巧みな構成。


もちろん、ビョンさんの熱演も素晴らしい。疑心暗鬼の果てに暴君と化した光海と、笑いの中に優しさと熱い心を持つハソンを見事に演じ分けています。
特に、ハソンが操り人形から“本物”の王になっていく様子は感動的。


監督は、韓国の若手注目株チュ・チャンミン。彼も時代劇初挑戦ですが、ドタバタ風味のコミカルな場面も織り交ぜた前半から、ハソンの運命が劇的に変化していく緊張感に満ちた後半へと、緩急自在な演出を披露。
入念な時代考証による緻密な宮廷描写も、画面に説得力を与えています。


韓流時代劇の質をさらに高めた注目作と言えそうです。



ミスターYKの秘密基地(アジト)
マスコミ向けプレスシート


気が付いたら、今年はまだまったくブログの更新をしていませんでした(汗)。


雑事に追われ、じっくりブログを書くヒマがありませんでした。

今も、そんなにないですが…。


ネタが少々たまってきたので、今後は最悪でも週1のペースで更新していきたいと思っております。


今後ともよろしくお願い致します。

先週の木曜日に福岡で拝見させて頂いていたのですが、何やかんやと忙しくて、感想を書くのが今頃になってしまいました(苦笑)。


クマのキャラクターって、昔から人気ありますよね。最も有名なのはプーさんでしょうか。わが熊本からも、くまモンという超人気ゆるキャラが登場しました。
これがぬいぐるみになると、さらに(特に女性の)人気の的。テディ・ベアがその代表格でしょうか。

そんな、地域や世代を超えたクマ(のぬいぐるみ)人気を皮肉ったような、黒い『トイ・ストーリー』とでも言ったらいいでしょうか。


1985年。超内気で友達がいない少年ジョンは、両親からクリスマス・プレゼントにテディ・ベアをもらいました。大喜びのジョンはクマにテッドと名前を付け、ずっとベッタリ。そして、「テッドが本当の親友になれますように」と夜空の星にお祈りします。
するとビックリ、テッドには魂が宿り、人間のように喋り、行動するようになります。
“奇跡のテディ・ベア”はたちまち有名になり、テレビなどでも大活躍するセレブに。しかし、売れっ子子役と同様、テッドは“悪さ”が過ぎて転落の道を歩むことに。それでも、ジョンとの友情は変わりません。


そして27年後。ジョン(マーク・ウォールバーグ)もテッドも、すっかり不良中年に。特にテッドの悪行三昧ぶりは強烈。言葉は下品、大酒飲んで女(もちろん人間の)をひっかけまくる。キレたら(体だけは)大人の人間であるジョンすらボコボコにする乱暴者。おまけにドラッグは手放せない…。あまりの超ワルオヤジぶりに、映画自体もR指定を受けてしまいました。


特にビックリなのが、同僚の女性との●●●シーン。モロに出てくるではないけど、明らかに“実行中”なのがハッキリ分かります。ヌイグルミの●●●なんて、『チャイルド・プレイ』の何作目か以来の衝撃シーン(あ、あっちは人形か)。


そんなものすごいシーンもかなりありますが、物語の基本は結構クラシカル。長年付き合ってるカノジョとの生活にケジメをつけるため、大人になる(=テッドと別れる)ために努力するジョン…とくれば、まさに『トイ・ストーリー3』的な展開。
さらには、面倒のタネであるテッドに振り回されながらも、長年の友情から彼をなかなか捨てることができない、というのも、バディ(相棒)映画によく見られるパターン。


要するに、結構古典的な物語をファンタジーと毒で料理した、実に巧い語り口のコメディなんですな。実はハートウォーミングなのに毒が効きまくっている、不思議な味わいのファンタジー・コメディというわけです。


ノラ・ジョーンズが歌う主題歌は、まさしく、輸入盤サントラの解説書曰く「ジャームズ・ヴァン・ヒューゼン(『我が道を往く』など40~60年代のハリウッド映画の歌曲を数多く手がけた作曲家)風」の、ちょっとオールドファッションな曲ですが、まさしくこの映画の本質を表しているようです。
ちなみに、ノラも本人役で出演していますが、これがまたとんでもない設定…。


ちょっとマニアックな映画ネタが数多く登場するのも、映画ファンには嬉しいところです。特に、ジョンとテッドが繰り返しビデオで観ている『フラッシュ・ゴードン』ネタの引っ張り具合にはビックリ。そこまでやるか!?


あと、個人的に嬉しかったのが、全編パロディ満載のコメディ『フライング・ハイ』の一場面が、ほぼ完コピされていたこと。実は『フライング・ハイ』って、私の少年時代で一番楽しかった時期の思い出にダイレクトにリンクする作品(話せば長くなるので詳細は割愛)なので、別に感動的なシーンではない(そもそもそういう映画ではない)のに、ちょっとウルウルしてしおまいました。トシかねえ。


監督のセス・マクファーレンは、他にも原案や脚本などに加えて、何とテッドの声まで担当。この人、声優の他にも歌手やアニメーターなどもやっているらしく、テッドの喋りもお見事。来年のアカデミー賞の司会に内定しているということで、今後ますます目が離せない才人です。


来年1月18日公開。


ミスターYKの秘密基地(アジト)