※なるべくボカして書いているつもりですが、結構肝心な部分に触れています。
おまけに、詳細…(苦笑)。
映画の公開前なので、自己責任においてお読みください。
昨夜、業務試写で観せて頂きました。
70年代に一世を風靡した恋愛もののコミックを、何とあの三池崇史が再映画化!と聞けば、(ヘンな意味で)期待してしまいます。
そもそも、妻夫木聡が誠=今さら高校生役というだけで、絶対に狂った映画に仕上がっているに違いない!と思っておりましたが、フタを開けてみたら、もっと狂っていました(あ、これ、誉めてます)。
原作の発表直後に、松竹で3部作として映画化されたので、映画版としては約40年ぶりのリメイクです。
ちなみにこの3部作、愛役はすべて早乙女愛(ややこしいですが、オーディションで選ばれ、役名をそのまま芸名にしてデビューした方。数年前に病没)でしたが、誠役はなぜかすべて違う人が演じてます。
1作目の誠役は西城秀樹でした。
金持ちの令嬢と不良少年の純愛ものという、何だか懐かしい香りがするストーリー。似たような物語で、吉永小百合(様)や山口百恵が主演した『泥だらけの純情』なんて作品もありました。
こちらは、不良高校生(男女ともに)との闘争が物語に深く関わってきます。そういう点では、『クローズZERO』などと映画化した三池監督にはうってつけの作品と言えないこともないかも知れません。
物語の時代設定は、原作が発表されたのとほぼ同じ1972年。この辺はやはり、原作の世界を活かそうという考えなんでしょう。
しかし、想像を絶する大胆なアレンジも施されています。その中でも最大級のとんでもないものは、
何とミュージカルコメディにしてしまっていること。
まあ、これだけの(一定の世代にとっては)不朽の古典的名作をあえて平成の世でリメイクするからには“大手術”も必要かも知れません。その手段としては、これも「あり」かなと。まあ、普通は思いつかないでしょうけどね、こんな方法(苦笑)。
ミュージカルと言っても、ほとんどのナンバーは当時(=70年初頭前後)にヒットした歌の数々です。
最初に歌われる誠の歌が「♪やめろっと言われても~」こと『激しい恋』(西城秀樹)なのは、やはり前の映画化へのオマージュでしょうか?単なる偶然の一致だろうなあ…。
で、もうひとつの大きなアレンジは、愛を「カン違いの暴走お嬢様」にしている点。
一応ヒロインなのに(笑)、喋れば喋るほど、動けば動くほど、話がどんどんややこしくなるという、ハワード・ホークスの傑作コメディ『赤ちゃん教育』のキャサリン・ヘップバーンを思わせるキャラです(例えが古い!)。
完全なボケキャラとなっている彼女の言動は、ことごとくギャグになっています。
一見、原作を貶しているかのようにも思えますが、こうすることでコテコテの「昭和のお嬢様」だった原作の愛のキャラが鼻につかなくなっているのです。
ある意味、原作のイメージを守っているのかも知れません。
おかげで、彼女が『あの素晴らしい愛をもう一度』を熱唱するくだりは、愛=武井咲を思う存分可愛く撮ってあります。それなのに、それが鼻につかない。
実際、ここでの咲たんはマジでハンパなくカワイイ!武井咲史上最高にカワイイ武井咲が観れる!
しかも、その後のメイド喫茶(?)のシーンでは、そこまではっきり映し出されているわけでもないのに、彼女のフトモモがミョーに印象に残ります。
フェティッシュなエロ描写を、それと悟られることなく映し出す、サブリミナル・エロシーン(笑)。
『妖怪大戦争』の川姫を思わせる、三池監督らしい手法と言えるかも。
おっと、愛を一途に想い続ける秀才の岩清水君も、かなりのボケキャラになっています。
演じる斎藤工も、実にいい味出してます。
他にも、個性的なキャラたちが事あるごとにボケをカマしてくれるので、誠君はその度にツッコミを担当。
ケンカとツッコミに大活躍の多忙なキャラになっています。
個性的なキャラと言えば、誠の強敵となる番長の権太に扮しているのが、何と伊原剛志!学ラン着て「17歳」と言い張ってます。
ね?やっぱり狂ってるでしょ、この配役?
この配役が、この映画の世界では「あり」な理由(権太がたびたび主張する)にも大笑いです。
スケバンの「ガムコ」に安藤サクラ。これまた強烈なインパクト。
個人的には、やはり70年代初期に(倒産寸前だった)旧大映で連作された高校生ものでの八並映子を連想させる風貌やキャラに思えました。
狙ってたとすればホントに凄いけど、単なる偶然の一致だろうなあ…。
愛の両親に市村正親と一青窈。ここまできたら、もう素晴らしいとしか言いようがありません(苦笑)。
少年時代の誠に扮しているのは、子ども店長(古)こと加藤清史郎くん。実写版『忍たま乱太郎』(これも怪作!)での縁による、三池作品への再登板です。
今まではどちらかというと優等生的な役が多かったですが、今回は薄汚れて乱暴な役。イメチェンです。
そして誠の母には余貴美子。何にでも出るなあ。おまけに、官房長官からそこら辺のオカンまで、何でもこなすよなあ。この役は文句なしのハマリ役。
こうして観ると、「『愛と誠』って、こんな話!?」とツッコミたくなりますが、実は、「どういう話か」という意味ではツボをまったく外していないんです。そこはさすがです。
映画の構成上、原作の後半に登場するキャラやストーリーが割愛されてはいるものの、ストーリーの大枠はほぼ原作通りなんですから。
ただ、表現方法が若干狂っているだけです(笑)。
正直、どういう層(特に年齢)を狙っているのかよく分からなかった(試写に来ていた配給会社の宣伝の方も頭を抱えてました)のですが、
「とにかく面白い映画を観たい!」という人におすすめです。
(少なくともわたし的には)不思議な魅力に満ちた作品です。