読み取りができなくなって、CD再生機を交換するのは何度目だろう。僕の初めてのCDプレーヤーは、1987年導入の Technics SL-P520だったが、以後、読み取りができなくなるたびにCDプレーヤーを買い替えてきた。単なる音の好みや実用性で買い替えた機種もあるので正確ではないかもしれないが、指折り数えて、ざっと10機種くらいに及ぶだろうか。

 

先日も、長く使ってきたTechnics SL-PG5が読み取り不良を起こして、さよならをし、廉価なDVDプレーヤーを導入することにした。その経緯は、以下の記事に書いた。

 

 

 

 

音楽やオーディオ装置にはこだわりがある方と自認しているが、それなのに何故にCDプレーヤー「専用機」にしなかったのか。現行でも、国内メーカーのデノンやヤマハ、そしてマランツなどが「専用機」を発売しているはずだが、何故にその路線に進まなかったのか。

 

今回、一番感じたのは、「信頼できないマシーンに高い金は出せない」ということであった。そして、「今のDVDプレーヤーはそこそこ音が良い」という事実に後押しされたのであった。

 

つまり、いま新品で専用機を購入しても、いずれは読み取りができなくなり、新品を買う羽目になる。それならば、音質と使い勝手の面は多少目をつぶり、安価な機械を買い求めて、壊れたらまた買い替えよう…と考えたのだ。

 

一方、僕のアナログ・プレーヤーはどうだろうか。Technics SL-Q303は、1981年の発売だが、いまだに故障知らずである。回転精度もサスペンションも問題ない。春先に、渋くなったレバーのメンテを行ったが、そんなのは「故障」のうちに入るまい。

 

 

そもそも、CDプレーヤーはほぼブラックボックス化されているが、アナログ・プレーヤーなら、メカ的な箇所は自分でなんとかできる。それだけでも安心感が違うというものだ。

 

僕の職場でアナログ・レコードを現役で聴いている同僚・上司は、僕を含めて3人いる。全員で約60人の部署だから、5%の人がアナログ盤の愛聴者ということになる。(この割合は、世間的に見てどうなんだろう。多いのか少ないのか?)

 

そのうちの一人の上司が、次のようなことをしょっちゅう言っている。「アナログは信頼できても、CDって信頼できないんだよね」と。

 

今まで、それは「音質の面で」という修飾語がついた評言だと思い込んでいた。しかし、このごろの僕なら、「物理的に信頼できないのだな」と(ちゃんと)解釈できる。上司様、あなたのおっしゃる通りです。

 

ということで、「信頼できるもの」にお金を掛けることにした。久しぶりに「針」を交換してあげたのだ。

Technics純正はもうないので、サード・パーティー製である。間違ってもCDプレーヤーには真似できない芸当である。何十年も前に製造が終わったマシーンのピックアップ・レンズを自分で交換するなど、まったく想像だにできない。

 

その点、アナログ機械は人に優しくできている。

 

 

さて、結果は、音が聞き違うほどに良くなった。

 

昔、オーディオの先輩に言われたことがある。「針先のダイヤモンドはさほど摩耗しないが、カンチレバーのダンパー(ラバー部分)が劣化してフニャフニャになっていたら、替え時だよ」と。盤面に針を載せたときにちょっと沈み込むような感じがあったのだが、新品ではそのようなことがなく、溝に載せても「凛として」剛性が高そうである。

 

音は鮮烈で高音域の楽器が生々しく鳴る。そして、ホールの残響の時間が長くなった。それだけ微弱な音も繊細に拾っているということだろう。なんでもっと早くに交換しなかったのか。

 

なぜなんだろう、ニヤニヤが止まらない。