
今日の一曲!キャプテンストライダム「ブギーナイト・フィーバー」
レビュー対象:「ブギーナイト・フィーバー」(2009)

今回取り上げる楽曲は、等身大の大衆性を踊れるロックンロールに乗せてポップに奏でることに秀でていたキャプテンストライダムの「ブギーナイト・フィーバー」です。活動休止時に惜しむ思いを表明したこの記事と、古のインターネット文化であるところのバトンに於いて「東京ジャンボ☆ディスコ」(2008)にふれて以来、実に15年越しで初めての単独記事を立てます。
前々回の記事および前回の記事に引き続き、直近の選曲は「2010年に解散・休止に至ったバンド」が裏テーマです。更に関連付けると、前回に取り立てたビークルのカトウタロウさんとキャプストのフロントマンである永友聖也さんは後に永友タロウを結成し活動しています。
収録先:『ブギーナイト・フィーバー』(2009)
本曲の収録先は活動休止前最後のシングル『ブギーナイト・フィーバー』です。ゆえにオリジナルアルバムで聴くことは適いませんが、ベスト盤『ベストロリー』(2010)の通常盤では表題曲を、初回盤ではc/w曲含めて聴くことが出来ます。電気グルーヴ「Shangri-La」(1997)のカバーもらしいチョイスでグッドです。
自作のプレイリストに照らすとキャプテンストライダムは5*3の15曲編成で、本曲の他にc/wの「北京原人」も上位5曲までに登録しています。同曲はベースの梅田さんが作詞作曲を手掛けた点に特筆性があるトライバルでファンキーなナンバーです。
以外の3曲は「裏道のHIGHWAY STAR」「マウンテン・ア・ゴーゴー」「リズム&スパイダー~男と女の関係~」で、何だかんだダンサブルなラインナップだと言えます。「マウンテン~」はTVアニメ『NARUTO』の7thED曲向けに歌詞が改変された「〃・ツー」(2004)のほうが有名でしょう。
歌詞(作詞:キャプテンストライダム)
"夜は Oh, What A Night!"で結ばれている通り、終わらないワンナイトの関係性にフォーカスした内容です。"顔さえ忘れたのに 覚えてる感触"は端的な一節で、アレンジの項で改めて語りますが「ブギー」が主題なだけはあってディスコでの逢瀬が似合います。
"恋人同士みたいに 抱き合って踊ろうよベイベー"とゼロ年代末期らしからぬ歌詞でもテーマがテーマなだけに許容され、これに続く"素顔のままでいいよ じゃれ合って口づけしようよ"が、2番では"今すぐ口づけしたいね"と自分本位になり、落ちサビでは"素顔のままがいいよ"と妥協が本心に変わるところに、あわよくばの思惑が窺えて好みです。
しかしこの目論見は"『誰より速い車で 連れ去って欲しいの』/泣き出しそうな君の 真っ赤なブギーシューズ"と、"君"の傷心に付け込んでいるからこそとの冷静な目線もあって、"誰かの吐息 思い出してる瞳/どうにもなんないって ホントは解ってるFu!"の自覚ある道化ムーブに悲哀が滲みます。"そんなつもりはないのに 傷つけちゃったね"の不器用さも、誠意と下心が綯い交ぜの産物ならばあるあるだと腹落ちです。
メロディ(作曲:永友聖也)
平歌部は編曲と密接で、メロディアスなストリングスセクションが前後に来るAメロは対照的にフラットだけれどその緩急で聴かせる旋律としては満点ですし、イントロのオケを引き連れて登場するBメロはボルテージが満ちていくような進行の果てに開き直りのライン("どうにも"~)が据えられてサビへの期待を一段と煽っています。
サビメロは傾れるような音運びに強引なもしくは有耶無耶な勢いが感じられて歌詞のメッセージ性を強めており、捲し立てた最後に"Oh, What A Night!"をモーラ読みした「お・わ・ら・な・い」の5音をゆっくりと紡ぐところに、作曲上の意図として「終わらないでくれ!」を聴き出しました。
アレンジ(編曲:CHOKKAKU・キャプテンストライダム)
「ブギー」を冠しているだけはあり、全体的にはその言い換えのポストディスコないしエレクトロファンクなサウンドプロダクションと特徴付けられます。歌詞通りバンドの演奏は終始"グルーヴィ"で、それがディスコオリエンテッドなストリングスやグリッターなシーケンスフレーズで彩られて煌びやかです。
プロデューサーのCHOKKAKUさんはベテランのアレンジャーなのでワークスの一覧を眺めていたら(Wikipediaリンク)、少し前に夢みるアドレセンスのプチ特集をした際に曲名を出していた「おしえてシュレディンガー」(2016)の編曲にもお名前を発見し、言われたらシタールのアプローチが本曲のそれと似ているなと納得の気付きがありました。