今日の一曲!フジファブリック「銀河(Album ver.)」 | A Flood of Music

今日の一曲!フジファブリック「銀河(Album ver.)」

 

乱数メーカーの結果:1034

 

 上記に基づく「今日の一曲!」は、フジファブリックのセクション(1026~1040)から「銀河(Album ver.)」です。詳しい選曲プロセスが知りたい方は、こちらの説明記事をご覧ください。

 

 

 つい一週間ほど前に「赤黄色の金木犀」(2004)をレビューしたばかりですが、選曲は乱数任せなため短期間に同一アーティストのナンバーが選ばれることもあります。

 

 

収録先:『FAB FOX』(2005)

 

 

 シングルの『銀河』(2005)は『桜の季節』(2004)から連作でリリースされた四季盤の第四弾、つまり「冬」がテーマの作品です。偶然とはいえ第三弾の「赤黄色~」に続けて紹介出来るのは、「秋」から通時的で分かり良いかもしれません。

 

 ただし今回取り立てる「銀河」は、後奏部にコーラスが追加されている「(Album ver.)」です。サビ裏のギターをなぞる怪しげな'Oh'の登場で、物語に一層の奥行が生まれています。楽想的にもこれがないとクロージング感が薄れるため、シングルのほうは正直締まらない印象です。こちらのアルバム収録先は『SINGLES 2004-2009』(2010)で、リリース当時には商品レビューを行いました。

 

 話を『FAB FOX』に戻すと、「雨のマーチ」「マリアとアマゾネス」についてもそれぞれレビュー記事があります。本作も相当のフェイバリットで、例によって自作のプレイリストに準拠すると上位15曲までに「銀河~」「雨の~」「マリア~」のほかに「虹」が、上位30曲までに「Birthday」「唇のソレ」「地平線を越えて」「モノノケハカランダ」が、上位45曲までに「ベースボールは終わらない」が入る布陣です。

 

 

歌詞(作詞:志村正彦)

 

 "真夜中 二時過ぎ 二人は街を逃げ出した"の書き出し通り、本曲に描かれているのは"逃避行"の模様です。当ブログ内を「逃避行」で検索すると他アーティストの記事がいくつかヒットしますが(下掲のもその一つ)、飛行機でも車でも船でも電車でも自転車でも走るでもなく"U.F.O.の軌道に乗って"しまうのは志村さんぐらいのものでしょう。笑

 

 スピッツの「スパイダー」(1994)をレビューした際にフェードアウトクロージングと逃避行の親和性に関するコラムを書いており、これは本来作編曲の話である上に長いので詳細はリンク先に委ねるとしまして、その中の一文「逃避行という言葉は駆け落ち的な使われ方~(中略)~奪取の鮮やかさに疾走感を覚えないわけがありません」を作詞面に応用すれば、"U.F.O."という飛び道具が出てきた時点で「やられた!」と唸るほかありません。

 

 向かう先が"夜空の果て"なのも道理で、"U.F.O."の文脈がないと少しクサくなってしまう塩梅のロマンティックさが素敵です。一方で"きらきらの空が ぐらぐら動き出している!/確かな鼓動が膨らむ 動き出している!"という驚天動地の気付きは実にダイナミックで、情景描写と心象風景が鬩ぎ合う「銀河」の衝突を見た気になります。

 

 

メロディ(作曲:志村正彦)

 

 A/Bメロは緩急が鮮やかで、奇妙な予感を覚えるうねったラインとオノマトペ通り駆け足で促音の多い跳ねたラインが交互に出現するつくりです。その大きな振れ幅のまま勢い付くサビメロは、志村さんお得意のコミカルとシリアスが同居する音運びで、"U.F.O.の軌道に沿って 流れるメロディー"の超現実感で以て"あなたと逃避行"の緊迫感をワクワクするものに仕立てています。

 

 間奏を挟んで逃避の小休止にあたるCメロは歌詞の異常事態ぶりも相俟って、この先に更なる困難が控えていると予見しつつも二人でなら突破出来るという万能感が窺えるような、不安げな立ち上がりから果断の立ち振る舞いへと変化していく尻上がりの旋律です。

 

 

アレンジ(編曲:フジファブリック)

 

 別のバンドの記事に於いてUFOをモチーフとした楽曲の特徴について述べたことがあり、「銀河」も一例として曲名を挙げているためここにもセルフ引用しまして、「そのサウンドにオカルト由来の怪しさとコミカルさと謎の疾走感が滲むもの」との分析は本曲にも当て嵌まります。

 

 オカルティックなテイストは主に浮遊感のある音色のキーボードよって醸されていて、とりわけ印象的なグリッサンドを起点に怪しさ満点の進行を見せる間奏部(各Aメロ前)のサウンドスケープはまさに未知との遭遇です。その他のセクションでもキーボは言わばSE的な役割を担っており、音景の細部に説得力を与えています。

 

 コミカルの形容はメロディの項でサビに対しても用いましたが、これをアレンジ面にも波及させるならバックのメロディアスなギターもユニークです。収録先の項でアウトロのコーラスについて、「サビ裏のギターをなぞる怪しげな'Oh'の登場で、物語に一層の奥行が生まれています」と書いた通り、このラインを楽器だけに歌わせるのは勿体無いとの判断を支持するほどには面白いと言えます。

 

 謎かどうかは主観的なれど疾走感は聴けば瞭然で、ギターなら流星の如きイントロのそれやリズミカルでキャッチーなリフパートが、ベースなら特にBメロ裏でのダンサブルなプレイが、ドラムならハイハットの16分音符刻みがそれぞれ目立った根拠です。2番後間奏のギターソロとCメロ裏およびアウトロのキーボは毛色が異なり、感傷的な展開に"逃避行"の先行き不透明感が滲んでいます。

 

 

 
 

備考:特になし

 

 今回は取り立てて補足したいことはありません。