Daft Punk Lose Yourself to Dance 歌詞inthememories | A Flood of Music

今日の一曲!Daft Punk「Lose Yourself to Dance」

 

乱数メーカーの結果:266

 

 上記に基づく「今日の一曲!」は、Daft Punkのセクション(260~274)から「Lose Yourself to Dance」です。詳しい選曲プロセスが知りたい方は、こちらの説明記事をご覧ください。

 

 

 

収録先:『Random Access Memories』(2013)

 

 

 第56回グラミー賞でアルバム・オブ・ザ・イヤーに選ばれているほか、ジャンル別の部門でも複数の賞を獲得している確かな名盤です。ブログテーマ「Daft Punk」で言及するのは本記事が初ですが、別アーティストの記事でEDMの功罪を語った際には、『確かに存在する「EDMに懐疑的な流れ」に於ける最たるもの』として例示していました。以下に当該の短評をセルフ引用します。

 

 同盤は最早「エレクトロニック」に対するアンチテーゼかもしれませんが、「お手軽に躍らせるだけがダンスミュージックの神髄ではない」ということを、EDMに傾くことなく証明した名盤であると絶賛します。寧ろもっと古いサウンドたる、ディスコ回帰的なアウトプットが印象深いものでした。

 

 また別アーティストの記事では、本作の収録曲でレコード・オブ・ザ・イヤーに選ばれた「Get Lucky」のカバーをレビューしています。同曲はアルバムの先行シングル、「Lose Yourself to Dance」はリカットの第一弾としてリリースされており、マーケティング的にもイチオシのワン・ツーだったと推測可能です。もう9年前だということに驚きつつ、これがダフトの最新且つ最後の作品であることに寂しさを覚えます。解散へのリアクションは雑記事に書いた通りで、当ブログへのアクセス増を介してその存在の大きさを改めて思い知らされた次第です。

 

 過去記事のまとめだけでは何なので本作からのフェイバリットを列挙しておきますと、「Giorgio by Moroder」「Give Life Back to Music」「Instant Crush」「Lose Yourself to Dance」の4曲が自作のプレイリストの上位15曲まで(Daft Punkは15*3の全45曲編成)に入っています。何だかんだでシングル曲が好みなことと、Underworld「King of Snake」(1999)にサンプリングされたDonna Summer「I Feel Love」(1977)のベースライン、と間接的にしか馴染みがなかったGiorgio Moroderの寂声の虜になったことがわかる選曲ですね。

 

 

歌詞

 

 描写がナラティブなのはヴァースのみで、残りは全てダンスフロアの熱狂に係るエモーショナルなリリックで占められています。フロアの住人ではない"you"の真っ当な人生を皮肉り、シャツを脱ぎ捨てた"I"の本来の姿が現れる場面です。

 

 繰り返される"Lose yourself to dance"と"Come on"で没入度は漸次増大、陶酔の最中にふと気づけば誰しもが踊っていて、曖昧になっていく自他の境界に融けつつ永遠にダンスは続いていくユーフォリックな内容です。この点は次の項でもう少し具体的に語ります。

 

 

メロディ

 

 Pharrell Williamsのつややかな歌声が印象的なヴァースは、歌詞内容に合わせてか立ち上がりはややレイジーながら、クラップを伴った煽りの"Sweat! Sweat! Sweat!"で俄にゴスペルライクな趣が出るドラスティックな音運びです。直ぐ様表題のフレーズに雪崩れ込み、ひたすらのリピートでリズムとメロディを身体に刻み込んでいきます。

 

 再度ヴァースに戻ってから二度目の表題部分では、ボコーダーを通した"Come on"がLRから交互にアプローチしてきて一気にダフトらしさが顕に。性質の異なる二種の旋律が折り重なって空間に満ちた頃、"Everybody's dancing on the floor/Getting ready for more"と新たなリフレインが登場します。

 

 繰り返すにつれボコーダーによる支配が強まり、言葉として聴き取れないレベルにまで;換言して楽器的な振る舞いへと変化を遂げたピークの果てに、ふと覚醒を得たのか"Everybody on the floor"がチルなラインで流れゆく、この激動から静謐へと移行するシークエンスが堪らなく好きです。

 

 現実には依然として音楽が大音量で鳴り続けているのに、集中力が閾値を超えて周囲から音が消えたかのようになる錯覚は確かにあります。おそらく感覚のプライオリティが、その瞬間だけ「視覚>聴覚」に切り替わるのでしょうね。こういったある種のトリップ体験を端的に切り取ったのが、"Everybody on the floor"なのだと解釈しています。

 

 

アレンジ

 

 上記がアレンジ面にも言及した内容になっているためここは短めに。制作およびプレイヤーとしてNile Rodgersが参加しているだけはあって、ファンキーなギターによるグルーヴは実に極上です。王道のクラップにもこだわりが窺え、永遠に聴き続けていられる温かみを有しています。ダフトによる「生」の衝撃ですね。

 

 

 
 

備考:クレジット

 

 通例であれば各見出しには括弧書きで作詞者と作編曲者の名前を表示するのですが、歌詞カードには作家陣がひとまとめで記載されているため詳細な分担はわかりませんでした。従ってそのまま紹介しますと、楽曲のクレジットは【T. Bangalter, G.M. de Homem-Christo, N, Rodgers, Ph. Williams】で、演奏のクレジットは【Vocals: Pharrell Williams & Daft Punk|Guitar: Nile Rodgers|Bass: Nathan East|Drums: John "JR" Robinson】です。