今日の一曲!詩月カオリ「Do you know the magic?」 | A Flood of Music

今日の一曲!詩月カオリ「Do you know the magic?」

 【追記:2021.1.5】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:雨】の第十弾です。【追記ここまで】

 「今日の一曲!」は詩月カオリの「Do you know the magic?」(2004)です。R18ゲーム『魔法はあめいろ?』のOP曲で、同作の初回特典CD『魔法はあめいろ? Soundtrack fermata』およびI've GIRL'S COMPILATION 6『COLLECTIVE』(2005)に収録されています。

 第二弾第六弾と同じく商品リンクが楽天のもの且つ【中古】表記ですが、こうせざるを得なかった理由も同じなので詳しくはリンク先を参照してください。今回の雨シリーズでは割と古めの楽曲を扱うことが多いため確率の問題ですが、新品に希少価値が付いているものも多いですね。



 当ブログに於いては初の詩月カオリ単独記事となりますが、I'veについて初めてふれた網羅的な記事の中では既にお名前を出していて、そこでは「Shining star bless☆」(2007)の魅力をごくごく簡単に語りました。

 参考までに彼女の楽曲の中からとりわけ気に入っているもの(今回紹介する「Dyktm?」と先述の「Ssb☆」以外)を昇順・初出年省略で列挙しますと、「Chasse」「Change of heart」「アナタだけのAngel☆」「消えない想い -Album Mix-」「ジェットスマッシュ!」「ナイショ☆Naiしょ」「レモネード」あたりは今でも魅力的に思います。

 詩月さんの歌声はI'veの(元)歌姫の中ではいちばん清純と言いましょうか、媚び過ぎていないという意味での可愛さを宿しているとの認識です。ゆえにメロディラインが綺麗な正統派のナンバーがよく似合うとのアーティスト評を抱いていて、上掲の選曲も基本的にはその好みに従っていると言えますが、やや電波要素のある「ナイショ~」や「ジェット~」などの楽曲も、見え隠れする恥じらいにグッっときてしまうのは否定出来ないため、アピールポイントが一辺倒になっていないところは流石I'veだなと思います。電波曲にプロ根性全開で対処するのはKOTOKOさんの領分ですしね。笑


 話を「Do you know the magic?」に戻しますが、楽曲の印象としては正当派でも電波系でもなく元気なポップソングなので、個人的には詩月さんならではの良さというよりも、楽曲自体の良さで好きになったタイプです。

 作詞はKOTOKOさんで、作編曲は羽越実有さん。羽越さんに関しては、後の名義である井内舞子さんと表記した方が通りがいいですかね。先掲の網羅的記事の中ではクリエイター陣に対する言及を高瀬さんと中沢さんに集中させたため、井内さんのお名前は出していないのですが、手掛けた楽曲一覧を見ると好みのものが多く、僕の中では高瀬・中沢両名に次ぐ御仁だと言えるかもしれません。こちらも参考までにフェイバリットナンバーを列挙しようかと思いましたが、数が多過ぎるため割愛します。


 先に雨要素から処理していきましょう。といっても冒頭に書いた通り『魔法はあめいろ』と題されたゲームの主題歌ですから、歌詞の内容も"雨"(と"魔法"/"magic")が中心になっています。ゲームは未プレイゆえ公式サイトであらすじを確認したところ、作中時期が6月で魔法が物語を転がす鍵になっている作品のようです。舞台は現実準拠っぽい(主人公は教育実習生;学校行事の少ない6月に受け入れるところが多いらしい)ので、ローファンタジーですかね。

 「今日の一曲!」Ver.1.0で使っていた「今日は何の日?」によると、奇しくも今日は「傘の日」だそうで、本曲に於いても"傘"は重要なモチーフとして幾度か登場するため、そこを中心に歌詞の良さに迫っていくことにします。ストーリーを追いつつ、ちょこちょこ言及するスタイルで。


 "今日は朝からずっと しとしと雨降り"から物語は始まります。歌の主役である女の子は"赤いお気に入りの傘"を持っていて、"昨日見た夢 どうか叶えて"という願いと共に夢パートに突入です(歌詞の大部分はこの幸せな未来予想図に占められています)。"放課後の空 相合い傘で魔法をかける"シチュエーションから、引用するのも小っ恥ずかしくなるようなラブラブチュッチュな描写の数々を経て、"雨のリズムみたいに/時々触れる肩 私は夢の中"と結ばれる。相合傘中の二人の距離の近さを少女漫画のごとくロマンティックに描いていて、KOTOKOさんの乙女っぷりにまず感服しました。

 2番からは解釈が割れる(どこまでが夢かという意味で)と思うのですが、個人的には"お天気予報 残念ね 曇りのち晴れ"までが現実で、続く"ところにより大ハズレ 土砂降りっていいね"からが再び願望だと捉えています。つまり、朝は雨降りでも放課後には止んでしまい夢は叶いそうもないので、引き続き妄想を披露するといった流れではないかということです。"てるてる坊主 指でかしげた"というフレーズは雨降りの非実現を表していると理解出来るので、ほぼこの解釈で正解だと言いたいのですが、2番以降を現実の出来事としてもそれはそれで希望があって素敵なので、断言はしないでおきます。"雨に咲いた 傘の花束/くるくる雫たち 二人を見守っています"に宿るファンシーさを、夢の世界だけで片付けてしまうのも勿体無い気がしますしね。


 最後はメロディとアレンジに対する言及です。先に書いた通り「元気なポップソング」と評せるくらいに明るくキャッチーなナンバーゆえ、英語パートやA/Bメロには跳ね感があり、まるで傘に当たって弾ける雨粒のような旋律だと形容出来ます。それを受けるサビは意外と美メロで、特に落ちサビから始まる2番ではメロの流麗さが際立っていて素敵です。

 音遣いに関してはキュートでキラキラしたサウンドのほうが印象的だと言えますが、アレンジを下支えしているのはこれまた意外にもロックであるのが面白いポイントかもしれません。英語パートが最も顕著ですがギターに存在感があるので、これをもっと目立たせてシンセを排せば、ガールズロックナンバーとしてのアウトプットもあり得たのではないかと思うくらい。

 あとは1番後間奏のシンセフレーズ(1:53~2:14)も結構好みで、おそらくストリングス系からブラス系の音にシフトしているのだと分析しますが、どちらも良い意味で打ち込み感満載というか、チープであるのが功を奏していると感じます。