今日の一曲!Ceui「mellow melody」 | A Flood of Music

今日の一曲!Ceui「mellow melody」

 【追記:2021.1.5】 本記事は「今日の一曲!」【テーマ:雨】の第六弾です。【追記ここまで】

 「今日の一曲!」はCeuiの「mellow melody」(2007)です。TVアニメ『sola』のED曲で、アルバムとしてはメジャー1stの『Glassy Heaven』(2009)に収録されています。

 注:以下に埋め込んだ商品画像リンクが第二弾と同じく楽天のものになっていますが、理由も同じでAmazonだと定価以上の表示になってしまうので回避した次第です。【中古】と表示されているものも本当は避けたかったのですが、筒形スリーブケース付きのジャケットが映っているのがこれしかなかったため、代表として選びました。


 プロダクトデザインを詳細に述べたことからも察せるでしょうが、僕はこのCDを初回限定盤で所持しています。要するにアニメを観て気に入ったからこそ手元にあるわけですが、残念なことに今の僕には『sola』の記憶が殆どありません。何せ11年前の作品ですし、その間に二次元趣味から離れていた時期が8年もあるので、内容の大部分が脳内から零れ落ちてしまっていることを白状します。

 …が、しかしです。タイトルの通り「空」が印象的でビジュアルが綺麗な作品だったことは覚えていて、中でもヒロインが雨降りの中で内側に青空が描かれた傘を差しているカットだけは強く印象に残っていたので、今回の雨シリーズで選曲するに至りました。便利な時代なのでネットを駆使してあれこれ調べたところ、どうやらそのカットはOP映像のものだったようです。従って、本来であればOP曲である結城アイラの「colorless wind」(2007)を紹介するほうが理にかなっているのですが、そもそも音源を所持していませんし、当時からED曲の名曲っぷりが凄いという感想を抱いていたので、強引ですが本記事では「mellow melody」にフォーカスします。


 というのも、同曲の歌詞に「雨」は登場しないんですよね。むしろ天候に関する言及は"雪溶けの夜明け まぶしすぎて"だけなので、描こうとしているのは春の陽射しであり、関連があるものと考えても据りが良いのは降雨ではなく降雪ではないでしょうか。よって、テーマ「雨」としては変化球;それこそ先述のOP映像あるいは作品本編といった外部要因に頼らざるを得ないところもあるのですが、それでも選んだのには理由があります。身も蓋もない主観に拠った主張になりますが、雨の日に聴くと没入感が凄い…要するに雨が非常によく似合うナンバーであることを評価しているのです。

 勿論歌詞の内容から推して雪をイメージしたり、もしくはED映像を取り立ててトワイライトを想像したりしても、楽曲の雰囲気にはよく馴染むと思います。"人々が眠りにつけば"や"悲しみがいつか星になれば"など夜を思わせる描写が多いのは、ヒロイン達の特殊なキャラクター性を意識しているからでしょうが、何れにしても重要なのは「日光が出ていない(弱い)情景」であり、そういうシチュエーションであれば普通に聴く以上の効能を実感出来るとの認識です。個人的にはそれが「雨の日」だったという理屈になります。


 テーマ「雨」での選曲理由は以上なので、以降はシンプルに楽曲の魅力に迫っていくとしましょう。

 この曲で最も素晴らしいのは、メロディの美麗さだと思っています。Ceuiさんの透き通る歌声も相俟って、珠玉の旋律になっていると絶賛。センチメンタルなメロとしては割と王道というか、A・B・サビと一貫してキャッチーではあるのですが、決して陳腐なアウトプットになっていない点が好感触です。

 旋律自体の妙というのも勿論あるとは思いますが、それを支える要素;たとえば先述のCeuiさんの声質だったり、回想録のような趣の歌詞だったり、或いはしっかりと沈み込む低音部(キックとベース)に、主旋律とダンスをしているかの如き可憐なストリングスアレンジと、これらが相互作用的な働きを見せていることも肝要で、メロの美しさが一段と際立っている要因ではないかと分析しています。以下、この点について要素ごとに掘り下げ。


 まずCeuiさんの歌声についてですが、先に書いた「透き通る」という形容は共感を得られやすいと思いますし、対外的な紹介文に使う語としても適切であるという印象です。しかしこの歌声の良さを真に伝えるためには、一般的には誉め言葉ではない単語を使ったほうが個人的にはしっくりきます。それは「病弱/薄幸そうな」という形容で、ふとした瞬間に居なくなってしまうような存在の希薄さを、健気に歌い上げることで何とか定点に繋ぎとめているといった、いじらしさが感じられる歌声であることを素敵に思うという意味での誉め言葉です。

 その儚げなイメージが、アニソン界ではお馴染みの畑亜貴さんが手掛けた歌詞によって更に強化されています。先に「回想録のような」という表現をしましたが、これは主にサビの"優しさを誘う おとぎ話/あなたから教わったのよ/戻りましょう そっとあの頃の想いに"の歌詞を意識してのことです。対人モダリティと丁寧形の使用;わかりやすく言えば読み聞かせるような文体が使われているのに、それが今はここに居ない"あなた"へ向けられているという構図になっているので、一層切なく響くのでしょう。


 作編曲を担当しているのは小高光太郎さん。当ブログではお名前こそ出していませんが、ワルキューレ「Walküre Attack!」(2016)や、+α/あるふぁきゅん。「Our sympathy」(2017)、関連記事はありませんがAqours「勇気はどこに?君の胸に!」(2017)などを手掛けていて、近年でもご活躍なさっている方ですね。本曲をレビューするにあたり久々に歌詞カードを開いたのですが、当時はあまりトラックメイカーを気にかけていなかったので、作編曲が小高さんであることが今では驚きでした。ここに挙げた楽曲群もみな好みなので、何気に昔から好きなクリエイターであったと言えます。

 先に宣言した通り、ここまでの記述は全てメロディの素晴らしさを讃えるための前置きみたいなものなので、最後に満を持して旋律のツボに言及します。何処を切り取っても美しいがゆえに紹介にも困ってしまうほどですが、それでも特筆したいのはやはりサビメロの美しさです。

 以降の表現は全てメロに対するものだと断っておきますが(仰々しいのもそのため)、そこはかとない仄暗さと揺籃歌のような落ち着きが綯い交ぜとなった"夢守る調べ 口ずさむの"で幕を開け、高音部が心地好い"人々が眠りにつけば"で意識が夢の中へと飛び、啓示みたいな優しさを伴った"また会う日の/願い紡げるでしょう"を経て、"愛の糸"で感極まるというシークエンスは完璧だと言うほかありません。その後の"優しさを誘う"以降の魅力は歌詞のセクションで語った通りですが、何れにしても歌詞に寄り添った表現力豊かな旋律が素晴らしいと言えるので、これを本曲に対するまとめとして記事を終えます。