Japari Café2 | フレ!フレ!ベストフレンズ | 舞台OST / V.A. | A Flood of Music

Japari Café2 | フレ!フレ!ベストフレンズ | 舞台OST / V.A.

 字数制限のため記事タイトルでは不正確なディスク名及びアーティスト名になっていますが、『けものフレンズ』に関連するCDのレビュー・感想です。本記事では3作品を同時に扱います。詳細な情報は都度書きますが、ラインナップと簡単な概要は以下の通り。

① 『Japari Café2』は、前作『Japari Café』(2017)に続く、キャラクターソングアルバムの第2弾です。アーティスト名の表記はありませんが、総勢15名のフレンズが参加しいるので便宜上V.A.とします。

② 『フレ!フレ!ベストフレンズ』は、前作『ようこそジャパリパークへ』(2017)に続く、どうぶつビスケッツ×PPPの2ndシングルです。

③ 『舞台「けものフレンズ」オリジナルサウンドトラック』はディスク名の通りですが、インスト曲をまとめた劇伴集というよりはボーカル曲をまとめた劇中歌集としての趣が強く、これまたアーティスト名の表記がないので便宜上V.A.とします。

 ここに掲載した順にレビューをしていきますが、③に関しては肝心の舞台を観ておらず突っ込んだ内容には出来ないため、①、②と比べるとライトです。


Japari Café2 / V.A.

TVアニメ『けものフレンズ』キャラクターソングアルバム「Japari Café2」/けものフレンズ

¥3,240
Amazon.co.jp

 『Japari Café2』はキャラクターソングアルバムの第2弾です。前作のレビュー記事の中で、僕は「想定していたのは各キャラ毎に曲が用意されているタイプの言わば普通のキャラソン集だったのですが、今後出るかもしれませんしね。」と書きました。これは前作がキャラソン集と言っても少し特殊な内容だと思ったからこそ出た言葉ですが、今作はここで言うところの普通の内容だったことと、実際にこうして第2弾がリリースされたことのダブルで嬉しいです。


 従来通りボーカルクレジットを先に処理しますが、参加フレンズ及びCV担当声優の一覧は以下の通り。「ペンギン」は「P」に置換、区切り(|)は帯クレジットの空行に準拠しています。なお、歌い手のクレジット(=アーティスト名)は曲毎に設定されているので、それに関しては曲名の横に併せて表示します。

 かばん(内田彩)、どうぶつビスケッツ:サーバル(尾崎由香)、フェネック(本宮佳奈)、アライグマ(小野早稀)|コツメカワウソ(近藤玲奈)、アフリカオオコノハズク(三上枝織)、ワシミミズク(上原あかり)、マーゲイ(山下まみ)、ギンギツネ(相坂優歌)、キタキツネ(三森すずこ)|PPP(ペパプ):ロイヤルP(佐々木未来)、コウテイP(根本流風)、ジェンツーP(田村響華)、イワトビP(相羽あいな)、フンボルトP(築田行子)
 
 総勢15名ですね。前作から引き続き参加しているのは、かばんとどうぶつビスケッツとPPPとあとマーゲイですが、マーゲイは前作ではドラマトラックへの参加だったのでノーカウントとすると、新たに6名をボーカルに迎えての編成ということになります。



 
 先に全曲を試聴出来る動画を埋め込んでおくので、購入を検討されている方は参考にしてください。加えて、06.「湯けむりユートピア」に関しては、他の収録曲のレビューと比べてかなり文章が長くなっていることも事前に注意喚起しておきます。


01. なかよしマーチ / かばんとサーバル

 タイトルのまんまですが、かばんとサーバルの相棒愛にあふれたマーチで幕開けです。冒険心に満ちた前向きな歌詞、わかりやすくポップなメロディ、生のバンドサウンドを軸としながらも打ち込みで煌びやかな質感が補助されたアレンジと、作品の雰囲気に寄り添いながら1曲目としての役割もきちんと果たしているので、素直に良い曲だと思います。

 作詞・作編曲を担当しているのはじんさん。これは楽器のプレイヤー陣及びミキサーの手腕もあるのかもしれませんが、全体的に優しい音遣いでボーカルを立てているのが印象的です。埋没してしまうほどではないけれど、角のないまろやかなサウンドで心地好い。

 歌詞に関しては、仰けの"海の向こうには 誰がいるのかな?"で色々と余計なことまで考えてしまったので、皮肉にもそこが最も印象に残った形です。2期ってどうなるんでしょうね。…暗く終わらせるのもなんなので、ラストの間違いパートが微笑ましいと明るく締めておきます。笑


02. マイペースちぇいさー / アライグマとフェネック

 続いてはアラフェネコンビによるナンバー。01.の後というこの曲順は、まさに"ちぇいさー"冥利に尽きるという感じですね。

 作詞・作編曲はno_myさんで、01.と異なりプレイヤー陣のクレジットはなく打ち込み主体の楽曲です。ハッピーなビートにのせて"ちぇちぇ ちぇちぇちぇ ちぇいさー"が連呼されるので、なかなか中毒性のある仕上がりとなっています。"ちぇいさー!"や"ちぇいさー?"などのバリエーションも聴きどころ。

 前作のレビュー記事でも同様のことを書きましたが、アラフェネ含むどうぶつビスケッツの3人はそれぞれが声に独特な魅力を宿していると思っていて、この曲でもアライさんの良い意味でアホっぽく元気な歌声と、フェネックのか細いけれど持続性に癒しを感じるボーカルとの掛け合いが実に心地好いです。メロディ×声質で中毒性が増強されている。

 特に他意はありませんが、サビ終盤の"マイペースちぇいさー"のメロは何処かで聴いたことがあるような気がして、それが思い出せずにモヤモヤしています。笑 とてもアニメのOP曲っぽいというか、上昇していく"ちぇいさー"にあわせてカメラが青空にパンして、作品のタイトルロゴが出てきそうな雰囲気がありません?そういうポテンシャルを秘めた、美しい旋律だとまとめておきましょう。


03. たーのしーたーのしーたーのしー! / コツメカワウソ

 まだ多くの人にTVアニメ『けものフレンズ』の面白さがバレていない初期の段階から、圧倒的な人気を得て存在が広く浸透した現在に至るまで、ミームとしての猛威を遺憾なく発揮し続けている「たーのしー!」の生みの親、コツメカワウソちゃんによる納得のソロナンバーです。

 sasakure.UKさんによる作詞・作編曲で、02.と同様に打ち込み主体のトラックとなっています。ジャングルの表現だと思われますが、クイーカの音を入れているところは「ようこそジャパリパークへ」を彷彿させますし、ファイフっぽい音も森や木々を連想させるので、こちらはより『けものフレンズ』らしいアレンジだという印象。

 天才的な歌詞も注目ポイント。"うれしーから、うれしーでしょ?/すきだから、すきなんでしょ?/きっとこの世界はそんなふうにできてる"や、"たーのしーこと、たのしくたのしむことが/絶対絶対絶対一番たーのしーでしょ!"に見られるコツメカワウソマインドの前では、「IQが下がる」だの「トートロジー」だのは意味を失ってしまいますね。笑

 ちなみにですが、本CDを未入手で「ジャケットの表にも裏にもコツメカワウソちゃんの姿が見えないじゃん!」とお嘆きの方向けに、歌詞カードを開いてすぐにおいしい扱いで描かれているので安心して購入していいということを書いておきます。


04. とっても賢いじゅるり“れしぴ” / コノハ博士とミミちゃん助手

 アフリカオオコノハズクとワシミミズクの賢いコンビによるお料理ソング。サビの"ちょいちょいなのです ちょいなのです"が特に可愛さ爆発で、改めて魅力的なキャラクター達だと思わずにはいられませんでした。つまりキャラソンとして満点だという主張です。

 ここで初めて作詞者と作編曲者が異なるクレジットの登場で、歌詞は高瀬愛虹さん、作編曲は伊藤翼さんによるものとなっています。また、人選は違いますが01.と同じくバンドサウンドは生で、バンジョーが使われているという点でもこだわりが感じられます。あまり聴こえませんが、2番Aで鳴っているのがそれでしょう。

 むしろ全編を通して目立っているのは木琴(正確にはわかりませんが鍵盤打楽器系)の音ですね。特にAメロのレシピ風歌詞のところは、ピアノの音と相俟って教育番組の手順動画のBGMっぽさがきちんと醸されていて、表現力が高いなと思いました。

 しかし最も遊んでいるというかパロディ丸出しなのは、間奏(歌詞にない台詞部)の木琴(+ピアノ?)ですね。「手が入ってないものなど」から奏でられているフレーズを聴いて、「あれ?なんかこれ知ってるぞ?」と思ったら、それはおそらく崎谷健次郎の「Rag Time On The Rag」(1997)が脳内に流れているからでしょう。元々はTVドラマの劇伴曲ですが、某有名番組の調理シーンで流れる曲のため元ネタに選ばれたのだと推測します。こういう遊び心も知性のなせる技だと思うので、賢いコンビにぴったりですね。


05. THE WANTED CRIMINAL / マーゲイ with PPP

 先にふれますが、演奏クレジット「Guitar / 三澤勝洸(パスピエ)」に驚きました。流石アニメ担当。作詞・作編曲に関しては04.と同じなのでお名前は省略します。

 マーゲイメイン曲ですが、CVを務める山下まみさんによるボーカル曲という意味では、ついこの間レビューした4Uのアルバム以来なので、個人的には九条ウメとの比較を楽しむ一曲となりました。演じ分けは当然出来ていますが、何かに熱心なキャラという共通項はあるので、山下さんの声はそういうパッションを持っているのかもですね。

 物騒なタイトルは一体どういうことだと思ったのですが、歌詞を見て納得です。マーゲイのPPP愛をこういう形で表現するのはセンスあるなぁと感心。曲調も歌詞の内容に合わせてか、怪盗風或いは探偵風のジャジーな趣でお洒落。定番のサウンドなのでちゃんとしたジャンル名があるのかもしれませんが、毎回しっくりくる表現が出来なくてもどかしい。

 アイドル用語がたくさん出てくるのも面白いです。"入り待ち・出待ち"、"おっかけ 剥がされ"、"箱推し DD"、"リリイベ"、"振りコピ"など、マーゲイの推し方を察することが出来るワードチョイス。笑


06. 湯けむりユートピア / ギンギツネとキタキツネ

 まさかの和!「キツネ×温泉×和」なのでこのまま今期アニメの『このはな綺譚』に使えそうだとくだらないことをまず思ってしまいました。笑

 それはともかくとして非常に良い曲です。本作の中で最も気に入ったどころか、これまでにリリースされた『けものフレンズ』関連の全楽曲を比較対象としても、No.1に躍り出るレベルで気に入りました。「ようこそジャパリパークへ」はNo.0で別格扱いということでご容赦を。

 作詞者は前作にも参加なさっていた磯谷佳江さんで、作曲者は小野貴光さん、編曲者は玉木千尋さんと、本作の中で唯一この三要素を別人が担当しているナンバーです。このTime Files, incの面々をクレジットに認めた瞬間、楽曲のクオリティの高さにはすぐ得心がいきました。なぜなら『Tokyo 7th シスターズ』及び『SHOW BY ROCK!!』の関連楽曲にて、その手腕家ぶりは僕の既知とするところだったからです。

 実は02.のno_myさんも04./05.の高瀬さんと伊藤さんも『SB69』楽曲で存じ上げていたので、ここでTF,incの3名を殊更取り上げるのは不公平な気がしますが、ここ数ヶ月以内に当ブログでレビューを行った作品の中に彼らのワークスがあるので、紹介しやすいからという理由で代表に選びました。ちなみにこの記事この記事なので、参考までにリンクしておきます。


 偏見も多少入っていますが、こういう和風の旋律とサウンドを持った曲はアニソンではそこまで珍しくない印象ですし、どうしても似通ってしまう部分が出てくるものだとも思っています。従って、その中でどうやって他の曲と差別化を図るかが重要となるわけですが、ここではその観点から「湯けむりユートピア」の魅力に迫っていくとしましょう。


 第一に挙げたい魅力は「季節が冬*」だという点。なぜならこういう和風の趣を備えた曲は、「桜で春を」または「祭りで夏を」イメージした内容になりがち**という認識だからです。それが悪いわけでは勿論ありませんが、ここではその型にはまっていないことを評価します。

 補足*:正確にはジャパリパーク内のゆきやまちほーにある温泉宿にいるキツネ達の歌なので、実際の季節とは必ずしも一致していない可能性がありますが、このエリアで想定されているのは冬だろうということで見逃してください。

 補足**:ここではあくまでもアニソン(を含む現代のポップス)を対象としているからこそ「和風」という表現にしていますが、もっと振り切って「和/日本の」と言っても差し支えないであろう演歌・歌謡曲にまで話を広げれば、秋冬が似合う曲も多くありますね。「日本を思わせる旋律では春夏しか表現出来ない」と言っているわけではないことに留意してください。


 雑ですが一応考察しますと、仮にキャラソン集の中に一曲だけ和テイストのものを入れるオーダーがあったとして、その曲の歌詞を春または夏をモチーフにして書くというのは定石だと思います。だってその方がわかりやすいから。先に挙げた桜や(夏)祭りから着想すれば歌詞にも自然と日本が出るので、例えば大和撫子や日本男児キャラにはあわせやすいでしょう。この意味では、キャラの特徴からではなく場所から着想しているところも本曲のひねったポイントですね。

 逆に季節の側から考えてみると、秋ならオーケストラ或いはジャズサウンド、冬ならクリスマスポップス或いは聖歌隊風のアレンジになることが多い気がするので、春夏を捨ててまで和風の旋律を秋冬に適用しようとするのは、一枚のキャラソン集(なるべくジャンルをかぶらせない作品)を作る場合には常道でないと思います。秋なら紅葉、冬なら正月・雪見酒あたりで可能性は充分にありますが、キャラにそれらに関する特別なエピソードでもない限り、やはり和風のメロで優先される季節は春夏だという持論です。この意味では、温泉を介して冬と和を取り込めたのは設定のおかげもあると言えますね。


 第二は「空間(系エフェクト)の使い方が上手い」という点ですが、これはもっと単純化して「音が綺麗」な点としても構いません。

 中盤のビートが消失する間奏部(台詞パート)がいちばんわかりやすいですが、お湯(水)と風呂桶を表現している音(2:17~2:19)の明瞭さからは、音作りの段階からのこだわりが窺えますし、メロディを担っている弦の音も要所要所でディレイしつつパンしているので、空間内の残響を巧みに演出しているという意味で、これぞまさにお風呂サウンド(主に屋内)の正解という感じがします。

 お風呂要素は申し分ないとして、和楽器の音もクリアで素敵です。打ち込みのため正確な楽器の同定は出来ませんが、弦、笛、太鼓(これは風呂桶サウンドも兼ねている)のどれもが絶妙なバランスで主張を続けているので、曲に疾走感が生まれていますよね。このように装飾は和ですが、軸はダンサブルなキックなので踊れるトラックに仕上がっているところも堪らなく好き。

 あとはボーカルの心地好さも「音が綺麗」に入れてしまいます。相坂さんと三森さん両名による癒し効果が凄過ぎる。台詞部は全て可愛さの限界突破が起きているという感じですが、ボーカルトラック自体に過剰なエフェクトはかけていないように聴こえるので、元々のお二人の声質が素晴らしいのでしょうね。


 第三は「メロディと歌詞の相互作用が素晴らしい―言語的特性に絡めて―」という点です。ここまで散々「和風の」と形容している通り、何処をとっても日本的な旋律が顔を覗かせるのがこの曲の特徴ですが、特にサビは歌詞(言語)の面でも和が巧みに表現されていると感じたので、そこを熱く語っていきます。

 まずAメロは恭しい感じがするというか、歌詞にあわせて仲居スピリッツがあるとしてもいいのですが、女性らしい可憐なメロディで何処ぞへと誘われる感覚が堪りません。特に"雪山温泉郷"で二人のボーカルが揃うところは、これも一種の"Welcome to the ジャパリパーク"の形だと思えるほどだったので、作品コンセプトにまで肉薄していると言えないでしょうか。

 祭囃子のようなBも勢いがあって素敵です。こういうところから夏祭り路線に舵を切ってしまうことが通常は多いのでしょうが、旋律が孕んでいる熱量を温泉に変換することで冬でも自然な仕上がりになっていて、これは制作者同士の意思疎通がクリアだからこその産物だと思います。


 サビメロは只管に美しい点を誉めたい。"雪やこんこ"と童謡を彷彿させる歌詞や、CV担当の相坂さんと三森さんの声質あたりの要素も絡んでくるので、一概にメロだけで判断しているわけではありませんが、同系等の楽曲の中では自分史上最高レベルに流麗な傑作だと思っています。小野さんのメロディセンスに酔いしれました。

 再度書きますが、「似通った曲」ならそれなりには聴いているんです。それなのにそれらを押し退けて「湯けむりユートピア」が頂点に来てしまったので、この驚きを少しでも伝えるためにここからは更に専門的に掘り下げてみます。


 自分なりに分析した結果、この曲のサビの魅力は「半母音の使い方が上手い」ところにあるという結論に達しました。ここで言う「半母音」は[j]の音;つまりヤ行の子音のことで、その名称が示しているように、母音に近い調音法が必要なくせに振る舞いは子音的だという特殊な音です。

 母音を冠しているものの母音ではないため音節主音にはなれませんが、モーラで考える日本語では知っての通り「ヤ行(半母音+母音)」を基本的な構成単位のひとつとして認めています。これだけでも和風の旋律にヤ行が合うという主張の根拠にはなり得ると考えますが、半母音が持つ曖昧さ(母音と子音の中間)や儚さ(音節主音になれない)に関しても、これまた日本の趣が強いと言えると思うのです。

 この点を意識してサビの歌詞を見ていきましょう。例えば1番では"雪"、"ユートピア"、"たのしいよ 磁場も感じるよ"(語末)、"夢"/2番では新たに"湯けむり"、"この世"/落ちサビで新たに"沸いてくる"(実はワ行子音も半母音)、"ご用心"と、知ってか知らずか半母音が旋律上効果的な位置に置かれているんですよね。音自体の特性がメロディの美しさを更に高みに押し上げているからこそ、日本人としてのDNAに訴えかけてくるものも強いのだと分析します。


 最後にこれら全てを考慮した上で最も好きなパートを挙げると、1番サビで存分に日本の冬と温泉を堪能したのち、そのまま和楽器とキックのダンサブルな寄り添いが素晴らしい間奏に突入し、キタキツネが「ゲームだってあるよ」と可愛く呟き、ギンギツネが「先にお風呂」と母性で受けるというこのシークエンス、神展開と言わずして何と言うのかと締め括ります。


07. わたしたちのストーリー / PPP

 PPPのニューナンバー。作詞・作編曲者は三矢禅晃さん。アイドルアニメの空気感を多分に纏った曲だと思ったので、PPPのペンギン要素よりもアイドル要素にフォーカスした正統派/王道の楽曲だと形容出来ます。サクセスストーリーを夢見る歌詞の内容もそうですが、メロディが特にそれっぽいですね。

 Aメロの"いま"で一度短く切ってから"思い出すあの日々は"と流れるような旋律に続いていくところや、2ndAから加わるコーラス("あの夜は")、ここはPPPHパートですよというわかりやすさ重視のBに、サビ入りで一度「ん?ちょっと地味かな?」と思わせてからの美メロの登場("きっと 夜が来て「おやすみ」 朝が来て「おはよう!」とか"のパート)と、どれもこれもツボをおさえていて嫌いじゃないです。


08. ドレミファロンド(フレンズver.) / どうぶつビスケッツ+かばん×PPP

 アーティスト名は上掲の通りですが、セリフ出演まで含めると本作に登場した全フレンズが参加したナンバーとなります。「初出なのに何が(フレンズver.)なんだろう?」と思ったのですが、元々「ドレミファロンド」(2012)は有名なボカロ楽曲らしいですね。僕はDTMerですしボカロ出身のアニソンクリエイターによる楽曲も聴いている人ですが、恥ずかしながらボカロ界隈自体にはてんで疎いので全く知りませんでした

 本作でも楽曲制作のクレジットはオリジナルと同じで、全て40mPさんによるものです。彼は前作にも作曲で参加していたので、そのつながりでということでしょうかね?ちなみに「(フレンズver.)」となっているのは、歌い手のみならず歌詞も『けものフレンズ』仕様に変更されているからです。

 このように少し特殊な経緯で収録されている楽曲なので、ボーナストラック扱いなのも頷けます。歌詞が異なるのでまるまるカバーというわけでもありませんが、ともかく試みとしては面白いですね。今後の音楽展開に新たな可能性が見えたような気がしました。

 元々の楽曲のコンセプトからして「子供」が意識されているみたいですが、それは「(フレンズver.)」になっても変わっていません。口遊みやすい楽しげなメロディと陽気なリズムにあわせて、『けものフレンズ』の世界観にマッチした優しい言葉の連なりが歌い上げられるので、幅広い層に受けそうな普遍的な良さがあると思います。



 以上、ボートラ含めて全8曲でした。文章量と内容の濃さからも明らかですが、06.「湯けむりユートピア」が圧倒的に気に入りました。次いで好きなのは04.「とっても賢いじゅるり“れしぴ”」と02.「マイペースちぇいさー」。

 他の楽曲についてもピンとこなかったものはひとつもなかったので、全体的なレベルは高いという感想です。06.の項でまとめて書いた通り、楽曲制作陣の面子を見ればハイクオリティであることは保証されているようなものなので、個人的には納得の出来だという評になりますが、同時にこのアルバムにかけるプロダクト制作サイドの本気も感じることが出来る人選だとも思ったので、作品自体が愛されているからこその名盤だとまとめておきます。



フレ!フレ!ベストフレンズ / どうぶつビスケッツ×PPP

フレ! フレ! ベストフレンズ (初回限定盤B)/ビクターエンタテインメント

¥2,160
Amazon.co.jp

 『Japari Café2』と同日発売の『フレ!フレ!ベストフレンズ』は、どうぶつビスケッツ×PPPの2ndシングルです。表題曲は来年リリース予定の新しいアプリゲーム『けものフレンズ PAVILION』のテーマソングですが、アプリは当初年内リリースの予定だったので、本来であればそれにあわせたCDリリースだったのではと邪推します。笑

 三形態で発売されており、「初回限定盤A」「初回限定盤B」「通常盤」でそれぞれ収録内容が異なるのですが(メインコンテンツの3曲は共通)、ここでは「初回限定盤B」を扱います。Bは特典がCDなので、音楽が目当ての僕は迷わずこれ一択でした。

 また、『Japari Café2』の項では書きませんでしたが、本作収録曲の「フレ!フレ!ベストフレンズ」のピアノ譜(おーいしおにいさん監修)は、販売戦略なのか本作ではなくアルバムの封入特典となっているので、それが目当ての方は注意してください。

 どうぶつビスケッツ及びPPPのボーカルクレジットは『Japari Café2』のところで一度書いているので、ここでは省略して早速レビューに入ります。


01. フレ!フレ!ベストフレンズ / どうぶつビスケッツ×PPP



 『けものフレンズ PAVILION』のテーマソングで、1stシングル曲「ようこそジャパリパークへ」でその名を轟かせた大石昌良さん作のトラックです。だけあって、歌詞にもメロディ(展開)にもアレンジ(使用楽器)にも前作を彷彿させるところがあり、遊び心に満ちた楽曲となっています。

 アルバム付属のピアノ譜には大石さんによるワンポイントアドバイスも書いてあり、その中に「この曲はびっくりするくらい転調が多い」との言があるのですが、特にめちゃくちゃだという印象は受けず、むしろ色彩が豊かなジャパリパークらしい変化を見せている曲だとポジティブに受け取ることが出来たので、そこに大石さんの手腕と作品自体の懐の深さが感じられますね。

 しかし製作者自ら「この曲はそういう作りだ」と述べるのであれば、ここでは部分部分に着目して細かいツボを挙げていくスタイルにしようと思います。以降では比較のために「ようこそジャパリパークへ」に言及する箇所が出てきますが、文字数を食うのでこの項に限っては単に「前作」と書いたらこれを指しているとご理解ください。


 汽笛と鐘の音で幕を開け、ピアノをバックに"ほら 何回だって何回だって 旅に出ようよ"と高らかに歌い上げられるイントロ。ファンファーレ始まりだった前作を思い起こさせるような冒険心は満ちた演出は変わらずですが、曲調は変えてきたんだな…と思わせておいてからの、暴れ回るクイーカに"うー!がぉー!"でいきなりやられました。笑 新鮮と安心を同時に提供された気分。

 AメロはPPPコーラス隊の"(ジャパリパーク!君とジャパリパーク!)"がお気に入り。単体でもなかなかに美メロだと思いますし、主旋律に生じた隙間を華麗に埋めてアライさんからフェネックへのボーカルチェンジで生じ得る違和感を軽減させる役割も果たしているところが素敵です。

 Bはポップな前半とチアのコールっぽい後半で賑やかさマシマシにしているところが良い。溜めの美学があるというか、オーディエンス煽りを意識させるような作りになっているので、ライブではさぞ盛り上がるだろうと思います。


 サビメロは二部構成になっているところがやはり前作を連想させますね。前作では明るい前半から切ない後半へのギャップが魅力でしたが、今作では性質の異なる明るさで畳み掛けてきている感じかな。"ほら 何回だって"からを後半として書いていますが、前半も後半も前向きなエネルギーに満ちた旋律なので聴いていて楽しいです。

 後半の"未踏のエリア"の部分で、前作Dメロの"集まれ友達"のパートが脳内に浮かんだのですが、新たな一面を見せるCメロがあることや、エンディングに相応しい泣きのDメロで曲が閉じられるところなど、前作に敢えて寄せてきていると思しき遊び心のある楽想も聴きどころですね。

 歌詞の面では2番サビ頭の"離さないで未来"がいちばんグッときました。意味深なフレーズとも言えますが、公式サイトを見る限り新アプリはただの観察ゲームではなく、舞台のバックグラウンドもきちんと設定してあるっぽいので、あれこれ妄想出来るという意味では歌詞解釈的な楽しみ方も乙かもしれません。

 
02. ファンファン!メロディ♪ / どうぶつビスケッツ

 どうぶつビスケッツの新曲。楽曲製作者は『Japari Café2』収録の「なかよしマーチ」の項でもお名前を出したじんさん。シンセプログラミングに別に人員を割いているところからもわかるように、全体的には打ち込み主体のピコピコしたナンバーだと形容出来ますが、ギターは生のようです。

 キックやクラップが心地好かったりシンセベースがグルーヴィーだったりと、ダンスミュージックのマナーで作られている印象で、キャッチーなメロとあわさることで一層ダンサブルな仕上がりになっているので、本作の中では最も僕好みのサウンドでした。

 どうぶつビスケッツ単体のナンバーは「ホップステップフレンズ」(2017)以来ですが、この曲もまたダンサブルな点が好みだったので、もしかして楽曲に於けるどうぶつビスケッツは『けものフレンズ』の未来/SF要素担当なのだろうか。笑


03. ファーストペンギン / PPP

 ラストはPPPの新曲です。『Japari Café2』収録の「わたしたちのストーリー」はアイドルファクターを押し出したナンバーでしたが、こちらはタイトルからもわかるようにペンギンをテーマとしたPPPならではのトラックですね。

 英語の語彙として'first penguin'は知っていましたが、ストーリー上のPPPの立場(主にプリンセス)のことを思うと、モチーフとしてこの上ない正解だという気がします。また、"フォレイシングダイヴ"や"トラベリングダイヴ"というペンギン用語を出すことで、知的なニーズにも対応しているところが流石です。

 楽曲製作者はhalyosyさん。「大空ドリーマー」(2017)から引き続きということなので安心ですね。台詞になっていますが「大空ドリーマー」の歌詞が一部流用されているという粋な演出もあり、halyosyさんのPPP愛が伝わってきます。

 基本的にロックアレンジなのは変わっていませんが、「大空ドリーマー」に見られたような初々しさはなくなっていて、洗練されたPPPの新機軸ソングといった趣ですね。例えばAメロバックは結構お洒落なアレンジになっているので、進化しているなと思いました。


04.は03.の「(-off vocal ver.-)」です。

 ちなみに「初回限定盤A」には02.の、「通常盤」には01.の「(-off vocal ver.-)」がそれぞれ収録されています。




 続けて特典CD(DISC 2)の内容を見ていきます。「ようこそジャパリパークへ」のボーカル違いが収録されたディスクなので、変更点だけに絞って軽めにしますね。


01. ようこそジャパリパークへ (サーバル ver.) / サーバル

 概要はタイトルの通りです。"すっちゃかめっちゃか"があんまり言えていないところとか、ラストのアドリブの"ジャパリパーク!"や"ララララ"の一所懸命さとかも可愛いポイントですが、最もわかりやすく違いを楽しめるのは間奏の台詞部です。当然ですがサーバルの単独で、自己&エリア紹介といった趣になっています。


02. ようこそジャパリパークへ (アラフェネ ver.) / アライグマとフェネック

 概要はタイトルの通りです。アライさんはともかくとして、フェネックがメインボーカルを務めているパートが妙にセクシーに聴こえて、そこが気に入りました。笑 台詞部は大体想像がつくでしょうが、二人のいつもの掛け合いが微笑ましい内容です。



 以上、特典CDを含み且つインストを除いて全5曲でした。レビュー本文中にも書いていますが、最も気に入ったのは「ファンファン!メロディ♪」です。しかし「フレ!フレ!ベストフレンズ」と「ようこそジャパリパークへ」のボーカル違いで改めて大石さんの凄さに気付けましたし、「ファーストペンギン」ではhalyosyさんの名プロデューサーっぷりを堪能出来たので、満足の内容だとまとめるほかないでしょう。



『舞台「けものフレンズ」オリジナルサウンドトラック』 / V.A.

舞台「けものフレンズ」サウンドトラック/ビクターエンタテインメント

¥3,240
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 『舞台「けものフレンズ」オリジナルサウンドトラック』はディスク名の通りで、今年の6月に公演された舞台版『けものフレンズ』の音楽をまとめたアルバムです。

 「サントラ」といってもインスト曲をまとめた劇伴集というよりは、ボーカル曲をまとめた劇中歌集としての趣が強く、楽曲制作陣の誰かの名前をアーティスト名にしているわけでもないので便宜上V.A.としています。

 しかし一応CD STAFFを一部紹介しますと、作詞には村上大樹さん(舞台版の脚本・演出家)が、作曲・ディレクターには楠瀬拓哉さんがクレジットされているので、最低限そのお二人のお名前は出しておきます。

 どうぶつビスケッツとPPPを除くボーカルクレジット(キャスト一覧)も先に書いておくと、オカピ(野本ほたる)、マンモス(仁藤萌乃)、ヒツジ(西川美咲)、ホワイトタイガー/サーベルタイガー(酒井蘭)、オオフラミンゴ(幸野ゆりあ)、タヌキ(加藤里保菜)、クロヒョウ(稲村梓)、チーター(石井玲歌)、シロナガスクジラ(伊藤梨花子)で、総勢17名のキャストとなります。


 本作は先月末に発売されたので公演から約半年での音源パッケージ化となりますが、来年には再演も決まっているので今なら予習盤としても活用可能ですね。

 冒頭にも書きましたが、僕は舞台版を観ていないので本作について突っ込んだレビューは出来ません。また、ここから更にアルバム1枚分のレビュー文章を書き足すとなると流石に肥大化が過ぎるので、気になった曲だけをごく簡単に取り上げるだけのスタイルにします。曲毎の見出し(曲名)も作らず、文章だけで済ませますがご容赦を。


 いきなり邪道な紹介の仕方になりますが、本作中で最も印象に残った曲は18.「みんなフレンズ(アコースティックギター ver.)」でした。この曲を初めて聴いた時、なぜか「怖い」と思ったので。アコギの優しい音色にあわせてサーバルの笑い声が轟くというナンバーなのですが、閉園感が漂っているというか、夢から覚めてしまったかのような切なさに襲われました。

 可愛い系統では"ペタ!HEY!"の連呼が印象的な15.「PPPのドレミのうた」や、アラフェネの元気さが伝わってくる16.「われらじゃぱりびん」がお気に入りですが、最もキュートだと思ったのは04.「じゃぱりまんRAP」です。やっぱりアライさんの声がナンバーワンと思わずにはいられない。というか語尾「なのだ」キャラに弱いということを再認識しました。笑

 単純に曲の良さで言えば、サーバルとオカピによるデュエットソング02.「ふたりならやれるよ」が最も好きです。舞台曲らしさ顕なストーリー性のあるメロディを持っているので、聴いていて楽しい。慈愛に満ちた歌詞も実にサーバルちゃん。

 何のヒーローソングだよと突っ込みたくなる、07.「わがなはホワイトタイガー」も好みです。"トラぬタヌキの/トラぬタヌキの/トラぬタヌキの皮算用!"、"トラトラトラ!/タヌキタヌキタヌキ!"と、中毒性があって口遊みたくなる曲という意味では王冠をあげたい。"みんな白けてホワイトキック"という死語で終わるのもしまらなくて良い。笑

 ラストにボートラとしてライブ音源(19.「じょうねつダンス(LIVE)」)が入っているのですが、これはキャストのMCを堪能するトラックですね。特にイワビーの切実な叫びと、コウテイのフルルに対するぶっちゃけが面白かったです。笑