今日の一曲!The QUEEN of PURPLE「Fire and Rose」 | A Flood of Music

今日の一曲!The QUEEN of PURPLE「Fire and Rose」

 【追記:2021.1.4】 本記事は「今日の一曲!」Ver. 2.0の第十三弾です。【追記ここまで】

 本日の出目は【9, 8, 4, 3】だったので【3rdの850番】の楽曲、The QUEEN of PURPLEの「Fire and Rose」を紹介します。QOPはアプリ『Tokyo 7th シスターズ』から生まれたユニットです。『ナナシス』については過去のこの記事が参考になるかと思います。

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 「Fire and Rose」はQOPの1stシングル『TRIGGER / Fire and Rose』(2016)の収録曲で、両曲とも現状スタジオアルバムには収録されていません(先月出たライブ盤には入っています)。補足ですが、ゲーム内実装では2ndシングルという位置付けですね。ここ最近のEPISODE.3.5の更新がQOPメンバーのものなので、このタイミングで紹介出来るのは悪くないかも。


 ナナスタ発のユニットとしては初のバンドスタイルをとっているというのがQOP最大の特徴です。ガチ路線ゆえ「ユニット」とか「スタイル」という表現は正確ではない気がするので、QOPは「ナナスタ発のロックバンド」であると補足しておきます。

 Vo:E.MURASAKI、Ba:S.FERB、Gt:S.YUMENO、Dr:M.MATSURIの4人により構成されており、リーダー及び作詞作曲はファーブが担当しているという設定です。現実でボーカルを務めているのはムラサキのCVである野村麻衣子さん。よく通る素敵な歌声の持ち主です。

 QOPが登場するまで『ナナシス』でバンドと言えばライバルの4Uでしたが、ナナスタからもバンドが誕生したことでどう化学反応を起こしていくのか楽しみですよね。QOPの存在自体がナナスタと4Uのケミストリーの結果とも言えると思いますし、ライブでは既に両者の対比が鮮やかなようですが、4Uは来月末にミニアルバムの発売も決定しましたし、スタジオ音源でも期待が高まるというものです。


 「両者の対比」と書いた通り、同じバンドでも4UとQOPでは方向性が異なります。4Uはポップ路線というか良い意味でティーンらしさが顕な作風ですが、QOPは正統派のクールなロックを鳴らしていて年齢以上のエッジィさが光るサウンドだと評します。2034年という時代考証を無視した上に乱暴なまとめですが、イメージとしては「邦楽対洋楽」のように感じられる。

 今回紹介する「Fire and Rose」も、タイトルからして複数の洋楽バンドの名前が混ざったような印象を受けますし(QOPというバンド名からもいくつかの有名バンドが連想できますしね)、歌詞にも英語が効果的に使用されているので、わかりやすい格好良さを備えている曲だと言えます。以下の埋め込み動画では、1:36~が「Fire and Rose」です。



 まずイントロのギターからして攻めてますよね。最初の数音に関してですが、微かに不協和音を感じさせる作りなのがフックとして上手く機能していますし、反規則の姿勢はまさにロックです。そしてこれをプレイしているのがユメノだと思うと、彼女の本気っぷりが二重の意味で凄いという感想に。笑

 Aメロはメロディがリバーシブルであると主張します。同じメロに英語と日本語がのせられているわけですが、どちらの言語でもとても自然なんですよね。単純にメロだけを取り立てれば英語のようなシラブル言語が映える旋律だと思うので、上手いのは日本語の方でしょう。シンプルに表現すれば「ライミングとフロウが良い」、分析的に言えば「音節のピークと濁音の重ね方が巧い」と思います。

 Bメロにはここまでに積み重ねてきた疾走感をそのまま纏ってサビへと繋ぐための潤滑油の役割がありますね。「ここで止まったらダメだ」と聞こえてくるようなスピーディーな旋律です。ここはマツリさんのドラムが特に素敵。


 サビは聴けば一発で良さがわかるという類の有無を言わせぬ説得力があります。キャッチーさも兼ね備えていて聴き易くなっているのも高ポイント。歌詞は日本語と英語の混成になっていますが、A→Bで英語→日本語の流れを提示していたことが効果的に働いていると思います。唐突感が無いので。

 タイトルの「Fire and Rose」に纏わる一節が出てくるのもここですが、これは意外にも日本語で出てきているというのがまた上手いです。ファーブが(実際のクレジットに沿えばSATSUKI-UPDATEさんが)曲名をどのタイミングで付けるタイプかはわかりませんが、安直にそのまま他方に流用していないところに性格が見えますね。

 あとはサビに限らず全体的に言えることですが、ベースが素晴らしいです。編曲はQOP全員でやっているのだと思いますが、作曲者がベーシストであるということがきちんと意識されていると感じます。2番の歌詞に"造りモンのグルーブじゃ/後悔さえ叫べない"とありますが、このベースが生み出しているグルーブは本物でしょう。


 歌詞で最も好きなのはCメロ部です。丸々引用しますが、"この道の果てに/打ちのめされたら/誰が嘲う?/僕が笑うだろう"は、「わらう」の漢字の使い分けも流石ですが、"僕が笑う"に様々な感情が含まれているんだろうなと想像出来るところが良い。ファーブの決意が窺える。

 単にキャラの好みで言うとQOPの面子はそこまでという感じだったのですが、こうやって曲によってバックグラウンドが見えると途端に好きになってしまうという節はあります。笑 勿論エピソードによる補強のおかげもあるのですが、特にQOPの場合は曲を提示してくれるだけで説得力が増すという性質が強いですよね。そういうところがバンドだなと思います。