The Present "4U" / 4U | A Flood of Music

The Present "4U" / 4U

 4Uのミニアルバム『The Present "4U"』のレビュー・感想です。4Uは『Tokyo 7th シスターズ』(ナナシス)発のユニットで、帯にも書いてありますが同作品から単独ユニット名義でアルバムが出るのは今作が初となっています。

【Amazon.co.jp限定】 The Present ”4U” (CD+オリジナルピック.../4U

¥3,240
Amazon.co.jp

 当ブログで『ナナシス』に初めて言及したのはこの記事にてですが、これは雑多なよろず記事なので、まともにレビューしたと言えるのはこちらの記事が初となります。軽めの「今日の一曲!」で書いたものですが、網羅的な内容にしてあるので参考にしてください。

 その後リニューアルした「今日の一曲!」でも1本『ナナシス』の記事を書きました。これはQOPの記事ですが、4Uに言及した箇所もあるので併せてお楽しみいただけるかと思います。

 過去記事をリンクすることで前置きをある程度簡略化させる狙いがあったのですが、一応この記事だけでもアーティスト紹介として成立させたいので、レビューの前に4Uの概説を書くことにしました。先に本作の試聴動画を埋め込んでおくので、流しつつ読み進めていくのがおすすめです。




 4Uは佐伯ヒナ(Dr.)、鰐淵エモコ(Ba.&Vo.)、九条ウメ(Gt.&Vo.)の3人からなるガールズバンドで、現実でCV及びボーカルを担当しているのは(掲載順に)長縄まりあ、吉岡茉祐、山下まみの3名です。担当パート(楽器クレジット)は公式サイトのキャラ紹介文を参考にしましたが、ウメがメインボーカルで他2名がコーラスというスタイルを基本にしつつも、エモコとヒナがメインの曲もあるので全員ボーカリスト兼プレイヤーだと言えます。

 ナナスタシスターズ(=プレイヤーサイド)に対するライバルというのが、作中に於ける4Uの位置付けです。設定上の詳しいヒストリーは端折りますが、「アイドル」が廃れた西暦2034年でも変わらずに支持されている存在として、アイドルではなく「バンド」というスタイルで提示されています。ジャンルとしてはロックになるので、未だロックは死せずということですね。

 同じくライバルのKARAKURIは「アーティスト」を代表する存在なので、三者三様に差別化が図られている印象です。これを音楽性の観点からメタ的に見ると、「前時代(アイドル文化全盛期)のレジェンドであるセブンスシスターズが持っていた要素が3つに分離した」とも考えられると思います。セブンスシスターズのシングル曲は、(ゲーム内実装のナンバリングで言うと)1st/2ndでは「アイドル」、3rd/4thでは「アーティスト」、5th/6thでは「バンド」らしさがそれぞれ押し出されていると感じるからです。




 4Uの楽曲でこれまでに音源(CD)としてリリースされているものは、「ワタシ・愛・forU!!」「Hello...my friend」「TREAT OR TREAT?」「Lucky☆Lucky」の4曲でした。「Hello~」と「TREAT~」には「(EMO edit)/(HINA edit)」もありますが、前者は未だCDには収められていません。来年には単独ライブも控えている状況で持ち曲が4つ(+4)だけでは心許無いでしょうから、ここでアルバムを出すのは当然といったところかな。

 実質4曲だけで音楽性を説明するのもどうかという気がしますが、4Uの音楽は「若いガールズロックバンドのスピリットそのもの」だという理解でいます。基本はポップもしくはストレートなんだけれど、時々アイロニックあるいはシニカルな一面が顔を出すというところに、ティーンらしさが宿っていると思うということです。

 このラインナップで特に好きなのは「Lucky☆Lucky」(上に埋め込んだ試聴動画の2曲目)で、この曲には先に説明したような二面性がわかりやすく落とし込まれていると思います。歌詞通り"等身大"の素直なパートと、デタラメな"真理(ほんもの)"を認めるひねくれたパートが交互に顔を出し、その都度曲調も変化するというのは、ガールズ×ロックのケミストリーの好例だという認識。



 こうしてふれておいてなんですが、本作にはこれらの過去曲は収録されていません。全て新曲+ドラマトラックという攻めた構成なので、4Uの音楽世界を拡充する作品として意義のあるリリースではないでしょうか。

 リズムゲーム部の完全リニューアルでますます勢い付いている『ナナシス』ですが、その根幹をなすのは楽曲のクオリティの高さであるということはこれまでにも語ってきました。当然今作にも大いに期待を寄せていたので、どんな仕上がりとなっているのか見ていくとしましょう。

 なお、以降で比較のために過去曲の名前を出すことがありますが、曲名をフルで書くと文字数を食ってしまうので略して書きますね。通りの良い共通略称があるのかもしれませんが、よく知らないので自分なりの略し方ですみません。


01. メロディーフラッグ

 幕開けを飾るのは、吹き抜ける風のように爽やかなロックナンバーです。『ナナシス』の楽曲らしさはあるとすぐに思いましたが、4Uに限れば今までにありそうでなかったタイプの曲だという気がします。

 「TOT?」や「L☆L」系のひねったトラックでないことは瞭然ですが、同じストレート系の楽曲でも片想いの「愛4U」や友情の「ハロマイ」;言わばティーンらしい切なさを伴ったものとは異なり、この「メロディーフラッグ」は自分達の精神性に向き合った上での未来志向ナンバーなので、端的に言えば「少し大人になった4Uの曲」だという感想を持ちました。

 揺るぎないポジティブネスで一本筋を通すアレンジというのは何気に初ではないでしょうか。歌詞の内容と編曲の話を混在させて書いているので共感を得られにくいかもしれませんが、この曲が持っている清々しさに4Uの確かな進化を見たということです。


 歌詞で好きなのは1番Bの"管制塔"のくだり。アレンジ面ではベースがどこを取ってもひたすらに格好良くて痺れる点と、2番A頭の落ちの部分で微かに聴こえるやわらかい質感のシンセ?の音によるアクセント、そしてそこから煌くようなギターが登場するというエモーショナルさにツボをつかれました。

 しかし僕がこの曲でいちばん評価しているのはメロディです。タイトルに冠しているだけはあると思います。Aメロはリズミカルながらもベースが映えるような静かな美しさもあって大好きですし、一転して弾ける旋律のBはガールズらしい躍動感に満ちているのが良い。

 そしてサビメロに宿っているポップさ/キャッチーさは、わかりやすく良い曲だと示すのに十分な機能を果たしているので、一曲目にはぴったりのつかみだと思います。緩急のあるメロを持つCも疾走感を生むのに一役買っていて、4Uの勢いを感じずにはいられませんね。


02. Crazy Girl's Beat

 ややダーティーなリピートを軸に"Crazy girl's beat"が連呼されるイントロ。これもまた4Uの新機軸だなという感じです。ロック魂があらわというか、歌詞の内容的に「大人になった自分」の歌だと思うので、「音楽的にも剥き出し(汚さも含めてという意味)でいこう」というアレンジの詰め方があったように妄想出来ます。

 「大人」を示す境界線として歌詞に登場するのは"二十歳"("Twenty")ですが、年齢に絡む表現の部分ではとりわけ2番Bの歌詞が印象に残りました。"大人びてた四組の子も/遠目に見てたお姉さんも/家に帰れば六歳児よ"。こういう現実感も「剥き出し」だと思う所以。


 アレンジで特筆したいのは、2番後・間奏部の惚れ惚れするようなガチ演奏です。シンプルに「めちゃくちゃ格好良い!」と言うほかない。公式サイトの4Uの紹介文に「16歳とは思えない演奏力」という文言がありますが、作中設定に倣って実際にこれを16歳の女の子達が奏でていると考えると、そりゃ注目されるのも当然だわという気になりますね。

 跳ねたドラムのスピード感も地味にこの曲の魅力を支えていると思いますが、最後に"セクシーランジェリーよ"のコール&レスポンスで曲が閉じられていくことも加味すると、ウメとエモコはともかくヒナには似合うイメージが思い浮かばなくて少し面白かったです。笑


03. ROCKな☆アタシ

 本作中でいちばん気にった曲を挙げろと言われればこの「ROCKな☆アタシ」を推します。これぞロックと表現するのがいちばんしっくりくるような歌詞、メロディ、アレンジで、ロックバンド・4Uのエッセンスが凝縮されたナンバーだと言えるでしょう。

 続く04.がエモコメイン曲/05.がヒナメイン曲であることに加え、歌詞に"キャンキャン"が登場するので、この曲はウメのメイン曲という理解でいいと思います。『音楽ナタリー』で読めるインタビューの中でも、山下さんが「ソロ曲っぽい」と発言していますしね。


 イントロ~Aメロは、いきなり感覚的な説明で恐縮ですがアニメ作品のOP曲っぽさがあると思いました。具体的に何かに似ているという意味ではなく、イントロの力強いドラムとエモいギターが目立つパートにはタイトルロゴが似合いそうで、レイジーでセクシーなAメロ部ではメインキャラが4人ぐらい紹介されていそうな雰囲気を感じたのでこの表現です。

 僕の頭の中ではロゴにかかるエフェクトとか、キャラの歩き方とカメラワークとかまで浮かんでいるのですが、これを直接お見せ出来ないのがもどかしい。笑 とりあえずここでは「リードトラックとしての資質を備えていると思った」ということだけでも伝われば御の字かな。

 Bメロはとても4Uっぽい旋律だと形容出来ます。「TOT?」や「L☆L」にも見られるようなアイロニックなメロディ。歌詞も含めると2番が好きで丸々引用しますが、"お尻ぺんぺんね/Pen is... I'm fine, thanks!!/おキニの英語フレーズ/細かいことは知らんけど/ちょっと面倒くさいの挨拶が"というフレーズは実にウメっぽいと思いました。2034年のJKらしいかと言ったらクエスチョンですが。笑


 サビには「ガールズロックの様式美」がありこれまた好みです。これは僕自身が上手く説明出来ないため表現としては独り善がりなのですが、(僕が今までに聴いたことのある)ガールズバンドの楽曲が持っている要素を仕分けて、ある程度の共通性を持つものだけを再抽選した時に、改めて浮かび上がってくるような普遍的な魅力のことを指しています。コードやリズムなどの音楽的な面だけならまだしも、精神性まで反映させているので共感を得られるかは微妙な代物。

 何だか煙に巻くような文章になってしまいましたが、歌詞の"だってRockなアタシ/走り気味のテンポが好きなの"とか"もっとキュートな感じ?"とかの部分には、ウメにも彼女なりのロックの美学があるんだなと共感を覚えることが出来るので、ここで僕が言わんとしていることに近いものが反映されている気がします。

 …これだけだとサビの魅力が何も伝わっていない気がして不安なので、共感を得られそうな点を補足しますと、本作を初めて通して聴いた時にいちばん印象に残ったのはここのサビメロだったので、非常にキャッチーだということは間違いないと思います。わかりやすさがロックでは正義の場合も多いですからね。

 また、2番サビは終盤でいつの間にかCメロにシフトしているところが技巧的で素晴らしいです。Cとすることに納得がいかなければ、2番サビは終わりまでが1番やラスサビのものよりも長くなっていると表現してもいいのですが、"ガラスの靴にも憧れてる"のところで「おっ?」と思わせるような構成に賞賛を送りたいということです。


04. 青空Emotion

 エモコメインボーカル曲。だけあって演奏としてはベースが最も素敵ですし、歌詞の内容もベースに寄り添ったものなので、まさに「フォー・ベーシスト」のトラックだと言えるでしょう。

 ドラムから言及を始めている箇所ですが、"キック・スネア・ハイハットからストーリー/見つけ出したら 次は私のベース"という歌詞には、きちんと「バンドの中のベース」という役割がふられているとわかるので好感が持てます。敢えて他の楽器にも言及しているのが良いよね。

 このパートは歌詞に合わせて演奏が展開していくところにも遊び心が感じられます。"ちょっと意地悪が趣味なの スラッピング"からのチョッパーは、思わずエモコ様に平伏したくなるほどにクール。笑


 唐突にキャラ語りをしますが、僕は4Uの中ではエモコがいちばん好きです。最初は毒舌がキツ過ぎて寧ろ嫌いだったんですが、段々とそれが癖になってくるというか、「次はどんな斬新な表現で罵倒してくるのか」というのがいつの間にか楽しみに。公開されたばかりのEPISODE.3.0でも、「毛虫」のたとえはエッジが効いていて好きでした。

 「青空Emotion」はそんなエモコの性格からしたら怪し過ぎるほどに綺麗なナンバーですが、こういう一面も悪くはないなと思いますね。貴重な瞬間ではあるけれど優しい時もありますから。そういう意味では写真のような曲だと言えるかも。「エモコ」というロックをやることを宿命付けられたような名前を持つ毒舌ベース少女の、根源を覗けたような気になりました。


05. パフェ・デ・ラブソング

 ヒナメインボーカル曲。納得のスイーツソングで、ヒナの甘い歌声を全面に押し出したキュートなアレンジとなっています。演奏の基本はロックなので4Uらしさは健在ですが、可愛らしい音による装飾や台詞が入るような自由さは新路線と表するしかないでしょう。

 こう書くと語弊があるかもしれませんが、全体的にはアイドルソングのような印象を受けます。特にAメロの"スポンジ"や"お祭り"のコーラスなんかはモロですよね。…だがそれがいい。笑 ヒナがボーカルならこういう曲でも許されるというのが、バンドの可能性そのものを示唆していて今後にも期待が持てます。


 歌詞も素敵で、"一個の味" → "1.5人前" → "二杯目" → "3つの相性"と数字が増えることで、或いは"パフェ"という完璧のスイーツにたとえられることで、4Uというスリーピースバンドの魅力が鮮やかに描かれています。流石バンドリーダーの曲。台詞部も面白く、特にエモコが「一粒…」とヒナ鳥に呆れるようなトーンでつぶやくのが好きです。

 メロディもなかなか味があって良いと思います。Aメロはコーラスも含めてガーリーなところが、Bメロはドラムと重なる部分の勢いが、サビは1番なら"一個の"や"キュートな"の部分の耳に残る歌い方がそれぞれツボでした。


06. プレゼント・フォー・ユー

 ラストに表題曲です。タイトルには勿論「あなたへの贈り物」という意味合いもある(=このディスク自体のこと)のでしょうが、帯にも書いてある通り「ロックバンド「4U」の"Present"(ルビ:現在)、あなたへ」なので、マルチミーニングですかね。

 この曲では3人ともにメインボーカルを務めていて、歌詞の内容も4Uについてという感じなので、まさにバンドを代表するナンバーだと言えます。口では色々と言いつつもしっかり感謝の気持ちを持ってお互いを認めているという、4Uの絆を再認識出来ました。"「ありがとう」とか/「おめでとう」じゃ/伝えきれない感謝の気持ちは"だからこそ、歌にのせて届けるのだと。


 この曲には「ロックアルバムのトリを飾るナンバーらしさ」がきちんと宿っていると思いました。それは単純に「凄く良い曲」だという身も蓋もない言葉で形容されるものです。聴けばそれだけで理解が出来、色々と言葉を尽くして感想を書こうとすると逆に嘘臭くなってしまうような気がする、素直な名曲だという意味。

 野暮ですが具体的にいくつかの要素を挙げると、たとえばイントロから鳴っているキーボードが0:08から奏で出すフレーズのエンディング感とか、サビのボーカルが重なる部分("心繋げて歩いた時間を"のところ)で醸されている身体が密着しそうなボーカルの距離感(パン位置など)とかには、「終わり良ければ全て良し」の概念が体現されているように感じるので、これは僕の中ではロックアルバムのラストらしい要素のひとつだという認識です。

 …はい、こうして分析的に書くと興醒めの感が出るのはなんとなく察していただけたかと思います。こういう細かいことは抜きにして、この曲を聴いた時に覚えた「泣きたくなるのと同時に嬉しくなるような感情」を素直に受け入れ、「名曲」と締め括るのがいちばんですね。


07. カリフォルニア・ガールズ

 ドラマトラックです。収録時間は16:52。タイトルを見た時は「ビーチボーイズか?」と思ったのですが、『ナタリー』を見たら本当にそこから来ていたようで納得です。笑

 楽曲と違ってドラマトラックは内容を書くとそれがそのままネタバレとなってしまうため、ここでストーリーや感想を書くとことは避けておきますが、「ジャケ写の裏にあるお話」だということだけ紹介しておきます。

 余談ですが、カリフォルニアは大学生の頃の短期留学先だったので、西海岸の素敵な空気感は肌で直接知っているつもりです。ウメやヒナがはしゃいでしまうのも無理もないと思う。夏でも湿度が低く快適だったのが個人的にはありがたかったのですが、楽器を扱う人であれば湿度は気になるポイントだよなということも思い出しました。



 以上、全6曲(+ドラマトラック1つ)でした。最初に通して聴いた時は03.「ROCKな☆アタシ」以外はそこまで印象に残らなかったのですが、『ナナシス』楽曲は繰り返し聴くことで味が出てくるパターンもままあるので、繰り返し流していたらいつのまにか全曲好きになっていました。

 ロックバンドによるアルバムであるということにも疑いの余地はありません。歌詞には反骨精神がある、或いはバンドにフォーカスしているものが多いので、それだけでもロックバンドの精神は感じることが出来ますし、アレンジに関してもバンドサウンド以外の音はアクセント程度にしか使われていないので、他の『ナナシス』楽曲との差別化も図られていると思います。メロディは可愛い担当というか、ガールズらしいポップセンスに満ちていて好みでした。


 おそらく年内にはもう『ナナシス』関連の新譜は出ない(クリスマスに突如配信とかはあるかもですが)と思いますが、こうして2017年にも名曲が増えたので嬉しい限りです。レビューし損ねていますが、特にセブンスシスターズの『WORLD'S END』(2017)とc/wの「PUNCH'D RANKER」は両曲とも非常に気に入ったので、今年の内に2017年版のアニソンよろず記事を書いてその中で紹介出来ればと思っています。

 良い機会なのでついでに書きますが、リズムゲームの完全リニューアルも喜ばしいですよね。まだ慣れていない(特にスカイと、ロングのスライドに)ので要練習ですが楽しいですし、曲毎に判定基準が異なるという狂気の設定がなくなっただけでも助かります。笑

 達成目標とスカウト進捗がリセットされているのは面倒ですが再び報酬が手に入るのはありがたいですし、ログボでP確チケが貰えたのも嬉しかったです。ちなみに僕はモモカ推しなので、欲しかったNDシリーズのと交換出来て満足しています。