(関西弁の会話をそのまま記載していますのでご了承ください。なお、文中≪≫は面談中の私の「心」の声です。)

 

●ホストになりたい元ヤン ◇29歳 男性

 耳にピアスの跡があり、一見短髪の海老蔵風のイケメン男性。ただ、席に座るなり私の顔をガン見、あごを突き出しほとんど瞬きせずに話し始める。

 

 「おっちゃんな(私のこと)、俺、いろいろ応募しているんやけどなかなか採用されへんのや、なんで採用されへんのかわからへん。はよ、お金稼ぎたいんで困ってるんや。ホストで稼ごうとも考えてるけど、ハローワークでどうやってさがすかわからへんし・・・」との相談

 

 ホストの仕事はハローワークでの求人募集はない。応募したければ新地か心斎橋あたりのホストクラブをネットで探して自分で応募するしかないことを説明

≪そんなこと、ここで相談するな≫

 採用されないことについては、面接の時、どんな態度で面接官と話しをしているのかと尋ねると、ほぼ今の面談状態と同じとのこと。それでは採用されないと説明。

   言葉遣い・姿勢・視線・表情・服装など面接時の注意点などを丁寧に説明。「やってみるわ」といって離窓したが、一度染み付いた立ち居振る舞いは、すぐに改めるのは難しいはず。彼は今ごろどうしているのか・・・。

 

 

 

 

 

 

●ハロワはキャバクラ?  ◇50歳代 男性◇

 ハローワークの職業相談は、総合受付で番号札を発券してもらい、番号札順に番号で各相談窓口から呼ばれる。勤務していたハローワークの窓口は15席くらいあったので、誰に呼ばれるかはわからない。相談窓口には、30歳代の女性から、60歳を超えた男性までの相談員が応対している。通常は番号を呼ばれたら、その相談窓口に行って職業相談や紹介状の発行を受けるのである。

 

  ところが、たまに、特定の相談窓口の女性と単に話をしたいだけに来所するおじさんがいる。
男性相談員や年配の(失礼)女性相談員から自分の番号が呼ばれると無視し、もう一度番号札をとりなおして、つぎのチャンス(?)を待つという具合である。

 

 

  当然、仕事を探す気などサラサラない。タダで1時間ほど、女性に相手をしてもらえるのはうれしいようだが、本当に仕事をさがしに来所している人たちにとってはいい迷惑である。こういう人は出禁(出入禁止)にしたいが、公的機関のため法的に対応できないのが歯がゆいところである。

 

 その後、統括責任者の指示で、この人が来たら、総合窓口で受付番号を控えてもらい、相談窓口には番号指定で呼び出す機能があったので、その機能を利用して男性相談員が応対するように変えたところ来なくなった。めでたし、めでたし。

 

 

 

 

はじめまして

  元ハローワークの職業相談員として、窓口に来られた「くせの強い」人たちへの思い出を、前職で人事部に勤務していた頃の思い出も交えて、ブログにまとめていきます。

 そこには涙あり、笑いあり、怒りあり、喜びありの様々な人生があります。

(詳しい、いきさつは「プロフィール」をごらんください。)

 

それでは 第一話のスタートです。

(なお 文中《 》は面談中の私の「心」の声です。)

 

●ハロワ任侠伝 就活番外地 ◇70歳代 男性 

 相談席にすわるなり昔話を始める。高年齢者のいつもの特徴なので、しばらく傾聴することにしたが、話の内容がちょっと普通の相談者とちがっていた。

 

「再婚した子連れの女房には苦労をかけた」

「若い衆にはいろいろ教えてやった。知ってると思うけど○○組の連中には苦労させられた」《知りません!》

「もう若いころみたいなやんちゃなことをしたらあかんことはよくわかってる」 ・・・などなど

 よくみると、左手の小指と薬指の先がない。そのあと自分が何をしゃべったかよく覚えていない。

 もし、なにか仕事を紹介してくれと言われたらどうしようと心配していたが、もともと仕事をさがす意思もなく、話をしたいだけから来所したみたいなので話を聞くだけで面談は終了。

 ただ、面談が終わるときは通常、「がんばってください」とか「失礼します」とか軽く挨拶するのだが、この時は、直立不動で

「ご苦労様でした!」 

と大き目の声で言ってしまった。