今日、経鼻の十二指腸カテーテルが閉塞したため、入れ替えを行ったところ、経鼻でチューブが入らなくなり、経口に変わった。

経鼻では副鼻腔炎に悪いし、経口では一回り大きいチューブを使えて詰まりにくいので、経口になるのは良いのではないかと思う。

 

また、肝機能障害の値が少し悪くなったため、消化用の漢方(六君子湯)をやめることになった。(五苓散がダメにならなくて良かった。)

ミニリンメルトは相変わらず1日2回のペース。

 

交通事故後、1年4か月で意識が戻ったというYoutube動画を見たり、遷延性意識障害とその介護の現状のYoutube動画を見る。

意識がないと思われていたが意識があったという話だ。

 

先日手紙を書いた時にも言及したが、そうちゃんもそのような「閉じ込め症候群」になっている可能性はある。

 

意識が戻ったというのは、遷延性意識障害の方であり、脳死の方ではない。

 

日本臓器移植ネットワークに、「脳死とは」という説明ページがあり、そこにはこう記されている。

「脳死とは、脳幹を含む、脳全体の機能が失われた状態です。

回復する可能性はなく元に戻ることはありません。

薬剤や人工呼吸器等によってしばらくは心臓を動かし続けることはできますが、やがて(多くは数日以内)心臓も停止します(心停止までに、長時間を要する例も報告されています)。

植物状態は、脳幹の機能が残っていて、自ら呼吸できることが多く、回復する可能性もあります。脳死と植物状態は、全く違うものです。」

 

脳死は回復する可能性がないとされ、いずれ心停止するとされている。

そうちゃんは脳死であり、「(心停止までに、長時間を要する例)」に当たるのか、あるいは植物状態であり、「脳幹の機能が残っていて、自ら呼吸できることが多く」(つまり、自発呼吸がなくても植物状態である可能性がある)に当たるのか。

何ら反射すら見せないそうちゃんは脳死に近いと思われるが、脳幹は完全に死んでいないとすると、遷延性意識障害に当たるのかもしれない。

 

脳死判定を行うつもりはなくても、脳波測定はやってみようという気持ちになった。

 

翌日、気管切開の手術を行えることとなり、事前説明を受けるため、両親揃って病院に赴いた。

そうちゃんが読書感想文を書いて貯めた自分のお小遣いで買って、チッチと同じくらい気に入っていたクロ(青いクジラのぬいぐるみ)を持って行き、事前説明の前に記念撮影をした。

主治医曰く、気管切開の手術にほとんど危険性はないとのことだったが、侵襲的な手術であることには変わりないので、今の我々とそうちゃんを写真に収めたかった。

 

こんな状況ではあるが、私は笑顔を心がけた。

結果的には急変によって取り返しのつかない状態になってしまったが、そうちゃんは最初の手術も、その後の急変時の措置も、補助循環装置からの離脱手術も、閉胸の手術も、全部乗り越えて今生きていてくれているのだ。

失ったものを嘆くばかりではなく、今なお持っているものに光を見出さなければ、子どもの頑張りを認めないみたいではないか。

 

さて、気管切開の手術の説明は、はじめに耳鼻咽喉科から行われた。

その説明は、ちょうちょのような甲状腺を正中で切る、切開の具体的な内容と、治療の効果として、手術後は比較的安全な気道確保ができるため、一般病棟や在宅等による看護が可能となるといったものだった。

 

正直なところ、最近までも副鼻腔炎から広がった炎症など様々な課題があり、余命宣告もされている中、在宅看護という話が飛躍しすぎていて戸惑ってしまう。

 

続いて、麻酔科から説明を受ける。

麻酔科の医師からの説明は、手術における合併症について、リスクがあることを我々に認識させて同意を得るものだった。

そのため、気管切開後に挿管を入れ替える際に、脳にダメージが行く可能性があることまでしっかり認識をさせてくる。

それはそれで理解できるが、手術が予定通り順調にいけばそのダメージは生じない、そしてそのリスクも少ないとの理解で良いか確認したのだが、こちらの確認の意図がわからないのか、ダメージが生じるリスクがあるとの一点張りである。

そうちゃんの脳幹はぎりぎりのところで呼吸を保てていると思っているので、ダメージが生じるのであれば慎重な検討が必要だ。

そして、もしそれくらいリスクを認識させるべきものだとすると、耳鼻咽喉科の説明との乖離が大きく、一緒に手術に入る耳鼻咽喉科がそうちゃんの重篤な状態を認識共有できていないのではないかと不安になった。

 

面談の後に、主治医にこちらの違和感を伝え、また、前回の手術まで担当してくださったH医師(部長なので恐縮だが)に手術に入っていただけないかお願いしたい旨を伝えると、一旦、明日の手術はキャンセルとなり、その枠で改めての説明の場が設けられることとなった。

 

翌日。H医師と耳鼻咽喉科からも部長が出席した。H医師は、こちらの質問の意図を理解し、挿管変更時の対応がスムーズならダメージはないこと、難しくはない対応なので、ダメージが生じないようにしっかり行うと言ってくれ安心できた。

前回の説明におけるこちらの違和感も再度伝えたので、耳鼻咽喉科の部長にも、そうちゃんの状態を認識してもらえたと思う。

何かトラブルが起きてしまった場合にも、手は尽くしたと思えるようにしておきたい。

 

穿刺培養検査では翌日にグラム陽性球菌が検出され、すぐにバンコマイシンの投与が始められた。

痰培養検査では緑膿菌が検出され、モダシンという抗菌薬も併用することになった。

 

主治医からは、副鼻腔炎の発生原因として、

・副鼻腔炎の既往があったこと

・経口挿管チューブや経鼻栄養チューブで鼻腔が閉塞されることで、副鼻腔から鼻腔への通りが悪く副鼻腔に膿が溜まりやすい状況

などが考えられるとされた。

 

肺炎に対しても経口挿管は発生因子にもなるということで、気管切開や胃瘻についての選択肢が示された。

 

それまで、そうちゃんのような重篤な方の画像や動画を見ると、気管切開は皆行っていて、少なくとも気管切開は避けられないと思っていたし、副鼻腔炎の緩和につながる可能性があるとすれば実施するしかないだろう。

早期にお願いをしたら、後で看護師さんから「気切(きせつ)の判断、早かったですね」と言われた。

多くの家族は、子どもに更に傷をつけることになるので抵抗があるのだと思う。

気管切開すると声が出せなくなる、という情報もある。

しかし、声帯を傷つけるわけではないので、閉じればまた声を出すことができるし、話ができるカニューレもあるそうだ。

結局のところ、現状会話ができる状態の子の親が迷うことであって、そうちゃんのような重篤患者にすぐに関係することではない。

 

一時問題であった徐脈の関係、昨日は50台前半に落ち込んでヒヤッとしたが、冷えた赤血球を追加した影響等により体温が35.2℃まで下がったためとのこと。

(体温と心拍数は概ね連動する)

 

本日は概ね60台をキープできており、そろそろ抜去しないと電池が切れると言われ続けていたペースメーカーを抜去することとなった。

直前の説明で、心臓にくっついてしまっていて引っ張っても取れず、ワイヤーを切らざるを得ない場合もある(その場合、リードの発熱や、不必要な心筋刺激の発生等のおそれがありMRI検査が行えない)と聞いていたが、するっと抜けたそうで安堵した。

 

あと、そうちゃんに手紙を書いた。

そうちゃんから手紙をもらっていたことについて、妻は応援メッセージの中でお礼を言っていたけど、自分はお礼してなかったなと思ったのと、やはり、音楽療法やクラスメートからの手紙を読んであげてから徐脈が改善したことが偶然ではないかもしれず、耳は聞こえている可能性があるので、そうちゃんに今の状況を説明してあげる必要があると思ったからだ。

しっかりお礼をしつつ、励ます内容にして読んであげた。

 

おでこ(前額部)と頭頂部の腫脹が何なのか調べるために、昨日、CT検査を行った。

 

早速、面談時にCT検査の結果を聞いたのだが、

「帽状腱膜下膿瘍、骨髄炎、副鼻腔炎、髄膜炎・硬膜下膿瘍の可能性」

との所見だった。

なんか結構おおごとじゃないか? と、経過説明資料に目がテンである。

 

更なる説明では、

・左前額部と頭頂部の腫瘤は感染が疑われ、膨隆部直下に骨破壊が見られ、骨髄炎も疑われる

・副鼻腔炎の所見があり、前額部の腫瘤に関連が疑われる

・硬膜下や髄膜も厚くなっており、髄膜炎や硬膜下膿瘍の可能性がある

とのことである。

CT画像を見せてもらうと、おでこの骨に穴ができてしまっている。

脳との明らかな交通ははっきりしないとのことだが、脳を覆っている膜が、硬膜、くも膜、軟膜とあるので、今のところは交通していない模様。

 

単なるたんこぶと思っていたものは、副鼻腔炎で貯留した菌が悪さをして、また、副鼻腔から鼻腔に排出するルートが詰まってしまったのか、行き場を失い、おでこに進出してきたと考えられるそうだ。

そういえば、そうちゃんは顔の(副鼻腔が下にある)ほっぺた辺りが赤くなることがちょくちょく見られていたのだが、これも副鼻腔炎のせいだった可能性が高い。

 

副鼻腔炎をもっと早く疑うことができればこんな状態までにはならなかったのではないか、と自責の念が湧く。

そうちゃんは夏にも中耳炎で一度手術を延期することになったし、鼻腔関係も弱いところがあったのだが、ここにきて命の危機に関係してくるとは…。

 

それから、面談はこれだけで終わらず、右上下葉、左下葉に肺炎を疑う所見もあり、炎症反応の値(CRP8.0、白血球15200)も上昇していた。

 

腫脹の菌も踏まえて、抗菌薬の実施を検討する方向となり、菌の同定のため、本日、前額部の腫瘤穿刺(針で取れた腫瘤内容物を培養し、菌を調べる)を行うことになった。

 

ミニリンメルトは変わらず朝と夜間の1日2回ペースである等、他の全身状態に問題はなかった。

良くもなっていないが、安定することも大事と思ってきたところ、新たな悪化症状が積み上がり気落ちしそうになる。

そうちゃんを励ますには、我々両親が弱気になってはいけないので、前向きに切り替えるよう意識したが、油断するとなぜ気付かなかったのかと思ってしまい、この日は少し難しかった。

 

急変後から1ヶ月を過ぎた。

自発呼吸は戻らず、瞳孔も5~6mmに散大、対光反射なし、自発的な動作は反射を含めて見られていない。

主治医との面談時に、そうちゃんの状況はほぼ脳死ではないか、といった話を振ると否定されなかった。

我々に臓器移植の意思はなく、無呼吸テストのような過酷な脳死判定テストをする気はないので、厳密には該当することはないが、そうちゃんもいずれ長期脳死と考えられる症例に加わるのだろうか。

 

そうちゃんのおでこのたんこぶは、その後も張りが大きくなり、また、頭頂部にもたんこぶが出てきて、どこかにぶつけたという理由は撤回され、脳神経外科医に確認した結果、頭蓋内圧亢進によるものではないかとの話になった。
頭蓋内圧が高いことは、CT画像を見たときに、脳がむくんで頭蓋骨にぴったりくっついていたのを見た時に認識していたことだが、その後改善していないことに驚いた。
もしかしたら、当時よりも悪化しているのかもしれない。そうなれば、現状よりも脳機能へのダメージが拡大するおそれもある。

何か改善の手立てがなかったのだろうかと思うが、敗血症や肺炎、徐脈のほうに意識が持って行かれていたのでやむを得ない。
早速、インターネットで調べていくと、脳浮腫に対しては漢方の五苓散が効果的であり、また、30°程度の頭部挙上が良いとの情報が得られた。

当時に見つけたインターネット記事のリンクを参考までに残しておく。

五苓散のアクアポリンを介した水分代謝調整メカニズム

五苓散による慢性硬膜下血腫治療の薬理学的合理性

脳神経外科領域における五苓散の応用について

くも膜下出血術後管理における五苓散の有用性

脳浮腫に対する五苓散の可能性

くも膜下出血術後管理における漢方薬の有用性

PRES に伴う脳浮腫に対して五苓散を使用した 1 例


早速翌日に、主治医に五苓散が使えないか相談し、一旦は(できるけれども、効果はあまりないとの)否定的なコメントが返ってきたが、他に代替的な措置も提案されなかったため、効果があるとの論文もあるので試したいと言って、結果2日後から処方してもらえることとなった。

その後、脳浮腫は若干改善したので効果はあったのではないか。
漢方薬は漢方に詳しい医師がいなければ選択されないので、提案してみたのは良かったと思う。

上記リンクのとおり、五苓散はアクアポリンを介して水分代謝調節作用と抗炎症作用をもち、脳浮腫だけでなく脳出血や脳内血腫にも効果がある可能性があるので参考にされたい。