翌日、気管切開の手術を行えることとなり、事前説明を受けるため、両親揃って病院に赴いた。

そうちゃんが読書感想文を書いて貯めた自分のお小遣いで買って、チッチと同じくらい気に入っていたクロ(青いクジラのぬいぐるみ)を持って行き、事前説明の前に記念撮影をした。

主治医曰く、気管切開の手術にほとんど危険性はないとのことだったが、侵襲的な手術であることには変わりないので、今の我々とそうちゃんを写真に収めたかった。

 

こんな状況ではあるが、私は笑顔を心がけた。

結果的には急変によって取り返しのつかない状態になってしまったが、そうちゃんは最初の手術も、その後の急変時の措置も、補助循環装置からの離脱手術も、閉胸の手術も、全部乗り越えて今生きていてくれているのだ。

失ったものを嘆くばかりではなく、今なお持っているものに光を見出さなければ、子どもの頑張りを認めないみたいではないか。

 

さて、気管切開の手術の説明は、はじめに耳鼻咽喉科から行われた。

その説明は、ちょうちょのような甲状腺を正中で切る、切開の具体的な内容と、治療の効果として、手術後は比較的安全な気道確保ができるため、一般病棟や在宅等による看護が可能となるといったものだった。

 

正直なところ、最近までも副鼻腔炎から広がった炎症など様々な課題があり、余命宣告もされている中、在宅看護という話が飛躍しすぎていて戸惑ってしまう。

 

続いて、麻酔科から説明を受ける。

麻酔科の医師からの説明は、手術における合併症について、リスクがあることを我々に認識させて同意を得るものだった。

そのため、気管切開後に挿管を入れ替える際に、脳にダメージが行く可能性があることまでしっかり認識をさせてくる。

それはそれで理解できるが、手術が予定通り順調にいけばそのダメージは生じない、そしてそのリスクも少ないとの理解で良いか確認したのだが、こちらの確認の意図がわからないのか、ダメージが生じるリスクがあるとの一点張りである。

そうちゃんの脳幹はぎりぎりのところで呼吸を保てていると思っているので、ダメージが生じるのであれば慎重な検討が必要だ。

そして、もしそれくらいリスクを認識させるべきものだとすると、耳鼻咽喉科の説明との乖離が大きく、一緒に手術に入る耳鼻咽喉科がそうちゃんの重篤な状態を認識共有できていないのではないかと不安になった。

 

面談の後に、主治医にこちらの違和感を伝え、また、前回の手術まで担当してくださったH医師(部長なので恐縮だが)に手術に入っていただけないかお願いしたい旨を伝えると、一旦、明日の手術はキャンセルとなり、その枠で改めての説明の場が設けられることとなった。

 

翌日。H医師と耳鼻咽喉科からも部長が出席した。H医師は、こちらの質問の意図を理解し、挿管変更時の対応がスムーズならダメージはないこと、難しくはない対応なので、ダメージが生じないようにしっかり行うと言ってくれ安心できた。

前回の説明におけるこちらの違和感も再度伝えたので、耳鼻咽喉科の部長にも、そうちゃんの状態を認識してもらえたと思う。

何かトラブルが起きてしまった場合にも、手は尽くしたと思えるようにしておきたい。