和辻哲郎『風土』は気候とそこで育まれる思想・文化の関係性について述べたものであるが、
地理・歴史の知識が頭の中で有機的に繋がるとても面白い本だ。
ハイデガーは『存在と時間』で「時間ー人間」の関係性について論じたが、空間についてはそれほど触れていない。
『風土』ではこれを補完するように「空間ー人間」の関係性について論じている。
また環境が人間の精神を規定すると論じている点で、マルクスの唯物史観とも通ずるところがあるように思う。
簡単にまとめると下記のようになる。

モンスーン型:
高温多湿で自然災害が多い。日本・中国・インドが該当する。
ケッペンの気候区分でいうとおそらくAm・Cfaが該当する。
台風・洪水など自然の脅威が多いが、土壌が肥沃で海産物も良くとれるため、
辛抱強く耐えていれば自然から受ける恩恵も大きい。
このような土地では忍耐・受容が中心となる考え方が発達する。
仏教はまさしくそうで、生老病死の苦しみがあり、諦めて受け入れることが重要であると説く。
沙漠型:
主に中央アジア~西アジア(中東地域)が該当する。ケッペンの気候区分ではBw・Bsが該当。
年中乾燥しており農作物が取れず、人類にとって非常に厳しい気候である。自然の脅威がある割に恩恵は少ない。
オアシスの周辺など住める地域も限られ、財産や土地を巡って頻繁に争いがおこる。
このような地域では好戦的な思想が発達する。部族単位で一致団結する必要があるため、全体主義的な点も特徴である。
ユダヤ教・イスラム教が該当する。
この2宗教は第二次大戦後も中東戦争を巻き、また令和5年からもイスラエル・パレスチナの軍事衝突が起こっている。
牧場型:
主にヨーロッパ地域、特に地中海沿岸が該当する。
温暖な気候で夏場は乾燥している。モンスーン型に比べると自然災害は比較的少ない。
ケッペンの気候区分ではCs・Cfbが該当するが、特にCs気候が念頭に置かれていると思われる。
自然の脅威は少ないが、代わりに土地をしっかり整備しないと作物が育たない。
地中海は河川からの栄養物の流入が少なく、海産物もとれない(この点はやや疑念があるが)。
よって、人間が自然に積極的に介入していくことになり、合理的な思想が発展する。
ギリシャ哲学、それを受け継いだ近代哲学が栄えた。宗教ではキリスト教が支配的である。
上記では特に
モンスーン型:人間が自然に支配される ⇔ 牧場型:人間が自然を支配する
という対比も存在する。
参考文献・動画
・風土: 人間学的考察, 和辻哲郎 著, 岩波文庫
・倫理用語集, 濱井 修 監修, 山川出版社
・【高校生のための倫理】和辻哲郎(日本思想), miniいけ先生の倫政チャンネル, Youtube
・瀬川&伊藤のSuper Geography COLLECTION 01 大学入試 カラー図解 地理用語集, 瀬川聡ら 著, KADOKAWA