声迷線の彷彿線 どこ行き? -15ページ目

微炎



かじかむ指の隙間に
微かに滲む光

降り積もる雪は
寂しさを
覆い隠す事は出来ず

抗えない涙の波に
揺れる

瞳の奥に
在るはずの情熱の炎に身を宿して

燃え尽きてしまうのは容易いが

腕を伸ばし
歩き出すのを
見つめてくれる
貴女がいるから

この冬も
ゆっくりと
乗り越えて行こうと
思う

こいのこと




それは
甘いようで
苦いような

困ったようで
嬉しいような

痛いようで
心地よいような

そんな物で

歩み寄ろうとすれば
どこかへ
すり抜けて

ふとした瞬間に
時折
訪れる

それでもって
ない交ぜになる
感情を抱かせる

そんな物なんだ
いつだって

線香花火


夜も更けて
季節も老けて
暑い風が
終わりに
近づく頃の憧憬

紫陽花をあしらった
白い浴衣の
よく似合う
黒髪の女が独り

波の調べに
耳傾けながら
鼻歌混じりの
笑み浮かべ

誰かれについての
恨み辛みを
か細い声で
奏でていた

しなやかな指先で
取り出した
線香花火に
火を点けて

僕においでと
手招きし
共に
楽しみましょうと
口にした

幼子の僕は
その謎めいた
綺麗さに
見とれながらも

ゆっくりと女に
招かれて
渡されたこよりに
そろそろと
火を近付ける

ぱちぱち弾く
花火の音と
静寂が当たり前の
ように
そこに在って

薄明かりの下
女は何とはなしに
こう呟く

「人の世なんて
こんな風に
儚く燃え散って逝く
物なのよ。」

「わたしも君も
心の火種が
ぽとりとね」

その寂しそうな
涙声に
僕は何も犠牲にする
事が出来ずに

只 小さな掌を
白い頬に乗せた

伝う涙が指先を
濡らし
否応の無い
悲哀が
突き抜けて
何故か嗚咽を始める
僕を

そっと
優しく抱き締めて
くれた

哀しいひと

あれから
幾多の年を重ね
女と同じ程
大人になって

あの頃の
あのひとの
無情も刹那も
受け止められるのに

今は終わった
面影に
救われずとも
憐れみと初恋を