微炎
かじかむ指の隙間に
微かに滲む光
降り積もる雪は
寂しさを
覆い隠す事は出来ず
抗えない涙の波に
揺れる
瞳の奥に
在るはずの情熱の炎に身を宿して
燃え尽きてしまうのは容易いが
腕を伸ばし
歩き出すのを
見つめてくれる
貴女がいるから
この冬も
ゆっくりと
乗り越えて行こうと
思う
こいのこと
それは
甘いようで
苦いような
困ったようで
嬉しいような
痛いようで
心地よいような
そんな物で
歩み寄ろうとすれば
どこかへ
すり抜けて
ふとした瞬間に
時折
訪れる
それでもって
ない交ぜになる
感情を抱かせる
そんな物なんだ
いつだって
線香花火
夜も更けて
季節も老けて
暑い風が
終わりに
近づく頃の憧憬
紫陽花をあしらった
白い浴衣の
よく似合う
黒髪の女が独り
波の調べに
耳傾けながら
鼻歌混じりの
笑み浮かべ
誰かれについての
恨み辛みを
か細い声で
奏でていた
しなやかな指先で
取り出した
線香花火に
火を点けて
僕においでと
手招きし
共に
楽しみましょうと
口にした
幼子の僕は
その謎めいた
綺麗さに
見とれながらも
ゆっくりと女に
招かれて
渡されたこよりに
そろそろと
火を近付ける
ぱちぱち弾く
花火の音と
静寂が当たり前の
ように
そこに在って
薄明かりの下
女は何とはなしに
こう呟く
「人の世なんて
こんな風に
儚く燃え散って逝く
物なのよ。」
「わたしも君も
心の火種が
ぽとりとね」
その寂しそうな
涙声に
僕は何も犠牲にする
事が出来ずに
只 小さな掌を
白い頬に乗せた
伝う涙が指先を
濡らし
否応の無い
悲哀が
突き抜けて
何故か嗚咽を始める
僕を
そっと
優しく抱き締めて
くれた
哀しいひと
あれから
幾多の年を重ね
女と同じ程
大人になって
あの頃の
あのひとの
無情も刹那も
受け止められるのに
今は終わった
面影に
救われずとも
憐れみと初恋を