遠近法で描く中国 -2nd Season- -61ページ目

遠近法で描く中国 -2nd Season-

片手にピストル 心に花束 唇に火の酒 背中に人生を。 

著者:東野圭吾
発行:講談社 / 講談社文庫 / 1998年
ジャンル:小説

久しぶりに書店で購入した本が、この『天空の蜂』でした。
中国に来てから、本は9割以上アマゾンで買っていて、実際書店に行くことも少なくなりました。
また、紀伊国屋書店などの大きな、また人の多い場所は、基本的にぼくは苦手なのです。
本は好きです。

今回はある御約束を実行するため、書店に立ち寄りました。
それはこれまで未体験の、東野圭吾さんの本を読むということです。
きっかけをくださったchiyamiさんに感謝します。
自分の”殻”の中にいただけでは、このタイミングで東野氏の本に出会うことはなかったでしょう。
読んだ小説の数が、年々減っているのも事実です。

さてこの本を手に入れるために書店に入って、さすが著名作家さん、多くの作品が並んでいました。
福岡へ飛ぶために来た、伊丹空港の書店で購入したのですが、まだチェック・インも搭乗手続きも済んでいません。
まさに、リムジン・バスを降りたばかり、という状況でした。
ここでも、自己の感性対時間の勝負でしたね(笑み)。

目に飛び込んできたのは、ブルーの帯に書かれた文字たちでした。
「姿なき敵が乗っ取った 自衛隊の大型ヘリが爆薬と子供を乗せて 原子力発電所の真上に 」
「10時間 極限の心理戦」
「東野圭吾が描いた最大の国家危機」

即決買い、でした。
このタイプの小説を読んだ経験としては、最近では、春江一也氏の『上海クライシス』、村上龍氏の『半島を出よ』があります。
国家的危機というテーマを描くには、それなりの小説家としての力量が問われます。
村上龍氏の作品は、流石と唸らせるものでしたが、春江一也氏の作品では、物足りなさを感じました。
さて東野圭吾氏は、どう描いてくれるのか、大変期待しました。
小説の紹介において、無粋なネタばれはしたくありませんので、その点はご理解ください。
付け加えてふと感じたことは、今回の帰国時に観た映画も水谷豊氏出演の『相棒』だったということ。
これは自分の感性が、国家規模の重大事件というものに対してアンテナを張っているのかなとも、思えるのです。

東野作品は、ぼくの期待に、2割ほどの意外性を含めて応えてくれました。
主な東野氏の作品が、殺人ものを中心とした心理ものを手掛けていることもあり、登場人物の心情の描き方が丁寧です。
いわゆるトリックといわれる部分に関しては、この作品に関してなら、ヘリコプターの構造や、防衛庁(当時)の組織、原子力発電(高速増殖炉)の知識が必要です。
その部分では、著者にアドバンテイジが発生しています。
しかし機械や組織をつくるもの、構成するものは、絶対的に人、なのです。
人の描き方、とくにこの作品では子供たちの心情の描き方が、印象に残りました。
誰しも、みないつかは子供だったのです。
この物語の、本当の加害者は誰で、被害者は誰だったのか。
また原子力発電という”夢のエネルギー”は、はたして未来の子供たちに幸せを与えるのだろうか。
そんなことを読後に一人、考えさせられる作品に出逢えたことをうれしく思います。

最後に、講談社文庫のフォント(字体)やレイアウトは、いつ読んでも苦手です。
一番好きなのは、新潮文庫、次は角川文庫、それ以外は全部苦手なのです。


参考記事「伊丹から」


生かして頂いて、ありがとう御座位ます。
最後に、あなたの貴重な"数分"を募金のために使わせてください。
☆クリック募金★
http://www.dff.jp/
http://clickbokin.ekokoro.jp/
ありがとうございます
著者:荒俣宏
発行:角川書店 / 角川文庫
ジャンル:小説 / 世界再発見
第1巻『ナナ・ヌウ』
第2巻『パリウリ』
第3巻『アルカ・ノアエ』

昭和63年初版のこの本が、簡単にアマゾンで手に入ったことにまず驚きました。
最初にこの本を手にしたのは、たぶん大学生のころだったと記憶しています。
度重なる引っ越しで何時しか手放したのでしょう。
この本の記憶がよみがえったのは、以前紹介した池澤夏樹氏の著書『ハワイイ紀行』(新潮文庫)でした。
それ自体素晴らしい本でしたが、そのハワイイ神話、フラ・ダンスの由来、そして王朝の歴史など、どれもぼくが一度目にしたことがあったのです。
それが、『地球暗黒記』によるものだと気づくまで、そう長くの時間は必要がありませんでした。
十数年前に読んだ当時、これは小説なのだという想いのほうが強く、それでも太平洋諸島の民に、楽園に、夢を見ていました。
しかし「暗黒記」と名付けられたこの本は、パラダイスの裏側を、小説という舞台を借りて、描き出します。
日本人がなぜハワイに魅せられるのかを、池澤氏とは別のアングルから捉えたものと言えるでしょう。
三巻によるこの小説は、荒俣氏が帝都物語を書き終えあたあとに手がけたと書かれています。
勿論ぼくも『帝都物語』は読みました。
映画版は観ていません。

長い時空を経て、平成19年、20年にこの本が改めて版を重ねたことに、とても興味を感じました。
ぼくが手に入れたのも、この新しく発行されたものです。
時代が、やっとこの本を必要としたのでしょうか。
この物語は、楽園・パラダイスを女子高校生”ヨーコ”が満喫するものではありません。
地球環境問題、徳川家康の陰謀、核実験の影響、神話による世界滅亡の予言など、フイクションとノンフィクションが交錯しながら、物語は進みます。
この手法は、帝都物語と同じもので、この時期に荒俣氏が得意としたものだったのでしょう。
それが小説のスタイルとして描かれると、本当になにが真実か見えにくくなります。
けれど、真実はこれだと指摘することを、あえて荒俣氏は避けているのです。
真実は読者が自分で見つけなければならないのです。
あなたのパラダイスの在りかを見つけるために、さあ”ヨーコ”と旅に出かけましょう。
”黄色いクーポン”があなたを暗黒の楽園へと、導きます・・・・・。
最後に、ハワイ語を学習したいというあなたにも、この本はお勧めです。



生かして頂いて、ありがとう御座位ます。
最後に、あなたの貴重な"数分"を募金のために使わせてください。
☆クリック募金★
http://www.dff.jp/
http://clickbokin.ekokoro.jp/
ありがとうございます
著者:春江一也
発行:集英社インターナショナル / 単行本 / 2007年
ジャンル:小説

北京オリンピックを目前とした、上海を舞台に、東トルキスタン(ウィグル)の若者、アフガニスタン情勢、911同時多発テロ、在上海日本総領事館員自殺事件などをテーマあるいはモチーフに、中国の抱える問題と周辺諸国の若者たちを描いた作品です。
ぼくの体験から、『大地の咆哮』(杉本信行著)、『中国農民調査』(陳桂棣、春桃共著)を前もって読まれると、さらに理解が深まると思います。
杉本氏は、元上海総領事を務めた御方で、前述の領事館員自殺事件の際はその上司であった人です。
「中国農民調査」は本国ではすでに発禁となった本であり、現在の農民の抱える多くの問題が、実際の中国人記者によって書かれた本です。
内容はとても深く哀しく、大変ヘヴィであるということだけは、付け加えておきます。
簡単に読める本ではありません。

さて、本題の「上海クライシス」は元外交官という肩書を持つ著者が、その豊富な体験をもとに、中国の深部を描いています。
もちろんこれは、小説であることは承知の上ですが、上海に住んだことのないぼくにも、その実態をなんと上手に描いているのだろうと感心させられました。
いわんや、上海に滞在する方、あるいはご縁のある方には、更にその世界に溶け込んで読むことができるのではないでしょうか。
この本を読んでいて感じたことは、ぼく自身が様々なところで発している「魔都上海」という言葉が著者によって普通に、使われていることでした。

ストーリィそのものについては、これが小説であるため、書くことを控えさせていただきます。
目次の紹介も同じ理由により割愛します。
感想を簡単に述べてみますと、登場人物がちょっと多かったのではないかという感があります。
意味のない人物、とまでいえませんが、省いてもよかったと思える人物の登場により、物語の幅は広がっているのですが、主要なキャストの心の描き方が、なんともぼかされた感じを受けました。
また、結局この主人公を、日本人の外交員なのか、ウィグル人兄妹なのか、あるいは中国の公安なのか、もっとそこにスポット当てて、とその心の情景を描いて欲しかったと思います。
春江氏の作品は、ぼくにとって初めてなのですが、すでに”中欧三部作”というシリーズで名声を得ている作家なら、ちょっとぼかしを入れ過ぎたのではないかと思うのです。
前半部分の期待を持たせるストーリィ展開に対し、後半は失速感と、枚数足らずで、半ば強引に、結末をまとめたのではないかとも、感じました。
最後のオリンピックの開会式の場面は、もちろんその前(2007年発行)に書かれた小説であるにしても、物足りなかったです。
敢えて加えなくてもよかったのではないでしょうか。

ちょっと辛口の紹介になりましたが、この日本にスパイ防止法がないなど、しっかりと現実の日中関係が描かれているところは、さすが元外交官だなと感じました。
経験の浅い深いに関わらず、著者が今後も”小説の世界”で活躍されるのなら、重厚なテーマに沿った骨太なシナリオを期待します。
アマゾンの書評ではおおむね好評に描かれているのは、それだけ中国という国の本質を、我が祖国の民が知らないのかと感じた瞬間でもありました。


上海クライシス/春江 一也

¥1,995
Amazon.co.jp


生かして頂いて、ありがとう御座位ます。
最後に、あなたの貴重な"数分"を募金のために使わせてください。
☆クリック募金★
http://www.dff.jp/
http://clickbokin.ekokoro.jp/
ありがとうございます