源氏物語 読書会 21~25 | 翡翠のブログ

翡翠のブログ

日々の徒然をつづっています。コメントは承認後公開させていただきます。

今週末も参加できました。

猫町倶楽部 猫町オンライン 源氏物語 完読読書会

 

以前読んだ時の読書メモを振り返りつつの再読メモ。

21.少女

夕霧が十二歳になり元服を迎えます。源氏の教育方針から六位に叙せられ、浅葱色の袍を着て大学に入り学問をします。このあたりの実力をつけさせたいという源氏の教育方針は、非常にまっとう。

夕霧は幼馴染で頭中将の娘の雲居の雁と好きあっていますが、雲居の雁を春宮妃にと考えていた中将に引き離されます。雲居の雁の女房にバカにされて悔しがる夕霧、悲しむ雲居の雁、うむ、好ましい可愛い恋愛だと思うのもつかの間、五節の儀で舞姫に選ばれて二条院に来ていた惟光の娘に会ったばかりで懸想文を贈る、さすが源氏の息子。

光源氏は六条院を建て、春の町(南東)には紫の上と明石の姫君、六畳御息所の跡地の秋の町は秋好中宮(梅壺女御 故六条御息所の娘 前斎宮)の実家に、夏の町には花散里、冬の町には明石の君を住まわせます。ここの描写はとても好きです。初めて読んだ円地訳の時からあれこれ想像して読んでいました。もちろん、妻たちを一緒に近くに住まわせるのは全然良くないのですが、四季を彩る花樹に囲まれた屋敷に住むってなんて素敵だろうと。

 

22.玉鬘

玉鬘編のスタート。夕顔の死後、夕顔の乳母の夫が筑紫に異動になり、乳母は幼い姫を伴って筑紫に下ります。成長した姫、玉鬘が豪族の大夫監から熱烈に求婚されたのから逃れるため、乳母は都に逃げます。源氏は玉鬘を六条院に引き取り、花散里に後見を頼みます。このとき、紫の上には事実を話すのですが、花散里には自分の実の子が見つかったと話します。ここの花散里のセリフが、私の小学館セレクションでは「私には似合わしいお世話役」と言っていて、注釈に恨みが漏れていると書かれているのです。他の参加者の方の訳は、あっさり花散里が素直に引き受けたような書きぶりばかりなのですが、私の版だと花散里のイメージが変わります。

 

この帖では、女君らに贈る正月の晴れ着を選ぶ場面が、華やかなうえに、源氏の選ぶ衣装から、まだ見ぬ女性らの様子を推し量ろうとする紫の上の心情も知ることができて、深いなあと思わされます。

 

紫の上には紅梅の模様が鮮やかに浮き上がる葡萄染色の小袿と艶やかな薄紅色の袿。明石の姫には桜の細長にかい練り。花散里には薄藍色の海浜模様の表着に紅のかい練り。末摘花には柳の織物に唐草の乱れ模様。
玉鬘には真っ赤な表着に山吹の花模様の細長。紫の上の印象は「上は見ぬやうにて思しあはす。内大臣のはなやかにあなきよげとは見えながら、なまめかしう見えたる方のまじらぬに似たるなめりと、げに推しはからるるを、色には出だしたまはねど、殿見やりたまへるに、ただならず」「(玉鬘の実の父である)内大臣(旧 頭中将)が華やかで綺麗な方ではあるけれど、優美さがないのに似ているのだろう」、結構辛辣な評価、これは嫉妬?。
明石の上には、梅枝に蝶や鳥が飛ぶちがう模様の舶来風の白い小袿に濃い紫の艶のあるものを重ねて。この衣装に対しては「思ひやり気高きを、上はめざましと見たまふ」と。この「めざまし」という評価は、「自分より劣った地位にある者が、意外なほどの様子を示したときに抱く驚きと不快の感情」(小学館古典セレクション)なのだそう。紫の上の心情、複雑だったでしょうね。

 

京都の風俗博物館には、源氏物語を舞台にしたジオラマがあって、衣装も拝見できるそうなので一度行ってみたい。

 

23.初音

新春の六条院。女君達は前帖で配られた衣装を着て源氏を出迎えます。明石の姫君には実母である明石の君から「年月をまつにひかれて経る人にけふ鶯の初音きかせよ」(年月を小松(姫)にひかれて過ごしてきた私に、今日の鶯の初音(姫の初便り)を聞かせてください)という歌が贈られます。離れて暮らす母の悲哀が感じられます。

日のくれるころ明石の君を訪れた源氏は、気品ある優美な明石の君に惹かれ泊まります。しかし翌朝は夜明け前に寝殿に戻り、「ついうたたねした」と紫の上に言い訳して、昼まで寝てしまいます。元旦に他の女性の元に泊まられた紫の上も、翌朝早々に帰られる明石の君も、それぞれがつらそうな描写です。

 

この帖のタイトル「初音」からは、名古屋の徳川美術館の収蔵品「初音」の調度が思い起こされます。三代将軍家光の長女、千代姫が数え年三歳で尾張徳川家二代光友にお嫁入りしたとき婚礼調度の一つで、意匠が『源氏物語』の「初音」の帖に因んだものなのです。次帖の「胡蝶」の帖に因んだ「胡蝶の調度」もあります。順にローテーションで展示されているので、観に行くたび楽しみなのです。

 

24.胡蝶

六条院春の町での船楽の催しが行われます。紫の上と秋好中宮の春秋あらそいは優雅です。
 

一方で玉鬘に迫る源氏。保護者として文の返事指南などしながらも、父親のふりは通せないかもと思ったり、内大臣(頭中将)に知らせようかと迷ったり。ついに玉鬘に思いを伝え、添い臥せ、しかし思いとどまって部屋を出る源氏。玉鬘、とっても困るだろうなと。いや、現代の身として考えると困るどころではない。保護者として頼っていたとしたら、いとわしく、つらいだろう。これは父や兄のように慕っていた紫の上が源氏に納得もなく妻とされた時の繰り返しですね。紫の上は、その後源氏を夫として愛し苦しむようになるわけですが。

玉鬘に迫って添い臥せた後の言い訳に対して、与謝野晶子訳では「変態の理」と書いていると読書会参加者の方が教えてくださり、とっても盛り上がりました。

 

25.蛍

引き続き玉鬘に迫る源氏。

一方で玉鬘へ恋文を贈ってくる男達のことを楽しんだり、玉鬘に求愛している蛍兵部卿宮を招きいれ、そこに蛍を放し演出したり。

で、だんだん玉鬘の源氏への感情に変化が!「尽きせず若くきよげに見えたまふ」「をかしかりぬべき御ありさまかな」を源氏の素晴らしさがたっぷり描写され、「親などに知られたてまつり、世の人めきたるさまにて、かやうなる御心ばへならましかば、などかはいと似げなくもあらまし」、親に後ろ盾になってもらえたら自分も源氏に似つかわしくなくはないだろうと思うように。変われば変わる。