M氏がテレビを購入してから

四年が経った頃、

画面が真っ黒になり、

まったく見えなくなってしまいました。

保証期間が過ぎていたため、

高額の請求が頭をよぎりましたが、

思い切って修理を依頼することにしました。

修理に来た技術者と話していると、

給与はすべて出来高制とのことです。

M氏はすぐに質問をしました。

「修理が複雑で、

もし直らなかったらどうするのですか」

との問いに、

「お金がもらえません」との返事です。

「では、直せないことはないのですか」

との再度の問いに、

「私たちにとっては命をかけた仕事です」

と答えたのでした。

彼はM氏宅に来る前から

テレビの状況を詳しく把握し、

どこが悪いのかを理解していたというのです。

M氏は早朝から深夜まで働いており、

仕事は十二分にやっていると

自己評価をしていました。

それでも、

難しく面倒な業務は人任せにしていたのです。

一人の技術者の気力漲る姿に、

M氏はプロとしての気骨を見たのです。

いつの時代でも、

年代による考え方や行動の違いは

存在するものです。

ジェネレーション・ギャップという

言葉があるように、

人間関係において特に大きな影響を及ぼすのが、

年齢差や世代の差のようです。

上司と部下という立場の違い、

境遇の違い、

年齢差などのギャップは、

コミュニケーション構築に時として

プラスに働きます。

しかし得てしてマイナスに

働く場合も多いようです。

その要因の大部分が、

感情的なものでしょう。

ギャップを埋めるには、

お互いに理解を深めることに尽きます。

中でも、

先輩の意見を尊重し学んでいくという、

謙虚な姿勢を培うことは大切です。

先任者には、

学歴や理論を超えて仕事に携わってきた、

豊富な経験と職業に対する力強い

信念があります。

そこに、

学んでいきたいものです。

人は皆、

長所だけでなく短所も持ち合わせています。

であるからこそ双方が敬意を払い、

「職場は自己啓発の場でもある」と

心していくことが大事です。

業務を円滑に遂行するために、

良き人間関係を築きたいものです。
早稲田大学名誉教授の春木豊氏は、

「動きが心をつくる」

という身体心理学を提唱しています。

人の表情や姿勢、呼吸や発声など、

日常の何気ない動作が心に影響を与え、

心をつくっているというのです。

表情により

「快」と「不快」を

調べた実験があります。

口角を横に広げた時と口をすぼめた時では、

横に広げたほうが快く感じられました。

同じ漫画を読んでも、

口にペンを咥えて読んだほうが、

おもしろく感じられたそうです。

姿勢に関する実験では、

背筋を伸ばした時にイキイキとした

感じが得られ、

背筋を曲げた姿勢にすると、

心が後ろ向きに変化しました。

朝礼の中で、

挨拶や返事の実習を、

姿勢を正して行なっている

職場も多いことでしょう。

これらの実習は、

所作や発声を通して人の心理に働きかけ、

積極性や受容力を養うことに通じているといえます。

心地よい思いを得るために、

まず動作から意識してみるのも

自己変革の第一歩です。

「心と体はひとつながり」を、

生活の中で実感してみましょう。
SさんがR社に

クレームの電話をした際の出来事です。

購入したばかりの家電に不具合が生じ、

不快な気持ちで受話器を取りました。

問題点を告げると、

オペレーターはまず

「お忙しい中、

お電話をいただき誠にありがとうございます」

と言いました。

続いて不具合の内容について確認し、

修理では対応できないと判断をすると、

商品交換の手続きを迅速にしてくれました。

オペレーターは最後に、

「お電話をわざわざ頂戴し、

本当にありがとうございました。

大変ご面倒をおかけしました」

と言ったのです。

Sさんは

「なぜクレームの電話にお礼を言うのですか」

と尋ねました。

すると

「お電話をいただけるのは、

まだ期待をしてくださっている証拠です。

わざわざ時間を割いていただいたことに

感謝するのは当然です」

と言うのです。

お客様に不快な思いをさせず、

クレーム内容を

「自社製品の向上と改善のために役立てたい」

という姿勢に、

Sさんはいたく感心しました。

電話をする前の不快な思いは去り、

爽やかな気持ちで受話器を置いたのです。

 獺の 祭見て来よ瀬田の奥

この句は、

元禄三年、

松尾芭蕉が四十七歳の時に詠んだものです。

「春になって季候もよいので、

瀬田川の上流で獺の祭でも見てきなさい」

という意味です。

春を迎える頃、

カワウソは捕らえた魚を川岸に

並べる習性があると言い伝えられています。

その姿が、

まるで人間が先祖を祭る際に、

お供え物を並べるさまに似ているところから、

「獺祭魚」という春の季語となりました。

また転じて、

書物を多く並べて調べ物をしたり、

詩文をつくる人のことなども

意味するようになりました。

俳人の正岡子規は、

病臥の枕元に資料を並べたことから、

自らを獺祭書屋主人と称しました。

河童の伝説になるなど、

ニホンカワウソは日本人にとって

身近な生き物でしたが、

生息する河川の環境悪化などにより

絶滅したと言われています。

近くの公園などを訪ねて

春の息吹を感じ取り、

リフレッシュするのもいいものです。

そして自然に親しみ、

地球環境の保全に意識を向けましょう。