M氏がテレビを購入してから

四年が経った頃、

画面が真っ黒になり、

まったく見えなくなってしまいました。

保証期間が過ぎていたため、

高額の請求が頭をよぎりましたが、

思い切って修理を依頼することにしました。

修理に来た技術者と話していると、

給与はすべて出来高制とのことです。

M氏はすぐに質問をしました。

「修理が複雑で、

もし直らなかったらどうするのですか」

との問いに、

「お金がもらえません」との返事です。

「では、直せないことはないのですか」

との再度の問いに、

「私たちにとっては命をかけた仕事です」

と答えたのでした。

彼はM氏宅に来る前から

テレビの状況を詳しく把握し、

どこが悪いのかを理解していたというのです。

M氏は早朝から深夜まで働いており、

仕事は十二分にやっていると

自己評価をしていました。

それでも、

難しく面倒な業務は人任せにしていたのです。

一人の技術者の気力漲る姿に、

M氏はプロとしての気骨を見たのです。