
各論
「目の裏・・・」のシリーズは次に添付画像のような展開となる。
この時期の作品では「まる・さんかく・しかく」がそれ自体三次元の立体的な形をとるように見える。
中央の塊りはどこか乳海攪拌とでもいうか、原形質スープの中から原生動物が形作られ始めた様な印象がある。
周囲の緩やかなスポットライトは「視界野」である旨、本人も言っている。
前回、前々回の作品では、まる・さんかく・しかくが画面上のフィルターやフィルム・スクリーンのようにも見える。
すりガラスを通すと画像がぼやける、そのすりガラスそのもの。
本作では前回記したインスタレーション性がかなり薄まり、普通の絵画、あるいは図像の印象が強い。
タイトルも「一つ目」など、ストレートな解釈でいいようだ。
また、サルバドールダリが「牢屋に閉じ込められたらどうするか?」の問いに「眼球を圧迫して、網膜に発生する幻影を楽しむ」と言っている。
この場合、背景は闇になるため、ネガポジが逆になるけれど、上の画像にはそんなイメージもある。
個人的にはこの時期の作品群も気に入っているのだが、模索している可能性の一部だったようで、この後はフィルム・スクリーン的なスタンスに戻ると同時に'SHADOWS'なる別シリーズも開始される。
ただし、'SHDOWS'は素材が紙と色鉛筆になること、モチーフがはっきり人物像になることを除くと、まるさんかくシリーズを補完する同じテーマのヴァリアントと言えるようだ。
そしてそのシリーズは一枚の単品としても成立しているが、複数セットで展示されることが多く、インスタレーション性に強く焦点がある。
この場合の「インスタレーション性」というのは独自解釈ながら、以前竜安寺などを参考にして説明した「鑑賞者自身が定点から移動することを促すもの」の事である。
厳密にいえば立体作品はすべて該当するため、逆にインスタレーション性からもっとも遠いものが平面絵画という、図と地の関係を構成する事となる。