西一風OBでサワガレで活動していた田中次郎君と、同じく西一風OGで下鴨車窓や努力クラブ等で女優として活動していた飯坂美鶴妃さんが立ち上げた新しい演劇ユニット「枠縁」。
私が大好きな2人だけに、相当期待して観に行きました。その期待は全く裏切られることなく、期待通り、あるいはそれ以上でした。

「タウン」は2009年5月に西一風で初演されたものです。ここには私もいろいろな想いがあるのですが、それは追って書かせて頂きます。
今回のタウンはやはり5年前のタウンとは随分と変わっていました。むしろ、違う作品と言ってもよいかと思います。

でも、根底に流れているテーマは同じ。
舞台は「町」。閉塞的でメンバーも学校時代から変わらず同級生で構成される「町」。
その町に変化が起き、ザワザワする。
それは夢の中の話かも、現実かもしれず・・・もし夢としたら誰の夢なのだろうか・・

夢と言えば、今勤務している会社のメンバーが高校の同級生になっていたり、大学時代の西一風での芝居を今勤務している会社のメンバーでやろうとしていたりというのはよくある話です。

これは過去の閉塞を引きずっているのか、それとも今の閉塞からの脱却を意味しているのか、と考える。おそらく後者なのでしょう。
そして、「タウン」もそんな話です。

今回の「タウン」、特にドライブ感が半端なく良かったです。それは、構成している役者陣が皆卓越しているからでもあり、田中君のイメージがちゃんと具現化されているという現れでもあるのでしょう。
そのドライブ感の良さは、話の展開の面白さを過不足なく引き出していました。

9名のキャストのうち6名が西一風出身(あ、現役もいました)、それに古野君、キタノさん、土肥君という実力あるキャストが加わって相乗効果が増していた感じがします。
とにかく飽きなかったし、一気に観れました。

ま、最後ひとつ前の岡本君の長台詞はもう少し短くても良かったかもしれませんが(笑)
ちょっとしつこかったかな?

この「タウン」ですが、2009年5月に西一風で観たとき、私は観劇自体10年ぶりくらいでした。
それくらい芝居からは意図的に遠ざかっておりました。

同年の4月に京都に単身で帰ってきたとき、何気なく観た「タウン」は西一風のDNAが20年以上の時を経て、さらに高いレベルで結実していたことを感じた作品であり、自分自身が抱えている閉塞を、「それはあなたの思い込みですよ」と後輩たちに諭された作品でもあり、芝居の世界の人たちに近づけてくれるきっかけになった作品でもあります。

ま、これも思い込みかもしれませんが・・・

田中君と飯坂さんの枠縁、今後も期待できます!!
次はもうちょっと違う感じのお芝居も観たい気がします。


枠縁「タウン」
初燈座というのに、大遅刻・・・・
いやはや申し訳ない限りです。

でも、そんなかなり出遅れた私でもすぐに引き込まれてしまいました。

山谷で日雇い労働をしていた音信不通だった父親の遺骨を引き取った娘。
ところが、死んだ父親の幽霊が出たところから話が始まる。(ようだ・・・最初は観てないので)

テーマは、まずは東日本大震災、その後の福島の状況、原発の問題、その原発を山谷やあいりん地区の日雇い労働者が支えている現実、現代にひそむ下層労働、パートタイムを含む非正規雇用の現状などが描かれる。
職場で追い込まれ、放火に走る娘。
それを止める父(でも幽霊・・)

重い話なのだが、その大半が幽霊である父と娘のやり取り。
幽霊であるはずの父親が酒を飲んだり、娘のためにいかにんじんを作ったりというコミカルさが何とも言えない悲しさを醸し出す。

そして、クライマックスは父親が死んだ・・・実は殺された哀しい理由・・・・

静かなお芝居の展開の中に込められたたくさんの意味。
それは決して抽象的ではなく、具象的に込められており、それは3人の役者の卓越した演技で実に自然に頭に入ってきました。

本、演技、舞台のすべてが素晴らしかったです。
Facebookにも書きましたが、若い演劇人にこそぜひ観て頂きたいお芝居でした。

写真はインディペンデントシアター1stと、モンゴルの人形。
なんで?と思うかもしれませんが、モンゴルは有名なウランの産地。
世界で原発が稼働停止になるとたちまち困る国、モンゴル。
であればそのモンゴルがウランに頼らない産業をもてば、ということで、モンゴルのお人形を販売する活動をされている団体があるそうで、私も一つ買いました。

インディペンデントシアター1st

モンゴルの人形

やっぱり、さすがでした!!さすがMONOでした。
ほんと、相当面白かったです。

今回はいつもの5人に加えて若手の俳優さん4人が加わり、かなり厚みが増した感じでした。
もちろん、5人だけの公演もとても面白いのですが、新たなメンバーが加わることで、会話の厚みや役者の組み合わせの多様性が出ますよね。

レギュラー5人は演ずる性格もセリフ回しもいつもの感じで、そこはそれでよいのですが、若手の方が加わることで変化が生まれてそれが絶妙に面白い。
ま、土田君の狙いなんでしょうけど。
そういえば「赤い薬」もそんな感じでしたっけ。

舞台はある会社の天井裏・・・・天井裏というには異常にでかすぎる天井裏なんですけど、その異様さがMONOらしい。

その天井裏に潜み「のぞき穴」から社内をのそいているのが、社内諜報を仕事にするメンバー。
そのメンバーは社長からの密命で、今や一般社員となった創業者の孫の活動などを監視している。
彼らは元社員と社長の愛人で構成され・・・・

という、MONOらしい展開。

土田君の脚本には、人間のどうしようもない哀しさや性をそれとなく笑いの中で描いています。
そこが実に絶妙で面白い。
また、役者の個性もつかみきっているので、お芝居全体のバランスもとてもよく、あっという間に観れてしまします。

社内諜報していた人たちは、創業者の孫と結託し、現社長の追い出しを図ります。
孫は彼らの将来を約束しますが、彼からは決してのぞき穴の向こう側へ行ける存在ではないことをよくわかっていたのでした。

最後の方で、のぞき穴側にいるうちの3人(金替、水沼、奥村)がのぞき穴をのぞきながら泣くシーンがとても印象的で、思わず自分を投影してしまいました。
わかっているけどどうしようもならないことってありますよね・・・・・

ところで、土田君演じる役って、ちょっと間抜けな感じの役が多いのですが、これって逆に「間抜けな人間になりたい」という、自分に無いものを求める願望なのかなといつも思うのです。

不思議なもんです。

ということで、今回もパンフ買っちゃいました。
のぞき穴、哀愁
あれから1週間たちました。
シンプルに「面白かった」で良いのかなと今は思っています。

結論は明示されていません。
説明もある意味不十分です。
ですから、その分、観る側のイメージが試される。そういったお芝居でした。

おそらく、家があったと思われる場所。
そこに、マッチ売りの少女と、お茶を楽しもうと来た女。
この女って、「不思議の国のアリス」に出てくる帽子屋みたいだなって思いながら観てました。
理屈っぽいし・・・

で、この「おそらく、家があったと思われる場所」に、自分の家があったのだと主張する男が現れてと話がすすんでゆきます。

ところどころに出てくるキーワード。
あちら側からはこちらに来れるけど、こちら側からあちらには行けないとか・・
詳しい説明はありません。

でもなくてよいのです。
そこは観る側がイメージするのです。

男の家はあるようでなかったかもしれず、さらに言えば、こちら側の街は存在していない死後の世界なのかもしれません。もしかしたら異次元なのかもしれません。
そこは観る側のイメージ次第なのでしょう。

延命さん、浦島さん、永榮さんの演技は実に巧みでした。
あ、金田一さんも存在感ありましたし。
特に延命さん、浦島さん、永榮さんの三人は声の出し方が実に巧みです。
しかも、その三人が絶妙なタイミングで繰り広げる会話は絶妙でした。

後で浦島さんにお聞きしたら、「相当稽古しましたよ~」って言ってました。
正直、あのセリフ回しは特に素晴らしかったです。

諸説ありますが、私はやっぱり芝居の出来不出来を左右するのは役者の力だと思っております。
ですから巧い役者の芝居はやっぱり面白い。

さて、ナントカ世代さんの代表代行さんのお名刺を頂きました。
そのお名刺です。

代表代行




「面白い!」というか「愉しい!」お芝居でした。
と言って「エンタメ」的な楽しさではなく、「考えるのが愉しいお芝居」です。

先週末の観劇でした。
たくさんの考える要素が芝居全体にちりばめられていて、「これは何??」の連続で、あっという間に終わってしまいました。

一見静かなお芝居なのですが、そこここかしこに不条理だったり、変な設定があったりと、いやはや合田君らしいお芝居。

まず、舞台。
緑のレコード巻(ビニールひもの元です)が両袖から中央にかけてたくさん垂れ下がっています。
で、中央に真っ黒に塗られたブルーシートが下がっておりまして、その下の方だけが緑なんです・・
これが気になってアフタートークの時にお聞きしたら、地平線と水平線をイメージしていたそうです。

このお芝居、ひとつのキーが「人を刺し殺す」という衝動にあるのですが、
刺した人は「刺し殺した」と言っていい、刺された人が「刺し殺された」と言っているのに死んでないんですね。だから、「刺し殺し返し」にゆく。

そして、刺し殺すことがブームとなり、伝染してゆく。

夫が刺されたのに動揺しない妻。

刺し殺す凶器を陳列する邪悪な雰囲気のホームセンター。
(もしかして売っていたのは「凶器」じゃなくて「狂気」?
そのホームセンターでバイトする「刺し殺してみたいけどできない男」。

海にも山にも出没し、人に「たまったもの」がわかる人。
この人は海山の精なのかと思っていたら、「妻」に刺殺される。

明らかに人をイライラさせる接客をする男。
この男は絶対に刺されても死なない。

そして、最初に刺された男と刺した男の二人の関係だけ、刺す行為がないのに刺されている・・

これは夢の話なのだろうか・・・

登場人物で二人だけ、刺しもせず、刺されもしないホームセンターでバイトする男と、風俗で働く女がなぜか二人で海に行き、死ぬと思われる行動をとる・・・

このお芝居、もしかして世の中の流れに乗れない不器用な人を描いていたのかもしれません。

さて、このとても頭を使うお芝居、役者さん、とてもよかったですね。
合田君、あて書きしてるんでしょうけど、うまくこなれていて、とてもバランスが良かったです。
皆よかったのですが、今回特に「
ホームセンターでバイトする男」を演じた無農薬亭君と、「妻」を演じた長坂さんのなんとも言えず力が抜けた感じが良かったです。
一方で九鬼さんと佐々木君の力入った感じは、対象的でよかったですね。

ということで、ほんと、人の夢を覗き見しているような面白い・・・いや愉しいお芝居でした。
実は今週劇研で観たナントカ世代もかなり面白かったので、2週連続劇研でいい思いをさせて頂きました。
ナントカ世代の感想はまた。

深い緑がねじれる