私が慣れ親しんでいる小劇場系の演劇とプロダクション系の演劇はよく似ていてもやはり異なるところがあります。
その大きな違いのひとつはお客さん。

小劇場系のお客さんはサブカル系あるいは貧乏そうな(失礼!)感じの方が多いのに対して、プロダクション系のお客さんはちょっと派手目の人や肩で風切って歩く感じの人が目につきます。
おそらくは、同じ演劇という世界にいてもそれぞれ住んでいる世界が微妙に違うのでしょう。
そういうところが自ずとお芝居にも現れたりします。

さて、今回、鴻上尚史さんの「エゴサーチ」。
知らなかったのですが、2010年の作品のようですね。虚構の劇団で何度か上演している作品のようです。
後で、調べましたら、結構原作に忠実に演じているようでした。

全体的にはとても面白かったです。
プロダクション系のお芝居の場合、往々にして演技がオーバーアクションになることが多いのですが、今回はそういう感じもあまりなく、しっかり楽しめました。

客席がフラットだったのは、おそらくは仕込とバラシの時間的な制限からだと思うので、仕方がないところですが、あまり見づらい感じはしませんでした。

実はキジムナー役を今回女性が演じているところに、小さな違和感を感じていたのですが、原作はやはり男性だったのですね。そこをのぞけば(キジムナー役の人は良く演じていらしたですが)とてもよかったです。

残念だったところは、無用に客席を意識した演技をする役者さんがいたことと、効果がちょっとうるさかったところですね。
後は、役者が客席から入る際に、いちいち客電を付けるのですが、あれもちょっとうるさかったかな。音響も照明ももっとシンプルな方がより役者さんの演技が引き立ったと思います。

さて、主役の伊織ゆきさん。
ひょんなことでお知り合いになったのですが、これで伊織さんのお芝居を観るのは4回目。
今回は今までで一番良かったです!
しかも役者として数段レベルアップした感じがしました。
もちろん、良い役をもらえているというのもあるのですが、想像するに、ずいぶん役を考え込んで入り込んで演じている感じがしました。稽古大変だったろうなと思います。

ラストシーンは思わず泣いてました・・・
おっさんになって涙腺がもろくなったこともありますが、伊織さんのお芝居がそれくらい心に沁みました。
しみじみ「いい女優さんになったなぁ」と思いつつ観ておりました。

どうも小劇場系の演劇ばかりを観る傾向にありますが、いろいろなお芝居観ないと幅が拡がらないなと思います。これからもいろいろ観に行こうと思います。


HEP HALL エゴサーチ

とにかく巧かったし面白かった。
なんて言ったらいいのだろう「説明しすぎない」面白さとでもい言うのだろうか。

なにせタイトルが「わたしの焦げた眼球/遠視」。
どういうことだろう?と思わせるタイトルと、/(スラッシュ)・・・・

でも、お芝居の後半で、はああ・・・と思うのです。
確信ではないけれど・・・・
それでも、そこは観客の自由でいいのでしょう。
(正直言うともう一回観たいのですが・・・・)

舞台はある地方都市の安アパートで、お金の無さそうな夫婦が暮らしている。
夫はどうやら失業中・・・リストラされたらしい。
舞台上には、扇風機と丸いちゃぶ台とクーラーボックスと水屋的なもの、そして一面に散らばる紙。
この紙は、おそらく生活感を表現しているのかなと思います。
季節は夏、しかも渇水していて、ずいぶん坂を下りたところにポリタンクで水を取りに行っているという設定。

そんな夫婦の元にNHKの受信料取立人が来るのですが、この取立人がなんと何年も前に別れた、しかもバイク事故で死んだと言われていた田舎「さんとみ」の同級生ゆうじだった。
(劇中、「さんとみ」という地名が出てくるが、これは埼玉県の三芳町の三富地区なのか、それとも山梨県の三富(みとみ)なのかはわからない。いずれにしても小さな町であり、それがどこであるかは大した問題ではない)
※ブログを読んだTさんからご指摘いただきました、「さんとみ」ではなく「まつとみ」とのこと・・・・自分の記憶力の無さに思わず苦笑いです。

偶然なのか、それとも探し出したのか、同級生「ゆうじ」を一見歓迎しているかのように見える夫婦は、歓迎していない。
そして、その夫婦には、おそらく子供を流したと思われる過去があり、ようやく回復してきたと思われる妻は前を向き始めるところで話は終わる。

それらすべてはちゃんとは説明されていません。
流れの中から類推してゆきます。
そして説明されていないからこそ、ごく自然な芝居になっています。
大体、夫婦間や旧友との間で共有している既知の事実を毎度口に出して話すことはめったにありません。
そういう意味でとてもリアリティのあるお芝居です。

なんという面白さ!

普通に暮らしている人たちの中にも、長く暮らしていれば、鬱屈、妬み、狂気、そして触れたくない過去などがあり、それがありつつ、淡々と暮らしています。
そういうことを表現しているのかもしれません。

そして、3人の役者の実に無駄のない演技。
力のヌケ具合が実に絶妙でした。
とぼけた中に一瞬走る緊張みたいなシーンとか、ちょっとじゃれあうことで、昔の二人には友人を超えた感情があったことがわかるシーンとか、よかったですね~
藤原さん、高杉さん、大沢さんの絶妙な演技があってこそ成立するんだなぁ・・なんて思いながら観ておりました。

「こいつを始末しないとなんだか前に進めない、そんな気がして・・・」
(ちょっと違っている気がしますが)という藤原さんのセリフ良かったなぁ。

これこそ学生さん達に観て頂きたい、そんなお芝居でした!


OFT1

随分ブログをお休みしておりまして申し訳ありません。
ちょっと仕事が忙しくて・・・と言い訳~

さて、先週のこと、西一風「あんドロップ」を観てきました。
西一風の公演も70回なんですね~いやあ、初めての舞台公演は85年12月の「ラ・ヴィー」。
それを第一回にしております。あれから29年ですか・・・よく続いております。
全ては多くの後輩諸氏のおかげです。感謝感謝です。

「あんドロップ」は昨年「モモ」を演出したイマイカコイ君の作演でした。
新しい世代に変わる時はいつも「どうなるんかなぁ~」と思うのですが、でもそれはそれで、それなりに形になってゆくのだなと毎回感じております。
先輩達は後輩達を危ぶみますが、でもそれなりに皆育ってゆきますね。

今回のお芝居は、ちょっとファンタジーの香りのする不条理劇。とはいっても不条理感はかなり薄いですが・・・
あるお菓子会社の廃工場に紛れ込んだ女。探し物を探している女。自分が何を探しているのかを探している女。ずいぶんモラトリアムなやつです。(笑)
廃工場に残された「他人の記憶のドロップ」を食べることから、お菓子工場での他人の記憶に入り込みます。というお話。

ドロップが忘れられた記憶からつくられるという設定はとても面白い着想です。
また、自分の記憶を食べて、自分の記憶を取り戻すのではなく、他人の記憶を食べるという転換も面白かったです。

役者陣も、それぞれのキャラがしっかりしてきているので、ある程度安心して観ていられました。

ただ、残念なのは随分と「説明しすぎ」なこと。
設定も一回展開すれば、「ああこういうことだな」と観る側は大体わかります。
おそらくは皆真面目なのでしょう。登場人物ひとりひとりしっかりと説明しちゃいますから、特に中盤がかなりだるーくなってしまいます。
ぱっと見たところ、寝ているお客様がいたのも中盤でした。

この「説明しすぎ」は大きな課題です。

後は演技。
個々のキャラがしっかり立ってきたのはよいのですが、間の取り方のパターンに変化がありません。
間の演技はとても重要で、特に間の「目の動き」は気を付けて演技しないと、下手をするとお客さんの集中を切ってしまいます。
「間」の演技はまだまだ工夫が必要と思いました。
また、特に体の動かし方に課題がある役者さんもいましたね。

これは直接お話しもしたのですが、できるだけ上の世代のお芝居を観てみることが大事だと思います。
幸い京都にはたくさんの素晴らしい先輩劇団があります。
同世代の芝居も良いのですが、30代、40代の人のお芝居を月1本でも2本でも観ることで、自分に欠けていることに気が付くと思いますし、勉強になります。

今は年間の公演回数が多いので大変なのでしょうが、でも芝居を観ることも芝居を作るための大事な仕事ですから、西一風のみんなにはもっともっと芝居を観て欲しいと思います。

ということで、面白かったけど残念ながら課題は多いお芝居でした。
ま、偉そうに言いましたが、僕がちゃんと演技できるかは長いことやっていないのでわかりません(笑)

頑張れ~後輩諸君!!!


あんドロップ1

あんドロップ2

「意外です」と言われましたが、C.T.T.はお初でした。

C.T.T.とはContemporary Theater Trainingの略で、劇団やユニット、個人が、各演劇作品の試作やや、実験をする試演会で、20~30分の作品をいくつか上演し、終わった後で参加者と一緒に合評会をするというアトリエ劇研を中心に全国各都市で行われているものらしいです。

何分、自分は演劇関係者ではないという意識が強いので、「合評とかかなわんなぁ」という思いもあって、縁遠い感じがしていたのですが、今回、前田愛美さんのお芝居を観たいこともあり、思い切って行ってきました。

○前田愛美「シオガマ」

「もしかしたら、これって偶発的に演じているんじゃなかろうか・・・」と観ていて思ったのですが、どうもそのようです。劇中での彼女が語るテキストはほぼ事実で、現実、彼女が自身の父親が今住んでいる家で生まれ育っていないという事実に驚いたことをモチーフにし、そして、きっちりと細かく構成を決めていたのではなく、舞台上の雰囲気で演じていたようです。

正直、とても難解なのですが、難解であっても、そこに展開する彼女の話はほぼ彼女の身の上の話であり、虚構でない分とても引き込まれながら観ておりました。

おそらく、彼女の想いを私は半分も共感できなかったかもしれません。ですが、私が観た30分のお芝居が再生不可能なほぼ偶発的な内容である分、一種不思議な前田愛美の世界観に引きずり込まれた快感がありました。

○突き抜け隊「Twilight Zone」

本日の3つの作品で唯一一般的な会話劇でした。
芝居の稽古をしていた三人が、スマホで読んでいた話の中に引き込まれ、その話を役を演じつつ2つの世界が錯誤するというタイプのお芝居です。
ちょっと残念だったのが、「Twilight Zone」というタイトルで私が期待しすぎてしまったこともあるのでしょうが、スマホに書かれていた話というのが、あんまり怖くなかったことです。
つまり、ハラハラ感か、意外感かちょっと足りない感じがしました。
時間が短い中でみせる難しさを感じた作品でした。

○中凹分離帯「家族会議事録」

岡山からの参加らしいのですが、意外性があって面白かったです。
独り芝居なのですが、主役のお母さんに対して、お父さんと娘は音声。で、娘は扇風機で、お父さんはパトライト・・・・。この扇風機とパトライトが台詞に合わせて動くのですが、観ているうちに、そこに人間感が出ているから不思議です。
娘がアメリカに留学するのと同時に、お母さんも、元ローカルアイドルの友達と一緒にアメリカへ行って
ディーバを目指すという話も面白く、家族の在り方をこっそり考えさせられる作品でした。

終わった後の合評会も、より作品の理解が深まるので、良かったですね。
また、機会があれば行きたいです。

写真は何の関係もありませんが、劇研の近くのつつじです。


劇研側のつつじ
今年、上の娘が高校受験。
何分、お勉強はあまりしない娘なので、高望みはしませんが、できれば家から30分くらいで通える公立高校に行ってもらいたいので、塾に通わせております。

その、上の娘が誕生した時に買ったスピリンターカリブ。
15年乗りましてさすがにボロになり、消費税のこともあり、今春、新車を買いました。
新型のVOXY・・・ほぼほぼ衝動買い・・・・・

ということで、
齋藤家はただ今絶賛経済対策中でございます。

当然お小遣いはカット・・・・
お芝居やライブは月2本まで・・・・

そういうこともありまして、齋藤のお芝居の感想は、今年はちょいと減ります。
ご理解のほど、何卒よろしくお願いいたします。

写真は15年乗りましたカリブです。

愛車カリブ