今までの市川君の作品はどちらかというと「物語」というよりは「詩」という雰囲気でしたので、今回もてっきりベケットのテキストでも使うのかと思っておりましたら、意外と(と言ったら怒られるかもしれないけど)しっかりとドラマが展開しておりました。

主人公は佐藤さん。
どうやら図書館の職員。

舞台は、その佐藤さんの周囲を表すステージと、その佐藤さんについての話をする別のステージに分かれ、実際の佐藤さんに起きていることと、佐藤さんについての他人の話が絡み合いながら進みます。

佐藤さんは、いつものように歯を磨いていると自分の内臓が全部無くなっていることに気が付く。
医者に行くが、「なくしものは警察へゆけ」と言われ、警察では図書館で探せと言われてしまいます。
佐藤さんは、増築を繰り返し、広がってゆく図書館の中で無くした内臓を探しながら、増え続ける本に消しゴムをかけつづけ、次第に佐藤さんの存在も・・・と話は展開してゆきます。

(う~ん、私の要約が下手糞だ・・)
というか、こういう話って要約してもうまく伝わりませんよね。

これはアフタートークでのお聞きしたことも含めて書きますが、内臓がない名前と表面だけの佐藤さんとは、実態が死滅しても名前だけが残ってゆく、非一過性の状態を表しているそうです。
ま、剥製でしょうか。
つまりは複写や記録が可能なもの。
そして、膨張を続ける図書館はその記録を保存するものを現しているそうです。

シュールですね。

佐藤さんを語る人はいろいろと現れます。
はじめて交際した恋人、医者、警官、行きずりにセックスした人。
静かに静かにでもシュールに話が進んでゆくさまは面白かったです。

ちょっと残念なのは、私が遅れて到着したこともあり、床面で演じられていることが観えなかったこと。
したがって細かいところの面白さが拾いきれませんでした。

それと、佐藤さんを語る人と実際の佐藤さんに展開するシーンはもう少し離れていたほうが面白かったかもしれません。会場の制限もあったので難しかったかもしれませんが。

合田君のシュールさが動的なシュールさだとしたら、市川君は静的なシュールさですね。
どちらも面白いと思います。

細かい点が観れていないこともあり、可能であればもう一回観たいところです。
ただ、会場のUrBANGGUILDの怪しい雰囲気と相まって、よかったですね。
今後の市川君の作品に期待したいですね。
結局、煙の塔が何であるかは明かされることはありませんでした。
ただ、それは「定められた何か」であり、「その意味を忘れられた何か」でした。

お話はこの煙の塔が音を発し、それに病弱な妹とその兄が気づくところからはじまります。
舞台は小さな山間の村。
その山の中に、ずっと閉じられた塀に囲まれた煙を吐く塔がありました。

その小さな村では、村長の姪の結婚式が近付いていたのですが、ある日塔から音がし始めたことから、平静が崩れてゆきます。
その塔は長い間、極秘に村長一族の一人が住み込み、燃料を絶やさないようにしていたのでしたが、ところが今住んでいる(実は村長の母親)の命に限りが近付いてきたことから、結婚する姪が交代で塔へ行かねばなれらなくなり・・・と話が展開します。

一方、町から行政官が現れ、村長に不満を抱いていたものが行政官に取り入り、保たれていた秩序を崩そうとする。
さらに、姪が結婚することで、姪に思いを寄せていた男、そして姪の結婚相手に思いを寄せていた女。
村にいる限り治らない病にかかっている妹を持つ兄、その兄と・・・・

多様な人間関係が狭い村で同時進行で展開します。
その様を、一つの舞台の上で同時多発的に繰り広げられてゆくます。
同時間で起こることは同時間で進行する。
最初、戸惑ってしまうその展開はお芝居が進むにつれ、だんだんと慣れてきました。

そして、舞台上でクロスするそれぞれのシーンは「見えていて欲しいものが見えていない空間にあったり」、「聞かれてはいけない話が聞かれたり」という表現が実にシンプルでかつ多彩でした。

さらに、秀逸なのは舞台上で展開される芝居の全てにセリフがあるわけではないこと。
つまりは説明しすぎない、観る側の感じ方にある程度委ねているところにあります。
その、説明の足りなさ加減が実にちょうど良く、そこがこの作品の素晴らしさにつながっております。

「定められていたもの」を守ろうとするもの、運命を受け入れようととするもの、購おうとするもの、定められていたものを壊そうとするもの、出てゆくもの・・・

最後、姪は自分の運命を受け入れます。
婚約相手が死んでしまったということもあります。
そして、引き継ぐ相手である女は、自分が彼女の祖母であることを明かさず去ります。

実に静かなお芝居でしたが、展開から目を離すことができず飽くことなく観ることができました。
ほんと「すごい」作品です。

ただ、「え、どうなっちゃうの?」というその後が気になる部分が全て残されたまま終わるので、正直続きがあるのではないかと期待してしまいます。

これは楽屋で村長役の藤本さんとお話していたのですが、
・病気の妹を連れていった兄は町に帰ってくるのか。
・その兄に思いを寄せていた女はどうなったのか。
・行政官に軟禁された村長はどうなったのか。
・そして煙の塔が何であるかは明かされるのか。
と、気になることは枚挙に暇がありません。
藤本さんとパート2のお話を(冗談で)しておりましたが、できれば田辺さんに書いてほしいなと思います。

さて、役者さん。
飯坂さんは新たな世界を見出したように思います。
抑えた演技が実によかった。
皆、素晴らしい役者さん達ばかりの中での作品作りは彼女にとってかなり勉強になったのではないでしょうか。
そして、合田君。
彼の飄々とした演技は実にいいですね。
彼にとっても今後の努力クラブの活動に良い影響がでるのではないかと思います。
後は高杉さん、相変わらずエロくて素敵ですし、藤本さんはさすがに上手いですね。
他の皆さんもすばらしかったのですが、書ききれません。

今度は「建築家M」を今度は田辺さんご自身の演出でされるそうです。
こちらも見逃せない作品になりそうです。

いやー、実におもしろかった!

mokichi4516こと齋藤秀雄の再び京都へ戻ってきました。-劇研の看板
先週の土曜日、久しぶりに「しようよ」の公演を観に行きました。
理由は単純で、田中次郎くんと宗岡ルリさんと橋岡七海さんが出ているお芝居で、これを観ておかないとなんだか直観的に後悔しそうだったからでした。

実は私は人が陰惨に殺されるお芝居はあまり好きではありませんでした。
そういう意味で、しようよの「茶摘み」を観た際、あまり共感を抱くことができませんで、しばらく「しようよ」は観ないでいいかななんて思っていたんです。

さて、今回はどうだったかというと、やはりその部分は共感できませんでしたが、それ以外にたくさん共感できる部分があり、おもしろく観ることができました。

この話はたくさんの「何かが足りない」人が出てきます。
その足りなさは、失った足りなさだったり、与えられていない足りなさだったり・・・
そういう人たちと、何とかしようとする人たちの心と体が幾重にも交錯し物語が作られていました。

サヨナラできなかった犬を探す高校生 と 高校生を探す先生
ゴミ屋敷に住む死んだ妻と子供を忘れられない男 と 男を社会に引き戻そうとする弁当屋
母が引き起こした情事が絡む事件の影響で男性を愛さないと心に決めた女 と
その女を居候させてモデルの仕事を与えるデッサンスクールの女先生
公園で弾き語りをするタカシくん と タカシくんの歌に共感する大学生・・・・・

そのそれぞれの「足りなさ」は、もしかしたら観る人がそれぞれ皆なんらか持ち合わせている「足りなさ」なのかもしれません。だから、そこに共感が生まれるのかもしれません。
そして、「足りないもの」がある人がそこに何らかの狂気をはらむのかもしれません。
「足りない」人に手を差し伸べようとする人も、実はその足りなさが自分にも重なるものがあるから手を差し伸べようとしているのかもしれません。

そして、かく言う私もその「足りなさ」に共感したのでしょう。

さて、演技の部分ですが、役者の皆さんの動きtお役作りがとても秀逸で、これはすでに、11月にプレビュー公演を行い、その後北九州での公演をこなしているという「熟れ」が産んだ技かもしれませんが、一人一人の役と役者がしっかりなじんでとても伝わりやすくなっておりました。
そして、その役者の動きと音と照明がうまくシンクロしているように見えました。

ただ、やっぱり最後に主人公の女の子は陰惨に人を殺してしまいました。
それは彼女の「足りなさ」と「寂しさ」が産んだ狂気に仕業なのですが、そういう狂気って「人を殺す」方向に向くのかな?というのがこのお芝居の最後に残る疑問なのです。

そういう狂気って普通自分に向かうのではないだろうか、たとえば寝たきりで苦しんでいる妻を安楽死させる夫というようなのとは全く違うはず。
ここは前回の「茶摘み」同様、大きく疑問が残る部分です。

さて、でも全体的にはとても面白かったです。
「悪い芝居」の植田君がゲスト参加で出てきて、ほぼめちゃくちゃなアドリブで登場したのはさすがに爆笑させていただきました。
田中君も宗岡さんも橋岡さんもしっかりキャラが立っていてよかったです。

後、実は偶然音効席の隣に座ったのですが、中野さんが座っていまして・・というか当たり前なんですが・・期せずしてお話できてよかったです。

ということで、私の共感できる部分がどうなってゆくのかという点で大原さんの次回作も観てみたいなと思います。(何だかえらそうですいません。)

mokichi4516こと齋藤秀雄の再び京都へ戻ってきました。-元・立誠小学校の玄関
西一風も草創期の私たちの頃とは比較にならないくらい今は年間公演回数が多いうえに、秋には3回生が引退してしまいます。
この時期行われる冬季プロデュース公演が新体制での初の公演で、2回生と1回生だけで行われる公演。
今回挑戦した作品は六本木高校演劇部2010年の原くくる作品「六本木少女地獄」でした。

最初に言っておきますと、私は西一風をずっと応援してゆきますし、すべての後輩に感謝してますし、今の後輩達もかわいくて仕方がありません。

ですので、ちょっとだけ厳しく書かせていただきます。

私はこの脚本は読んだことがありませんし、ましてや今まで観たこともありません。。
ですので、間違った見解かもしれませんが、今回特に気になったのは、「役者の個性が感じられない」ところ。
いろいろと理由はあるのだと思いますが、言いすぎかもしれませんが、自分たちのお芝居になっていなかったような気がします。「書いてある台詞を言っていることのつなぎ合わせ」みたいな感じでした。

台詞が自分のものになっていないのでしょうか。
それとも皆、かなり真面目すぎるのかもしれません。
出演者全員の演技が同じに観えてしまう瞬間がいくつもあり、間が長すぎるところがあるかと思いきや、
じっくり演じて欲しいところは流れてしまっていました。

ある程度は観れたのですが、その先がないというか「面白いなぁ」という感じではありませんでした。
むしろ、「なんじゃこりゃ」というくらいつまらない方がまだ良かったと思う。観客に感情が生まれにくいお芝居になってしまっておりました。

いや、元々こういう作品なのかもしれません。だとすればそれは選んだ作品と自分たちの個性があってないということになります。

おそらくは、今の団員さん達は高校の演劇部でそれなりに活動していたのだと思います。だから、若いのになんだか演技がつまらんところで固まってしまっている感がありました。
できれば、一回自分の演技をリセットして、先輩、大先輩、大大先輩や、違ったジャンルのお芝居とかもっともっと観て学んで欲しいなと思います。

さらに加えますと、原くくるさんの作品をやること自体も疑問があります。
いわば同世代。現在の西一風のメンバーにとってはライバルのはず。
どんなに世間的に評価を得ていても「観る」はいいですが「演じる」となると、ちょっと待てよと思ってしまいます。むしろ、「原くくるなんてなんぼのもんじゃい」くらい思って欲しいと思います。

言いたいこと言わせていただきました。
かく言う私が学生時代ちゃんとできていたかどうかは定かではありませんが(笑)。
ほんと、20年以上西一風をほっといて今更という感もかなりありますね。
西一風の齋藤と言えば、一般的には私ではなく、齋藤大君。
私たちが退団した後、長く西一風を支えてくれていたということはいろいろな方からお聞きしました。
私も大君に負けないように後輩達を見守らなければと思います。
決して邪魔をしないように気を付けながら。
ということで、私が言うことなど全く気にせずがんばってください。

さて、写真はかわいい後輩達です。

mokichi4516こと齋藤秀雄の再び京都へ戻ってきました。-西一風2013年1月

先週の土曜日のことです。
フジタスミトさんのライブにお邪魔してきました。

フジタさんとは、FMトリコのライブで知り合った仲で、一つ違いのまさに同世代。
お互いFMトリコファン(フジタさん失礼しました!)ということもあり、意気投合させて頂きました。

そのフジタさんのライブもバンドを含めてこれで3回目。

フジタさんとは同世代ということもあり、持っている悩みもよく似ています。
だからでしょうか、彼の歌には共感するところがたくさんあります。
もちろん、同世代でなくても共感するところはたくさんあるのですが、さらに倍加します。

フジタさんは今おかれているフジタさん自身のことから、思っていることをストレートに歌にして吐き出しているから、しっかりと心に伝わるのでしょう。

その日、ブルースのバンドの2つに挟まれた形で、たった一人で演奏するフジタさんでしたが、やっぱり、歌はボーカルが大事ですね。(当たり前か)
3つのグループの中でフジタさんの演奏が一番心に沁みましたし、素晴らしかった。

なんだろう、音楽って演奏の技量ではなく、やっぱりどれだけ伝わるかなんだなあと思います。
あ、もちろん、フジタさんの演奏ももちろんうまいのですが、そこじゃなく、心が力になるっていうのかな。
そういう感じがしました。

FMトリコもそうですが、フジタさんの曲も「また聞きたいな」と思います。

2月17日に三条木屋町上ルのRAGでフジタスミトさん率いるMARBLE WINGのライブがあります。よろしければ一度聞いてみてはいかがでしょうか?19時スタートです。

mokichi4516こと齋藤秀雄の再び京都へ戻ってきました。-フジタスミトさん熱唱