この記事は前編の方の「IT/イット ”それ”が見えたら、終わり。」について、映画の時系列に沿って、細かい枝葉の部分をあれこれ検証する記事です。したがって、結末までネタバレしています。未見の方はくれぐれもご注意ください。

 

「IT/イット "それ"が見えたら、終わり。」レビュー記事はこちら。

「IT/イット "それ"が見えたら、終わり。」原作との違いについての記事はこちら。

「IT/イット THE END "それ"が見えたら、終わり。」レビュー記事はこちら。

「IT/イット THE END "それ"が見えたら、終わり。」ネタバレ解説その1はこちら。

 

この記事は「IT/イット ”それ”が見えたら、終わり。」ネタバレ解説その1の続きです。

ビルの孤独

大きな自転車「シルヴァー」で、ビルは家に帰ります。

この自転車は原作ではかなり重要な役割を果たす存在なんですが、映画ではそれほどの存在感はないですね。

シルヴァーは「ビルの体に不似合いな、大きすぎる自転車」で、スピードを出してそれを乗り回すビルの姿は、恐れを知らない子供時代の象徴であり、イットに対抗できる「善い魔法」であるという意味が与えられています。

 

「シルヴァー」を走らせながらビルが一人で口ずさんでいる、奇妙なフレーズ。

「彼は拳をぐいぐいと柱に押し当て、幽霊が見えるとしつこく言いはる」

これは、ビルがどもりを治すために発声を練習するためのフレーズです。原文ではこうなります。

"He thrusts his fists against the posts and still insists he sees the ghost."

確かに、「ヒー・スラスツ・ヒズ・フィスツ」とか、かなり発音難しそうです。「スティル・インシスツ」とかね。早口言葉みたいなものですね。

 

このフレーズはカート・シオドマックの1942年のSF小説「ドノヴァンの脳」から引用されています。

悪質な大金持ちドノヴァンの取り出された脳に操られるのを防ぐため、主人公は頭の中で、"Amidst the mists and coldest frosts he thrusts his fists against the posts and still insists he sees the ghosts." というフレーズを繰り返します。

スティーヴン・キングはシオドマックのファンを公言しています。「ドノヴァンの脳」もSFだけど、ホラー的な小説みたいですね。

 

このフレーズは、どもりを治すために繰り返し言うことで、ビルの口癖みたいになっていて、焦った時に心を落ち着かせるために口にしたりもするものになっています。

イットは襲おうとする相手の心を読んで、そこに隠された「いちばん怖いもの」の姿になるので、心を読ませないために、頭を無意味なフレーズでいっぱいにするための呪文としても機能します。その点では、原典である「ドノヴァンの脳」と同じ使われ方と言えますね。

 

家に帰ったビルは、ガレージに作った「下水道の模型」を父親に見つかったことを知ります。

それは、飼っているハムスターのトンネルを使って、デリーの下水道網を再現したものです。それを使って、ビルは下水道に吸い込まれたものが荒れ地に運ばれることを説明し、ジョージーが荒れ地にいる可能性を父親に訴えようとするのですが…。

ザック・デンブロウは、「あの子は死んだ。できることは何もない」と冷たく言い切ります。

「母さんが見つける前に壊しておけ」とも。ビルの母シャロンはジョージーの死後ノイローゼになっていて、ザックは彼女にジョージーを思い出させることに、神経質になっています。

 

ソフトの特典映像で見られる映画からカットされたシーンに、デンブロウ家の夕食風景のシーンがあります。

冷たく会話のない食卓で、ビルは懸命に明るく振る舞おうとし、アカディアへの旅行の計画について話そうとします。しかし、シャロンは涙を堪えきれず立ち去り、ザックは「あきらめなさい、ジョージーが楽しみにしていたんだから」と言います。

ビルは「楽しみだったのは僕もだ」と呟きますが、その時には父も母も立ち去り、食卓にはビル一人きりが残されただけになっています。

 

ジョージーの死は両親に深いショックを与え、まだ立ち直れていません。そんな両親の態度は、ビルの心を傷つけ続けているのだけれど、彼らはそれに気づいてもいないんですね。

特に、ビルは「仮病」の件で、ジョージーの死に関して強い罪悪感を抱いてしまっており、それは彼にとって深い傷になっています。こんな時こそ、ザックとシャロンはビルを抱きしめてやらなければいけないのだけれど…。

 

特典映像では、このシーンに呼応する、やはりカットされた幻のラストシーンが見られます。そこでは、両親がビルを旅行に連れて行くシーンが描かれています。

イットの死後(一時的なものであれ )にそのような変化が起こっているので、両親の冷たさは、イットがデリーの住人に及ぼしている負の影響の一環なのかもしれません。

マイクの体験

自転車で、農場の肉をデリーの肉屋に配達するマイク。

ヘンリーの車を見て、マイクは慌てて路地へ逃げ込みます。

映画でも原作でもマイクはヘンリーに目の敵にされているのですが、その理由は原作の方がよく詳しく描写されています。

ヘンリーの父ブッチ・バワーズは映画では警官ですが、原作では農場をやっていて、近くにあるハンロン農場のせいで上手くいかないと逆恨みしています。ブッチはヘンリーに黒人への強い偏見と憎しみを教え込みました。

その結果、ヘンリーはことあるごとにマイクを痛めつけようとしています。映画でも、前編・後編ともに要所でマイクはヘンリーとの対決を強いられています。

 

マイクが肉を届けるのは"QUALITY MEAT"。その近くには映画館のキャピトル・シアターがあります。

アラジン・シアターでは「バットマン」「リーサル・ウェポン2」が上映されています。

ティム・バートン監督の「バットマン」はアメリカでは1989年6月23日公開。

メル・ギブソン主演の「リーサル・ウェポン2/炎の約束」は1989年7月7日公開ですね。

 

理髪店と肉屋の間の路地に、ブラッドレー・ギャングの壁画があります。路地の向かいがキャピトル・シアター

 

マイクが逃げ込んだ路地には肉屋の倉庫に通じるドアがあるのですが、その横の壁にはブラッドレー・ギャング事件を描いた壁画が描かれています。

これは、デリーの血塗られた歴史の1つ。1935年に起こったギャングの惨殺事件です。この壁画は、後にベンの怪我を治療するシーンであらためてクローズアップされます。

 

肉屋の裏口と、ブラッドレー・ギャングの壁画

 

マイクは、肉屋の倉庫のドアから煙が漏れ、助けを求める声が聞こえ、炎から逃れようともがく手が伸びてくる…幻を見ます。

これは、マイクにとってトラウマとなっている「ハリス通りの火事」の幻影です。この火事でマイクの両親は焼け死に、なんとか助け出されたマイクは、骨になるまで焼き尽くされた両親の遺体を見ることになりました。

マイクの両親が火事で死んでいる設定は映画だけなので、このトラウマも映画のみのものです。原作では、マイクは鉄工所の廃墟で「日本の特撮映画に登場する怪鳥、ラドン」に襲われています。見るもののいちばん怖いものの形をとるイットならではですが、これはそのまま映像化していたら、かなり白けたものになってただろうと思われます。

 

ドアが開き、奥のビニールカーテンの向こうに、ピエロの姿が見えます。

そこにヘンリーのポンティアックが突進し、マイクは危うく轢かれそうになります。

ヘンリーはマイクに「この街から出て行け」と吐き捨てます。

スタンの体験

スタンの家はユダヤ教の教会。スタンの父はユダヤ教のラビです。

近づいているスタンのバルミツバを控えて、スタンはトーラーを読む練習をしています。しかし、父親の評価は低いようです。

スタンの誕生日は1976年7月…であるようなので、13歳の誕生日後の安息日に行われるバルミツバは目前に迫っているわけです。

 

父親に厳しく突き放され、スタンはトーラーを返却しに教会裏の書庫へ向かいます。

そこでスタンは、笛を持つ女の絵の傾きを直します。不気味な女を描いたその絵は、スタンにとって幼い頃からずっと恐怖の対象だったのだろうと思います。家にある絵が怖いことって、子供にとってよくあることですよね。

 

この絵は映画のためのオリジナルですが、絵の女はアンディ・ムスキエティ監督の「MAMA」(2013)に登場するキャラクターを元にしているのだとか。

また、そのMAMAの不気味な女のキャラクターは、モディリアーニの絵画に登場する女性をモチーフにしているそうです。

アメデオ・モディリアーニは1884年生まれのイタリアの画家です。独特の顔と首が異様に長い女の肖像画が有名です。

 

物音に振り向いたスタンは、絵が落下しているのに気付いてそれを掛け直します。絵からは、女が消えていました。

闇の中から現れた二次元的な女がスタンに襲いかかり、スタンは悲鳴をあげて逃げ出すことになります。

 

原作では、スタンの恐怖は公園の給水塔で見た「死んだ子供たち」です。バードウォッチングで公園に出かけたスタンは、給水塔で溺れて死んだ子供たちの幽霊に襲われます。

デッサンが狂った「絵の女」は映画版の「イット」でももっとも怖いビジュアルで、この改変は素晴らしいと思います。

「給水塔の暗い螺旋階段を降りてくる、溺れて死んだ子供たち」も見てみたかった気がしますが。

ベンの体験

エディの家で、ビルとリッチーがエディを誘って出かけていくところが描かれます。

エディの母親ソニア・カスプブラクはでっぷりと太った女性で、ソニアを演じたモリー・アトキンソンは、後編でエディの妻マイラも演じています。

これはつまり、エディに絡みついた呪い。過保護のあまりにエディをダメにしてしまう母親と、同じようにエディを束縛しスポイルしてしまう妻、という構図です。

 

エディの「アレルギー」の心配をした後、ソニアはエディに「おでかけのキス」を命じます。

エディの年頃の少年にとって、友達の前でママにキスしないといけないのはなかなかの拷問ですね。案の定、リッチーがからかっています。

 

この時、ビルはトラッカー・ブラザーズのロゴが入ったTシャツを着てますね。

トラッカー・ブラザーズはフィルとトニーの兄弟で、デリーにある長距離トラック運送会社を経営しています。

原作では、大人になったエディが一人でデリーを散歩するときに、トラッカー・ブラザーズのトラック・ターミナル跡地を訪れます。エディの子供時代、フィルとトニーは野球気違いで、トラック・ターミナルは子供達が野球をする場所になっていました。エディはそこで、死んだベルチ・ハギンズ、トニー・トラッカー、それにグレタ・ボウイーなどに出会います。

(グレッタ・キーンは映画では生きていますが、原作のグレタ・ボウイーは若いうちにドラッグで死んだことになっています。)

 

ベン・ハンスコムは図書館にいて、べバリーに捧げる詩を書いています。

 きみの髪は冬の火、

 1月のおき火。

 僕の心も一緒に燃える。

ベンは学校の授業で日本の俳句を学び、その作法に従ってこの詩を書いています。

 

この日のベンは、大きなキツネの絵がプリントされたTシャツを着ています。ベンのTシャツの趣味は独特で、この後もワシだとか、馬だとか、宇宙だとかがプリントされたTシャツを着ています。

 

窓の外を自転車で駆け抜けていくビル、リッチー、エディ、スタンを見て、ベンは少しうらやましそう。でも、司書のおばさんの「夏休みなんだから友達と外で遊べばいいのに」という言葉には目を逸らします。転校してきてからずっと、ベンは図書館で過ごしてばかりいるみたいですね。

ベンは「デリーの歴史」という分厚い本を借りて、1908年にあった事件について調べています。

1908年、キッチナー鉄工所で復活祭のイースター・エッグ探しのイベントが行われ、多くの子供たちで賑わう中で爆発事故が起こりました。102人が死亡し、そのうち88人が子供でした。

「デリーの歴史」に載っている写真は、めくってもめくっても同じ木の写真になり、やがてクローズアップして枝にひっかかった子供の首の写真になります。

「デリーの歴史」にそんな写真が載っているはずはないので、これはイットの画策ですね。

 

図書館をすーっと流れていく赤い風船に気をとられたベンは、床にイースター・エッグが置かれているのに気づきます。

ぶすぶすと燃えている、点々と置かれたエッグを追いかけていき、ベンは地下の書庫に誘われます。そこでベンに襲いかかるのは、1908年の爆発事故の犠牲者、首のない子供でした。

首のない子供はやがてピエロになり、ベンは必死で図書館から逃げ出します。

 

1908年の鉄工所爆発事故は、デリーで起こっている27年ごとの災厄の一つです。デリーでは、27年ごとにイットによる子供達の行方不明/殺人事件が発生し、やがて締めくくりとして血なまぐさい大きな事件が起こって、それをきっかけのようにしてその回のサイクルが収束する…ということが繰り返されています。

鉄工所跡地には、現代では大きなショッピング・モールが建っています。

パトリック・ホックステッターの死

いつもは(下校の時も裏口から出るくらい)注意していたベンですが、この時は普段の注意を忘れてしまい、ヘンリーたちに見つかってしまいます。

バッシー公園の「キスの橋」キシング・ブリッジで、ベンはヘンリーとパトリック・ホックステッター、ベルチ・バギンズ、それにヴィクター・クリスにとっ捕まります。

キシング・ブリッジは運河にかかる屋根のある橋で、屋根があって隠れられることから、「キスの橋」の名前が付いています。ジンクスがあって、恋人たちのイニシャルが多数彫られているのもよくある話ですね。

この場所は、後編でリッチーが(ある目的で)訪れることになります。

 

図書館の近くにあるようです。キシング・ブリッジ

 

「ここで何をするか知ってるか? キスすることと、名前を彫ることだ」

飛び出しナイフを持ち出して、ベンの腹にイニシャルを彫ろうとするヘンリー。

ベルチ・ハギンズが、「本当にやるんだ」と驚いた顔を見せます。

振りほどいて、荒れ地へ逃げるベン。追いかけるヘンリーは、ナイフを失くしてしまいます。

「親父に殺される!」とうろたえるヘンリー。飛び出しナイフは、ブッチ・バワーズの持ち物を勝手に持ち出していたんですね。

 

ビルとリッチー、エディ、スタンの4人は、荒れ地の川にいます。

荒れ地の川はケンダスキーグ川。デリーの市街地を流れるペノブスコット川から分かれて、運河として街の中心部を抜け、バッシー公園を抜けて、荒れ地でケンダスキーグ川となっています。

ビルとリッチーは川に流れ込む下水道のトンネルの中、エディとスタンは外。ビルが皆を下水道探検に誘い、エディとスタンは頑として入ろうとしない…という構図です。

「下水の水はデリーの住人のうんちやおしっこだよ」「黄色ブドウ球菌って知ってる?」とエディ。彼は病気の生き字引です。

スタンの方は、単純に怖いから嫌みたいですね。

ビルはハムスターのトンネルで確かめた通り、ジョージーが荒れ地に流れ着いている可能性が気になって仕方がない。だから、下水道探検をしようとしています。でも、他の子たちはビルの動機を共有してはいません。

ビルが、ベティ・リプサムの片方の運動靴を見つけます。

そこへ血まみれ泥まみれのベンがやってきて、下水道探検は中断します。

 

ベンを追いかけてきたパトリック・ホックステッターは、一人で下水道に入っていきます。

ヘンリーの行為に引いているように見えたベルチ・ハギンズやヴィクター・クリスに比べると、残酷な行為に積極的なパトリック。彼は原作ではよりはっきりとソシオパスとして描かれていて、ゴミ捨て場の冷蔵庫に動物を閉じ込めて殺す病んだ子供になっています。原作のパトリックは、冷蔵庫から出てきた飛ぶヒルに血を吸われて死ぬことになります。

 

パトリック・ホックステッターは一人で下水道の奥に迷い込み、そこで死んだ子供たちのゾンビに襲われます。子供たちの先頭に立つのは、ベティ・リプサムです。

逃げたパトリックですが行き止まりに追い詰められ、「アイ❤︎デリー」と書かれた赤い風船に出会います。

風船が割れるとピエロが現れ、パトリックに食いつきます。

ベンの治療とブラッドレー・ギャング

ベンを治療するために、町まで戻ってきたビルたち。

エディは「彼は血まみれじゃないか!今はエイズの流行中だよ!」と言い続けています。

ロック・ハドソンがエイズで死んだのが1985年。リベラーチェが1987年、キース・ヘリングが1990年、フレディ・マーキュリーが1991年に、相次いで命を落としています。1980年代から90年代にかけては、エイズがアメリカの大きな社会問題となっている時代でした。

 

荒れ地から自転車で、Welcome to DERRYとビーバーの絵のあるメインストリートに出てきます。

 

ビルたちがやってきたのはキーン薬局。エディがいつもぜんそくの薬を受け取っている薬局です。

そこにべバリーは、生理用品を買いに来ています。やや戸惑った様子から、べバリーがまだ生理用品を買うことに慣れていないことが伺えます。

ビルたちが金が足りないと知ったべバリーは、万引きに協力してくれます。

薬局店主のノーバート・キーン氏に、「クラーク・ケントそっくりですね」などと言って気を引いて、「きみはロイス・レインにそっくりだ」なんて言わせてる隙に、ビルたちは包帯や治療薬を持って逃げ出します。

クラーク・ケントはスーパーマン、ロイス・レインはその恋人ですね。

1989年といえば、映画はクリストファー・リーヴの「スーパーマンIV/最強の敵」が1987年公開で、その不評でしばらく製作されなくなる頃だから、スーパーマン的には不遇の時期と言えます。映画館ではちょうど「バットマン」が上映中で、これからしばらく「バットマン」の映画シリーズが続きます。

 

近くの路地裏で、ビルたちはベンのお腹の傷を治療します。

そこは、肉屋に配達に来たマイクがヘンリーから逃れて隠れた路地ですね。壁にブラッドレー・ギャングの壁画が見えます。

1935年、ブラッドレー・ギャングは中西部で銀行強盗や誘拐事件を起こし、デリーに逃げ込んできました。ギャングのメンバーは、アルとジョージのブラッドレー兄弟、ジョー・コンクリンと弟のキャル、アイルランド系のアーサー・マロイ、シカゴ出身のパトリック・コーディ、ジョージの内縁の妻のキティ・ドナヒュー、コーディの女のマリー・ハウザーの8人です。

アル・ブラッドレーはデリーのスポーツ用品店を訪れ、次の仕事のための銃と弾薬を仕入れようとしました。店主のラル・マケンは手配書でアル・ブラッドリーの顔を知っていて、町の皆にブラッドレー・ギャングが弾薬を引き取りに来ることを伝えました。

その結果、約束の日には多くの住人たちが銃を持ってスポーツ用品店に集まり、ブラッドレー・ギャングを待ち伏せしました。50人から60人のデリー住人が一斉にギャングの車を銃撃し、ギャングの8人は全滅しました。住人の中にはノーバート・キーンがいました。そして、群衆の中にピエロが紛れ込んでいて、狂ったように銃を撃っているのを、何人かが目撃していました。

しかし、翌日の新聞の見出しは「州警察とFBI、ブラッドレー・ギャングと対決、全員を射殺」でした。住人が関与したことは、おおっぴらには語られませんでした。

 

壁画は路上で男が血を流して倒れているところで、警官かFBIと思しき男がそれを見下ろしています。手配書と、「In Brutal Battle」という見出しの新聞が見えます。

実は小説のブラッドレー・ギャングのエピソードは、メイン州バンゴアで実際にあった事件をもとにしています。アル・ブレイディ(BradleyではなくBrady)は、1937年にメイン州バンゴアのダウンタウンでFBIの待ち伏せを受け、仲間とともに射殺されました。

路上に横たわったアル・ブレイディの死体の写真は新聞の一面記事となり、この壁画はその写真をもとに描かれています。

 

べバリーがやって来て、ビルは「明日は採石場に行く」と彼女を誘います。女の子が仲間に入るなんて思ってもいなかった他の子たちは、戸惑います。

リッチーがべバリーの悪い噂を口にしますが、ビルはそれを否定します。

三年生の文化祭の劇で、ビルはべバリーとキスをしている。男の子たちはそれを話題にします。ちょうどその辺りで、皆の後ろの壁面、車の下の影の中に、ピエロが出現しています。

 

ブラッドレーギャングの壁画に出現したペニーワイズ

 

その3に続きます!

 

 

 

 

 

「ドノヴァンの脳」は映画化されているようです。

 

べバリー(大人)のジェシカ・チャスティン主演。