彫刻家 渡辺 忍さん 第3回 ~大理石に出会って方向性が見えました~
みなさま こんにちは。
彫刻工房くさか 日下育子です。
今日は素敵な作家をご紹介いたします。
彫刻家の渡辺 忍さんです。
渡辺 忍さん
前回登場の原 透さんからのリレーでご登場頂きます。
彫刻家 原 透さん 第1回
、 第2回、
第3回,
第4回
、第5回
, 第6回
第7回
お楽しみ頂けましたら幸いです。
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抄
H60×W250×D50
大理石(ペンテリコン)
1991年制作
「白夜」
大理石
神奈川県 相模原市 1993年設置
「氷柱」
大理石
岩手県 盛岡市
盛岡彫刻シンポジウム 1994年
「草原のおくりもの」
御影石
栃木県 大田原市
那須野が原国際彫刻シンポジウム 2004年設置
懐想
H55×W18×D15
大理石
2005年制作
「結ぶ」
本小松石
栃木県矢板市 2010年設置
おくりもの-薫夏
H28×W30×D22
大理石(シベック)
2010年制作
おくりもの-夏芽
H25×W27×D23
大理石(オーロラ)
2012年制作
日下
布を題材にした作品を大理石で彫っていらっしゃいますが
素材についての想いをお聴かせ頂けますでしょうか。
渡辺 忍さん
前回も少し触れましたけど、最初は石の種類もほとんどわからなくて、
柔らかい大谷石から始まって、石彫場の先輩たちが彫ってらした白御影石、
そして砂岩といろいろな石をちょっとずつ彫ってみたのですが
技術も経験もなくて、なかなか思うようなかたちになってくれませんでした。
それぞれの石に特性があるのに、全く知らないのですから…当たり前ですよね。
そんな時に新たに大理石という素材に出会う機会に恵まれて。
大学の藁谷収先生が、ちょうどイタリアの研修から帰ってこられたばかりの時で、
大理石をどんどん彫っていらしたんですね。
私たち学生に、様々な大理石用ツールや大理石に関する知識や技術を
たくさん教えて下いました。
初めて彫った大理石の作品は
やや灰色がかった岩手県産の大理石を使った頭像の習作だったと思います。
それから少しずつ道具をそろえて、イタリア産の大理石も何とか手に入れて、
布のフォルムを彫り始めました。
そこで大理石を彫ってみて、自分の思うようにはまだ行かなかったですけど、
いくらか形にできるようになると楽しくなってきましたね。
一番自分の表現と合っている素材だと思って
それで何かできそうかなという、少し方向性が見えたと思います。
日下
そうですか。
本当に大理石の白い色や肌合いが布の表現にマッチしていますね。
ところで『おくりもの 薫夏』とか『夏芽』では
白い大理石の他にも、色のついた石を使っていらっしゃいますね。
綺麗ですね~。
渡辺忍さん
ただ、白だけの世界も大好きなんですけど
白い大理石だけではどうしても色的に単調なので、
いろんな石を入れてみて楽しんでいます。
うるさいと言われることもありますけど、アクセントになるように。
日下
そうですか。
とってもお洒落といいますか、洗練されていると思います。
赤御影石の作品もありますが、
やはり大理石がマッチしているという感じですね。
渡辺忍さん
そうですね。いろいろな発表の仕方とか作品が置かれる場所によって、
大理石は合わないかなと思える場合とかもあるので、
そういう時には御影石も使います。
最近は真鶴で採れる小松石もかなり粘りがあって細工がしやすくて、
かたちが作りやすかったので使わせて頂いています。
基本的には、大理石でも色が付いたものはあまりメインでは使わずに
白くてほとんど模様が入っていないものが
自分の布の表現にはピッタリ合うような気がしています。
日下
白い大理石でも、何種類か使っていらっしゃいますね。
ちなみにオーロラというのは、どちらの国の?
渡辺 忍さん
スペイン、あっポルトガルの石です。
ローザ・オーロラといって若干ピンク色というか色が入っているんですよ。
カラーラの白とかギリシアのペンテリコンとかと違って
全体がピンク色になっているので、ローザ・オーロラと言われているんですけど。
日下
綺麗ですよね。
渡辺 忍さん
あんまり模様がきつくなくて、すごく優しい色なので気に入っています。
日下
これらの作品はかなり磨いて仕上げていらっしゃるのでしょうか?
渡辺 忍さん
そうですね。
あんまり全磨きというかツルンツルンにはしていないんですね。
あまりツルンツルンにしてしまうとかたちが必要以上に強く見えてしまったり、
逆に細かなかたちがとんじゃったりするので、途中で止めたりしていますが、
部分的には全磨きまでしているところもあります。
ただ、最初の頃でしたが、全部磨いてみたらどうなるかなと思って
試してみたら、セラミックと勘違いされたことがあって…。
石って少し結晶とか、素材の要素とか少し残してあげないと
やっぱり全体が弱く見えちゃうのかなと感じます。
せっかく石を使っているのに石に見えなかったら、可哀想というかまずいなと思って、
それで途中で止めて見たり、戻して見たり、あとラスパーというヤスリで
かたちをつめてみたりはしています。
日下
私は小さい手のひらサイズの作品でしか大理石は彫らないのですが
かなりデリケートですよね。
渡辺忍さん
そうですね。石の中ではかなりデリケートですよね、
環境に対しても、周りのいろんなものに対して。
すぐに汚れてしまったりいろいろしますよね。
ただその半面、ギリギリまでかたちを出していける石かな~と思います。
日下
そうですね。そうだと想います。
渡辺忍さん
御影石の場合ですと、パンパンと割って、割れ肌を出して、磨いて、
また最後まで、ノミでハツったりと表現を面白くできますが、
私なんかは、御影石の技術もそんなにないので
その石そのもの美しさや強さに、随分助けられているんですね。
例えば、黒御影石だと磨いた時と、叩いたノミ痕のところとか、
原石の時の肌と全然違うじゃないですか。
それでずいぶん表現のバリエーションがひろがりますけど、
大理石に関しては彫ってみると、確かに先ほどお話したように、
ツルンと全磨きとかラスパーとか、櫛刃とか、いろんなバリエーションはあるのですが、
でもやっぱり最終的にはフォルムでグーッと押していかないと、弱くなってしまうというか、
しっかりと出てきてくれないかなと感じます。
連鎖-Ⅲ
H150×W30×D20
2002年制作
大理石(シベック)
日下
そうですか~。
先ほど大理石だと置くときに合わない環境もあるというお話でしたが、
それは屋外という意味でしょうか?
渡辺忍さん
そうですね。日本の場合だと本当にそう思います。
ヨーロッパの方だと普通に外に置いてあって、
普通の町の生活に溶け込んでいるんですけれど、
やはり日本だとなかなか大理石って難しいんじゃないかと思いました。
日下
それはどのような意味合いででしょうか。
渡辺忍さん
一番は自然環境ですね。
水分に弱かったりするのですね。
雨が降ったりしたときに、一時問題になった酸性雨もありますし、
御影石よりも自然環境に対して非常に弱いので、
モニュメント的な、野外に半永久的に置かせて頂くときに
ちょっと大理石は考えてしまいます。
安田侃さん
は、北海道のアルテピアッツァ
という所にも、
東京にも、その他多くの場所に大理石作品を置いてらっしゃいますが。
日下
東京では、国際フォーラムなどにもありますね。
渡辺忍さん
はい。かなり日本では大きな彫刻を置いていらして
あれを見る限りは、きっとこれから答えが出て行くんだろうなと想います。
汚れが染み込まないようにコーティングしたり、
いろいろ工夫されているとは思いますけど。
私も十日町石彫シンポジウム
で外に設置した作品を
大理石で作らせて頂いたのですが、
それでもこれはアーチの中に置かせて頂いているんですね。
なので、十日町市は雪が多いのですが、直接、雨雪は当たらない状態で、
条件的にはとっても恵まれた環境に置かせて頂きました。
それに本当に周りの町の方々が、とても良く手入れをして下さっているから
これが持っているのかなと想っていますね。
日下
そうですか。
渡辺忍さん
十日町では、市内に置く場所が決まっていて、
シンポジウム期間の最終日に、商店街に設置していきます。
なので作家たちは、この場所に・・・というイメージを持って作っていきます。
私の場合は、たまたまこういう布の表現をしている作品ということで選んで頂いて、
後ろにちょっと見える、この友禅の織物関係のお店の軒先に置かせて頂いたので
本当にこの作品は幸せだなあと。
日下
本当に格好いいですよね。
後ろののれんに和、友禅と書いてあって面白いですね。
渡辺忍さん
本当に表現と置く場所が合っていて…。
玄関の前に彫刻がドンとあって、本当は彫刻が邪魔しちゃっているかなと、
恐縮しているんですけど。
日下
素敵です。
渡辺忍さん
この会社の社長さんがこの位置に置いて下さるということで、はい。
ほぼ毎年、ここには顔を出して、そろそろメンテナンスが必要かどうかと見ているんですけど
とても大切にして頂いていて、汚れたら綺麗に拭き取って洗って下さっているようで、
本当に白さが完成時の美しいままです。
大理石って、さきほども言いましたように、雨に当たって黒ずんでしまったりとか
苔が生えたり、カビが生えたりとかいろいろ問題が出て来てしまうんですけど
これは手入れして下さっているので、本当に感謝しています。
日下
そういう素晴らしい設置環境の中で彫刻が息づいていていいですね。
渡辺 忍さん
逆を言うと、作品をつくって「はい置きました。」というだけじゃなくて
設置したその後の経過に少しでも気にかけるということも、作家の責任かなと感じます。
日下
そうですね~。(共感)
素晴らしいお話をありがとうございました。
結ぶ
H68×W17×D15
大理石(シベック)
2012年制作
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今回、原 透さんのご紹介で
初めて、渡辺 忍さんとお話をさせて頂きました。
渡辺 忍さんと原 透さんは実はご夫妻でいらっしゃいます。
同じ石を素材とする彫刻家同士のご夫婦ということで、
とても珍しがられるそうです。
私は、以前、国画会展を見ていた時に渡辺 忍さんの作品を拝見していて
大理石で布のリアリティーある造形表現をされていること、
その作品の存在感がとても印象に残っていました。
また、学び場美術館への石の女性彫刻家ではお二人目の登場となります。
渡辺 忍さんには彫刻のパブリックでの在り方を考える場がスタート地点にあって、
今は、ご自身の作品にふさわしい空間への関わり方を考えていらっしゃるとのことでした。
自然体での制作を追求されていることが、とても素敵だと想いました。
渡辺 忍さんとは、女性が石の彫刻を制作すること、
結婚や家庭との両立など、女性の彫刻家にとってはとっても気になることについても
お話をさせて頂くことができ、とても楽しく、共感いたしました。
皆さまにもシェアさせて頂く機会があるかも知れません。
皆さまも渡辺 忍さんの作品をご覧になって見てはいかがでしょうか。
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◆渡辺 忍さんが登場するWEBぺ―ジ
◇国画会
http://kokuten.blog.shinobi.jp/Entry/126/
渡辺 忍さんは第8回にご参加されています。
◇那須野が原国際彫刻シンポジウム in大田原2004
太田原市ホームページ ⇒教育文化⇒国際彫刻シンポジウム
⇒那須野が原国際彫刻シンポジウムin大田原2004 でご覧いただけます。
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