みなさま こんにちは。
彫刻工房くさか 日下育子です。
今日は素敵な作家をご紹介いたします。
彫刻家の原 透さんです。
前回登場の小淵俊夫さんからのリレーでご登場頂きます。
第3回目の今日は、制作や素材について想いをお聴かせ頂きます。
お楽しみ頂ければ幸いです。
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時間軸―N―
40×85×33
赤御影石 2003年
真知
<秋田県立武道館モニュメント>
340×105×120
160×340×120
赤御影石 2004年
秋田県立武道館設置
時間軸―L―2
30×210×55
赤御影石 2001年
25×165×20
赤御影石 2000年
京都青蓮院
日下
制作や素材についての思いをお聴かせ頂けますでしょうか。
原 透さん
彫刻の素材として、長いこと赤御影石を使っています。
石を扱う人間からすると、あまり扱い易い石ではないと想いますが。
日下
ええ、私も試してみたことがありますが、石英分の結晶のところが
ボソボソになりやすく難しい石ですね。
それにちゃんと買うと高価な石なのではないでしょうか。
原 透さん
はい、赤御影石は日本で採れない、それから外国産なので高価な部類に入る石です。
日下
あの赤い部分の物質は何なのでしょうね。
原 透さん
鉄分だと想いますよ。
工業用ダイヤモンドを使った工具と相性が良くないみたいで
非常に道具が早く消耗します。
また、赤い色が形を選ぶ石ですね。
使っていらっしゃる方は少ないと想います。
日下
それなのに原さんが使っていらっしゃるというのは
何か理由があるのでしょうか。
やはり色みでしょうか。
原 透さん
はい。時間軸のシリーズでたくさん使っています。
もっと黒御影とか彫りやすい石もありますが、
赤い色にとても魅力を感じたからです。
僕はかなり大きな作品を作っているのですが、
屋外に設置するような時に、同じかたちでも
最もエネルギーが高く見える石だったからです。
素材としては扱いにくいですし、価格が高いので大変ということはあるのですが。
彫刻の歴史の中でもあまり使われていない石ですね。
日下
ええ。どちらかというと薄く切って、建築に使われるような石ですよね。
原 透さん
しかし、一つだけ例外があって、エジプトだけは使っていますね。
エジプト関係の本では赤色花崗岩と紹介されています。
フランスのルーブル美術館が改装になって、
ガラスのピラミッドができてからですが、美術館に入って行くと
最初のコーナーにスフィンクスの石彫が展示されています。
それが赤御影石ですね。
多分今もあると想います。
エジプトだけはどういうわけかあの石を使っていますね。
ダイヤモンド工具の無い、道具の発達していない時代に
よくあの石を彫ったなと感動しますね。
結晶質が荒くて、切って使ったりするのは良いと想うのですが
基本的な道具でかたちを作るのは大変な作業のはずなのですが、
エジプトの方は本当に綺麗にかたちを作っていますね。
日下
刃トンボのような道具で、細かく叩いたような仕上げなのでしょうか。
原 透さん
そうですね。エジプトの制作工程は独特なのとたっぷりと時間をかけて、
制作していたではないでしょうか。
日下
そうですか。
原さんの作品では細かい筋目がたくさん彫ってありますね。
やはり、それは原さんの技術力でいらっしゃるんでしょうね。
それが表面的な方向性というより
ちゃんとかたちの表現になっていますものね。
原 透さん
時間の流れを表現するのに線引きを意識的にやっています。
木は自然に木目、流れが入っていますが赤御影石はそれが無い素材なので、
時間の流れの表現として自分で入れているという感じです。
線を彫ったところに磨きかけてさらに強調して、時間というかたちを
強めるようにしています。
時間塊7
295×165×145
赤御影石 2009年
長野市 上千歳町広場設置
日下
時間軸の作品のグニャッとしたかたちも特徴的ですが
このかたちを作るときには実際に粘土をグニャッと曲げて見たり
なさるんでしょうか。
原 透さん
ええ。曲がった形を観察するのに粘土はもちろん、
金属、特に鉄 アルミは参考にしています。
あとはスポンジ系とか、塊のゴム板とか、果てはこんにゃくまで
いろんな弾性力のある素材を曲げて参考にしています。
石は曲がらない素材で、弾性力がありません。
石が曲がったらこんなかたちになるのかな
というのを他の素材を曲げて参考にしています。
日下
金属だと角パイプのようなものを曲げるのでしょうか?
曲げた状態で写真を撮るということでしょうか。
原 透さん
なるべく、むくの素材を使います。
曲げて写真を撮ったり固定をしたり、
それを参考に石を彫ったりしました。
日下
そのグニャッという感じですが
的確な言葉かどうかわかりませんが
石が溶解しているというか、無重量化しているというか
不思議な感じがします。
原 透さん
石が本来持っていない要素を入れることによって
素材に隠されているもの、見えていない要素を見せたいという気持ちはあります。
石ってとにかく重さを感じる素材というか
本来の比重はそれほど重くありません。
金属の方がはるかに、比重が重いものが多いです。
これを言うと信じてくれない人が多いのですが
石というのは、アルミニウムと大体同じ比重でおおよそ2.7位です。
アルミニウムって大体、塊の状態ではなくて薄く延ばされたり
板の状態だったりするので、非常に軽いというイメージがあるんです。
石とアルミニウムというのはほとんど密度的には同じです。
石の持っていない、曲げるという行為をすることによって
ちょっと違う側面が見えてくるとは想っています。
日下
そうですね。認識って結構いい加減ですよね。
原 透さん
ええ。石ってそういう先入観の多い素材だと思います。
そういう隠された別の側面と言うのを曲げることによって
見せたいというのはあります。
かたちも結構、重力に逆らって曲げています。
地球の重力だと、必ず重いものは下に行くという原則ですよね。
それとは逆方向に起きあがっていくというか
そういう造形はかなりやっていますね。
日下
ええ、そうですねぇ。
原 透さん
もし、石が曲がっていても、それが全部下に行くのではなくて
起きあがっていたりとか。
重力通りに曲げると必ず垂れるようにしか曲がりませんよね。
僕のかたちは起きあがっているように曲げています。
そういう要素を入れているので、きっと日下さんも無重力という感じを
感じて頂けたのではないでしょうか?
日下
本当にそうですね。
原 透さん
秋田に設置した作品なんかは
意識的に石が立ちあがるようにやっています。
石自体が意志を持って起きあがるような構成をとっています。
日下
いいですね~。
石が意志をもって起きあがるんですね。(笑)
本当にこの起きあがり方、石にとても生命感を感じますね。
原 透さん
石を曲げて見ると自ら動きだしそうな感じには成りますね。
尺取り虫みたいにもなりますけどね(笑)
時間軸―V―
120×300×100
赤御影石
2000年
兵庫県淡路夢舞台設置
日下
私自身が、その無重力化という言葉を口に出してみてから
改めて、そのあたりの意味を調べて見たら、
「相対性理論では重力は時空の歪みとして記述され、
光線の進路や時間の経過が重力場によって影響されることが示される。」
という文章に出会いました。
原さんはそういうことを意識なさいますでしょうか。
原 透さん
ありますね。
その辺がきっかけで時間を表現してみようと思うようになったので
石が時間を感じさせるというか
石の中に膨大な時間が蓄積されているのを感じるので。
時間を表現するようになったという事ですね。
日下
今日も素敵なお話をありがとうございました。
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今回、小淵俊夫さんのご紹介で
初めて、原 透さんとお話をさせて頂きました。
原 透さんと小淵俊夫さんはすいど-ばた美術学校という美術予備校で
ご一緒で仲が良かったのだそうです。
実は私は、卒業制作で一度だけ国画会に応募したことがあるのですが、
その時、東京都美術館の中で、仙台から応募した見ず知らずの私の作品搬入を
原さんが手伝って下さったということがございました。
今回、原 透さんはとても丁寧に明快にお話をお聴かせ下さいました。
原 透さんは現代物理学の領域である、
「時間軸」、「特異点」というテーマを彫刻の造形で表現される、
貴重な彫刻家でいらっしゃいます。
私は、原 透さんが
「ルネサンス期のように、もっと美術が科学と共に最先端を行っていいのではないでしょうか。
科学者たちが理論の裏付けが無いと発言出来ないような事を、美術の分野で、
自由な解釈を示してもいいのかな。」と仰ったことがとても印象に残りました。
みなさまもぜひ原 透さんの作品を
ご覧になってみてはいかがでしょうか。
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◆原 透さん卒業の東京都立芸術高校
◆原 透さん作品が見られるWEBぺ―ジ
◇ 国画会
◆原 透さんの今後の活動
◇ 第19回十日町石彫シンポジウム
・2013年7月27日(土)~8月18日(日)
・参加作家 北島一夫、 橋本恵吏、 原 透
◇原透、西山瑠依展
□9月2日(月)~9月7日(土)
〒104-0061東京都中央区銀座6-13-7新保ビル3F
TEL:03-3541-2511
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