彫刻家 小渕俊夫さん 第3回 ~感覚がカービングに完璧になっています~ | みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

みんなの学び場美術館 館長 IKUKO KUSAKA

生命礼賛をテーマに彫刻を創作。得意な素材は石、亜鉛版。
クライアントに寄り添ったオーダー制作多数。主なクライアントは医療者・経営者。
育児休暇中の2011年よりブログで作家紹介を開始。それを出版するのが夢。指針は「自分の人生で試みる!」

みなさま こんにちは。

彫刻工房くさか 日下育子です。


今日は素敵な作家をご紹介いたします。

彫刻家の小渕俊夫さんです。


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

小淵俊夫さん


前回登場の安藤英次さんからのリレーでご登場頂きます。

  彫刻家 安藤英次さん 第1回   第2回   第3回   第4回   第5回  


  

小淵俊夫さん  第1回  ,   第2回


第3回目の今日は、作品制作や素材についての思いをお聴かせ頂きました。


お楽しみ頂ければ幸いです。


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アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

「花石」 第87回二科展出品




アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-3

カンブリア紀の生物を想像した作品  


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

siricon life                2007年



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館-プラン
プランクストーン

※(プランクトンとストーンの掛け合わせ造語)




アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
辰(タツノオトシゴ リング)



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館

未(ひつじ  リング)




日下
制作の素材についてお伺いしてみたいのですが、
第1回目のインタビューでは、
石の恒久性に惹かれて制作を始められたというお話でした。



小淵俊夫さん
そうなんです。
石の恒久性に惹かれて制作を始めたんですが、
今はその石の恒久性に惹かれて昔制作した、
大きな作品の処分に困っているところです。
置き場所が無いのでね。

そういうことで今は小さな作品ばかり彫っています。
それは大きく広がって来ています。



日下
『Silicon Life』(シリコン ライフ)のシリーズは
小さ目の作品なのでしょうか。



小淵俊夫さん
そうですね。10センチ角や20センチ角に収まるものが多いですね。
エアキャップでくるんで野菜コンテナみたいなものに入れて置けますし
そのまま車に積んで展覧会にも行けますし、
小さいサイズに変えて良かったなと思いますけどね。


大きい作品に時間を取られるよりも
小さい作品でいろいろ造形を楽しむ方が
ずっと楽しいなと思います。



日下
その楽しさがとっても伝わってくる作品だと思います。
小渕さんの作品はとてもカラッとしていて、軽快に表現されているところが
楽しくて良いなぁと想います。



小淵俊夫さん
良く、あまり小器用に作るので
「石でいいのか?」と言われたこともありますけど。

「別に石で出来ているんだから良いんだよ」って言うんです。


石を彫りにいくとか大上段に構えてものを作る必要があるのかなと
素直な考え方で制作出来るようになったのかなと想います。



日下
石の素材感も磨きの段階やのみの彫り方とか
すごくいろんなテクスチャーの幅を最大限に
活かしていらっしゃいますね。



小淵俊夫さん
そんなに意識はしていないんですけど
やっぱり磨き肌と割れ肌、突っついて白くしたところ、手で彫った荒い表現とかね
そういった差、一つの石なのに別のものに見えるという面白さというのは
素人の人が見ても面白がるし、
「どうやってくっつけたんですか?」と大概言われます。

「いや~、そんなのくっつける技術はありません。」
と、反応が面白いのでわざと作っているんですけどね。



日下
本当に手仕事ならではの密度のあるかたちですね。
小淵俊夫さんの作品はユニークで全部動き出しそうな軽快さがありますね。



小淵俊夫さん
石は重い、固いというのは否定はしようが無いんだけれども
そうは見えないようなものを楽しもうと・・・。
基本的にへそ曲がりなので、柔らかく見えるような逆説、逆説で、
見せようと想って作っています。




アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
ハリネズミ リング


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
ブルテリヤ リング


アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
ミニチュア・ダックス  リング




日下
素材ということでは、銀素材のアクセサリーも作ってらっしゃいますね。
制作のきっかけを教えていただけますでしょうか。



小淵俊夫さん
はい。私の友人が宝飾家で、「これで何か彫ってみる?」とか言われて。
そこでまずワックスをもらったんですね。
アクセサリー用の素材で売っているものですが。


私はモデリングや塑造が苦手で、全て感覚がカービングの
削って作ることに完璧になっているんです。

ロウ、ワックスだと彫れ過ぎたり、取れ過ぎたりしちゃっても
また盛り付けて足す事が出来るんです。
それは石しかやっていなかった者にとっては画期的で、
試しにやって見たらとっても面白くて、ハマっちゃったんです。



日下
ワックスで彫ったものを型取りして作るのですね。



小淵俊夫さん

はい、ワックスで原型を作って、宝飾家の友達の所に渡しちゃうんです。
そうすると彼がシルバーに鋳造してくれるんです。
なおかつそれをシリコンで型取りして型を作ると
何回もその型にワックスを流し込めますので、同じものがいくつもできます。



日下
ああ、鋳造なんですね。
私はアート・クレイ・シルバーかと想いました。



小淵俊夫さん

あれは粘土ですので、全然駄目ですね。
あれだと手びねり程度のものは出来ますが、
かなり技術がないと細かい彫刻的なものは作れないですよね。


ワックスからの鋳造だと
毛並みとかウロコとか細かいものは彫るのが大変ですけど
表現の幅は広がりますね。



日下
シリコンの型ということは抜け勾配とか関係ないということですね。
石膏型だと抜け勾配のことがあるのでいつくもの型に
分解できるように合わせ型になるように作るということがありますが。



小淵俊夫さん
そうですね。抜け勾配はあんまり関係ないですね。
私はそういうのは気にせずに、友達はプロだから
「これお願い!」って渡します。
物凄く嫌がられますけどね(笑)

ただ、足の多いのはなかなか抜けないらしくて・・・。
「プロだからお前出来るだろ」と言って無責任に渡しちゃいますけど。


シリコンゴムですのでビヨーンと伸びますから
なんとかギューっと口を開いてポッと抜きとることが出来るんですね。

ただ鋳造品だとどうしても肉厚になるのでちょっと重くなるのが難点ですね。



日下
ああ~、塊ということですね。



小淵俊夫さん
そうですね。出来るだけ薄くしたり、中を抜いたりしているんですけど
金属の板を叩いて薄くして、なんていう技法よりもどうしても厚くなりやすいので。



日下
ああ、それはとても面白いですね~。
小渕さんはどちらの素材を扱っていても、やはり
カービングの感覚が大事ということでいらっしゃるのですね。



小淵俊夫さん
そうですね。カービングしか出来ないので。



日下
とても有意義なお話をありがとうございました。



アーティストを応援する素敵な彫刻工房@日下育子の学び場美術館
卯(ウサギ ペンダント)


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今回、安藤英次さんのご紹介で
初めて、小淵俊夫さんとお話をさせて頂きました。


私が二十代の頃に購入した石の季刊雑誌「ストーンテリア」に
私の記憶に残るとても素晴らしいモニュメント作品がありました。
その作者である小淵俊夫さんにお話をお聴かせ頂く機会に恵まれました。


小淵俊夫さんをリレー紹介して下さった前回の安藤英次さんは
多摩美術大学で同じ石彫専攻でご一緒に制作されていたのだそうです。


また前々回登場の織本 亘さんは塑造専攻で
2~3年後輩の同窓生でいらっしゃるのだそうです。


小淵俊夫さんは中学・高校で、美術の非常勤講師をしておられます。
その現場では「作る、表現するということはとっても面白いことなんだよ。」と
少しでも子どもたちに感じてもらいたい、伝えたいと想っていらっしゃるそうです。


そんな小淵さんは、ご自身でも本当に楽しんで制作していらして
作り手の「ワクワク感」がとても伝わってくる
素晴らしい作品制作をされていると感じました。


みなさまもぜひ小淵俊夫さんの作品を
ご覧になって見てはいかがでしょうか。


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◆ 小淵俊夫さんのホームぺ―ジ
  
アート・アクセサリー「O(オー)の動物園」
  


◆ 小淵俊夫さんの作品が掲載されたWEBページ


 ◇那須野が原国際彫刻シンポジウムin大田原1998



  上から四つ目の作品
  カオスの始まり/小淵 俊夫 /ふれあいの丘シャトーエスポワール
 

 ◇町田市ゆかりの美術家たち


 ◇ゆう桜ヶ丘コミュ二ティセンターホームページ



◆ 小淵俊夫さんの他インタビュー記事

   若手石彫家のアトリエ拝見





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